この記事でわかること・結論
- アルハラとは飲酒を強要するハラスメント行為などを指す
- アルハラは職場や大学での飲み会において発生し、死亡事故へ繋がってしまうケースも多い
- 会社ではアルハラ含む、ハラスメント行為の防止対策を講じる必要がある
この記事でわかること・結論
アルコールハラスメント(アルハラ)とは、人に飲酒を強要するまたは同調圧力などにより飲酒をせざるを得ない状況を作るハラスメント行為のことを言います。
アルハラは主に「大学」や「会社の飲み会」において発生し、死亡事故や裁判などがニュースで取り上げられることもあります。自社で起こった場合、企業は法的責任を負うこともあるため防止対策など講じておきたいところです。
本記事ではアルハラについて、意味や事例をおさらいしながら法的責任や防止対策についても解説します。
目次
アルコールハラスメント(アルハラ)とは、飲酒を強要するような嫌がらせ・人権侵害のことを指します。「お酒が弱い人に飲ませる」や「イッキ飲みをさせる」などが該当し、最悪の場合だと命に関わることもあります。
主に会社や大学関連の飲み会などで発生することが多く、心理的な圧力をかけて飲酒をしなければならない状況を作ることがよくあるケースとして挙げられます。
アルハラはアルコールハラスメントの略称です。名前のとおり、お酒を強要するようなハラスメント行為を指します。個人が加害者となる場合もあれば、複数人が加害者となり同調圧力によって「飲酒をせざるを得ない状況」を作り出すアルハラもあります。意図的におこなうことはもちろんですが、アルコールへの考え方によって無意識に加害者となるケースもあるのです。
過去には「虚血性心臓病」や「急性アルコール中毒」になり死亡事故となってしまった事例もあります。そのためアルハラは、ハラスメント行為のなかでも一層問題視される傾向があります。
職場で発生するようなアルハラは、パワーハラスメント(パワハラ)となることもあります。厚生労働省委託事業として開設された「あかるい職場応援団の公式Webサイト」では、職場において以下定義をすべて満たすものがパワハラであると定義されています。
「優越的な関係を背景としたもの」つまり、上司にあたる方が部下に対して飲酒を強要する場合は、上記を満たすこととなりアルハラだけではなくパワハラにも該当します。
実際にアルハラが発生した事例を見てみましょう。
この事件は同志社大学のテニス同好会で起こったものであり、新入生が先輩に飲酒を強要されたうえに、川に入ることまでも指示されるという状況でした。新入生は酔った状態で先輩によって川に落とされ、最終的に流されてしまい死亡事故となってしまいました。
こちらは、会社におけるアルハラについて損害賠償責任が認められた事例です。ホテルの運営会社で働いていた方が、日々受ける上司からのパワハラや出張先でのアルハラを受けて精神的疾患を発症してしまいました。
被害者は上司に対して不法行為責任、そして運営会社に対して使用者責任・職場環境調整義務違反を訴え、損害賠償金を求めました。
ここではアルハラに該当する行動や、アルハラを受けたときの断り方を解説します。
アルコールをはじめとする依存関連問題の防止に取り組んでいるNPO法人「特定非営利活動法人ASK」は、以下の5項目を主要なアルハラとして定めています。
5項目 | 該当する行動例 |
---|---|
1. 飲酒を強要すること | 優越的な関係を利用して、飲酒をする状況に追い込む。また、同調圧力などにより心理的負荷をかけて飲酒をさせる。 |
2. イッキ飲みを強要すること | 注いであるお酒をイッキ飲みさせる、複数人で早飲み競争をさせる。 |
3. 意図的に酔い潰すこと | 個人または複数人で意図的に泥酔させる。また、泥酔を目的とした会を開催する。 |
4. 飲酒が苦手な方へ配慮しないこと | 体質や好き嫌いを考慮せずに飲酒を勧める。また、お酒の席でアルコール以外を用意しない。 |
5. 酔って迷惑行為をすること | 酔っ払って暴言や暴力、パワハラやセクハラをおこなう。 |
特に5番目の「酔って迷惑行為をすること」については、飲酒の強要はしていなくてもパワハラやセクハラなど他のハラスメント行為をするケースが該当します。また、アルコールへの認識によっては悪意がなくても無意識にアルハラ加害者となることもあります。
たとえば職場において「上司からのお酒は断るべきではない」という認識を持っている社員がいたとします。飲み会でその社員は同僚に対して「上司からいただいたものを断っちゃまずいよ」と言い、飲まざるを得ない状況を作ってしまいました。こういったケースでは、発言に悪意がなくともアルハラに該当してしまう可能性があります。
特に大学や会社において、組織に所属したばかりの頃は気をつけましょう。先輩や上司に嫌われないようにと無理をしてしまう方もいるかもしれません。自分が先輩や上司にあたる立場なのであれば、飲み会でアルハラが発生しないように注意しておくことが大切です。
アルハラを受けてしまっても毅然とした態度で断ることが大切です。中途半端に遠慮した態度でいるとしつこく強要されることもあります。キッパリと飲めないということを伝えましょう。
それでも強要される場合は「車で自宅まで帰る」や「帰ってから仕事の続きがある」など嘘でも構わないので、理由をつけて断ることがおすすめです。
アルハラが発生した場合、企業は以下2つの法律に基づき「損害賠償責任」を負うことがあります。
労働契約法5条において「使用者は労働者の安全を確保しつつ、労働することができるように必要な配慮をするもの」と定められています。アルハラが発生した場合は、こちらの配慮を欠いたものとして扱われる可能性があります。
また民法715条の1項では使用者責任について定められており、相当の注意をしたときなどの免責事項もありますが「業務の執行について被用者が第三者に与えた損害につき、使用者が賠償責任を負うもの」とされています。
企業内でアルハラを発生させないためにも、以下の防止対策をおこないましょう。
アルハラおよびその他ハラスメント行為については、就業規則などで規律やガイドラインを定めておきましょう。そして定めるだけではなく、組織全体に周知・啓発することが大切です。具体的には「定期的に研修を実施する・社内報として発信する」などが挙げられます。
アルハラを含むハラスメント行為が発生した場合に、迅速かつ適切に対処できるように相談窓口を設けることも重要です。相談窓口の設置は、ハラスメントの早期発見にも繋がります。被害者のケアや再発防止対策などができる仕組みをよく考えて設置しましょう。
アルコールハラスメント(アルハラ)とは、飲酒を強要するようなハラスメント行為または酔った状態での迷惑行為などを指します。主に「大学・職場での飲み会」でアルハラは発生します。
飲酒を強要することはもちろん、複数人で飲酒をせざるを得ない状況を作ることなどもアルハラに該当します。アルコールへの認識によっては、無意識にアルハラの加害者となってしまうこともあり得ます。
また、従業員が起こしたアルハラについては、使用者責任として会社側が賠償責任を負うこともあります。アルハラが発生しないように、ハラスメント行為全般の周知や防止対策などをしっかりとおこないましょう。
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