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両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)とは?徹底解説

両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)とは?徹底解説

監修者:