労務SEARCH > ニュース > 雇用保険が適用拡大!週10時間以上の労働者が対象に【2028年10月から】
雇用保険が適用拡大!週10時間以上の労働者が対象に【2028年10月から】

雇用保険が適用拡大!週10時間以上の労働者が対象に【2028年10月から】

監修者:労務SEARCH 編集部
詳しいプロフィールはこちら

この記事でわかること・結論

  • 2028年10月1日から雇用保険の対象者は「週10時間以上」働く労働者になる
  • 今回の改正雇用保険法の狙いは、多様な働き方を効果的に支える雇用のセーフティネットの構築と「人への投資」の強化
  • 人事・労務担当者は新たな加入対象者の把握と社内周知、必要に応じて加入手続きをおこなう必要がある

2024年5月10日に「改正雇用保険法」が可決・成立し、雇用保険の適用拡大が決まりました。

週の所定労働時間に関する雇用保険の加入要件が、従来の20時間から10時間に変更されます。これに伴い、人事・労務にはどのような影響があるのでしょうか。また今回の改正の背景とは?

この記事では、雇用保険の適用拡大についてとその考えられる背景、さらに適用拡大に伴い人事・労務担当者がおこなうべき社内準備について解説します。

改正雇用保険法が成立!雇用保険が適用拡大

2024年5月10日、雇用保険の適用対象者の拡大などを盛り込んだ「改正雇用保険法(雇用保険法等の一部を改正する法律案)」が参院本会議で可決、成立しました。この改正により、より多くの労働者が雇用保険の対象となります。

雇用保険の加入条件が「週10時間以上」に

今回の改正雇用保険法における改正点は複数ありますが、そのうちのひとつが雇用保険の適用拡大です。現在の雇用保険の被保険者となる要件(加入条件)は、週20時間以上働く労働者ですが、これを週10時間以上に拡大する予定です。これにより、パートタイムやアルバイトなどの短時間労働者も雇用保険の対象となる可能性があります。

改定前

2028年9月まで

・1週間の所定労働時間が20時間以上であること
・31日以上の雇用見込みがあること

改定後

2028年10月以降

・1週間の所定労働時間が10時間以上であること
・31日以上の雇用見込みがあること

適用拡大の実施時期は?

雇用保険の適用拡大は、2028年10月1日から施行開始する予定です。雇用保険の適用事業所に雇用されていて、上記のいずれの条件にも該当する労働者は、原則として雇用保険に加入しなければなりません。なお、これにより雇用保険の被保険者および受給資格者となる方は、求職者支援制度の支援対象から除外しないことが明記されています。

雇用保険適用拡大の背景

今回の改正の主な目的については、以下のとおり示されています。


改正の趣旨

多様な働き方を効果的に支える雇用のセーフティネットの構築、「人への投資」の強化等のため


多様な働き方とは、従業員のニーズやライフスタイルに合わせて、労働時間や勤務場所、雇用形態などを選べる働き方のことを指します。雇用のセーフティネットとは、労働者の生活の安定と雇用の継続を支援するための制度や仕組みのことです。

雇用保険は一定の保険料を支払うことで、失業や育児・介護などで働けないときに給付金を受け取れます。しかし現行の加入条件では、家庭の事情や柔軟な働き方を実現できることを理由に、パートタイムやアルバイトなどをあえて選択している一部の短時間労働者は対象外となっています。

そういった背景から、今回の改正により、より多くの労働者を雇用保険の対象にすることで、労働者に働き方の選択肢を与えつつ、労働者の生活を保障する制度の強化が期待されています

そのほか、少子化問題の解決に向けて、短時間労働者にも失業給付育児休業給付金を支給することで、仕事と育児の両立をサポートする狙いや、新たなスキルを身につける「リスキリング」を支援するために、失業給付を受け取れる対象者を拡大し、失業者の生活の保障を強化する狙いが挙げられるでしょう。

雇用保険の適用拡大に伴う人事・労務への影響

企業の人事・労務担当者は、雇用保険の適用拡大に伴い、改めて社内の雇用保険対象者を確認する必要があります。

人事・労務担当者は社内準備・手続きをおこなう

具体的には以下の流れで進めていきましょう。

人事・労務担当者の業務の流れ

  1. 新たな加入対象者の把握
  2. 社内周知
  3. 個人面談や説明会の実施
  4. 書類の作成・届出

まずは、新たな加入対象者となるパートタイム・アルバイトの方を把握します。次に、新たな加入対象者に法律改正の内容が伝わるように、メールなどを活用して社内周知に努めましょう。必要に応じて個人面談や説明会を実施し、雇用保険に加入するメリットや今後の労働時間などを従業員と話す機会を設けることもおすすめです。

雇用保険の加入手続き

雇用保険の加入が決まったら、加入条件を満たすことになった日の翌月10日までに、管轄のハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。

雇用保険被保険者資格取得届には、雇用保険の被保険者番号とマイナンバーの記載が必要です。過去に雇用保険に加入していた従業員は、離職票などに記載されている被保険者番号を用います。万が一、書類の紛失などで被保険者番号がわからない場合は、資格取得届の備考欄に雇用保険に加入していた会社の名称や勤務期間を記入し、ハローワークで番号を照会してもらいましょう。

書類の提出方法は、ハローワークに直接持参するか郵送、またはe-Govから電子申請も可能です。ハローワークに提出すると、資格取得等確認通知書が交付されます。その通知書の右側が「雇用保険被保険者証」となっているので、従業員に渡しましょう。

雇用保険の加入手続き
提出書類 雇用保険被保険者資格取得届
提出期限 被保険者となった日の翌月10日まで
提出先 管轄のハローワーク
提出方法 直接持参、郵送、電子申請

雇用保険に加入するメリット

新たな加入対象者と個人面談などをおこなう際には、雇用保険に加入するメリットも説明しましょう。雇用保険は、労働者の生活と雇用の安定、就職の促進を図るためのものです。失業したときや早期に再就職したとき、育児休業を取得したときなどに給付を受けられる点が大きな特長であり、さまざまな給付を受けられる制度が設けられています。

雇用保険の給付

大きく分類すると、失業したときの給付、就職を支援する給付、新たなスキルを取得するための教育訓練のための給付、雇用を継続するための給付、育児や介護で休業するときの給付です。このように雇用保険に加入すると、収入がない期間などに経済的な支援を受けられ、生活の安定を図ることができます。

まとめ

2028年10月1日から雇用保険が適用拡大されます。この改正により、雇用保険の被保険者は最大約500万人増える見込みです。多くの労働者が雇用保険の対象となるため、企業の人事・労務担当者は加入漏れがないよう、加入対象者の把握を進めておきましょう。

雇用保険はさまざまな給付を受けられる制度があります。よく耳にする失業手当(基本手当)や育児休業給付金以外にも、労働者の生活をサポートする多様な給付金があるので、人事・労務担当者は新たな加入対象者に対し、雇用保険に加入するメリットを伝えることも重要です。

監修者労務SEARCH 編集部

労務・人事・総務管理者の課題を解決するメディア「労務SEARCH(サーチ)」の編集部です。労働保険(労災保険/雇用保険)、社会保険、人事労務管理、マイナンバーなど皆様へ価値ある情報を発信続けてまいります。
詳しいプロフィールはこちら

本コンテンツは労務SEARCHが独自に制作しており、公正・正確・有益な情報発信の提供に努めています。 詳しくはコンテンツ制作ポリシーをご覧ください。 もし誤った情報が掲載されている場合は報告フォームよりご連絡ください。

この記事をシェアする

労務SEARCH > ニュース > 雇用保険が適用拡大!週10時間以上の労働者が対象に【2028年10月から】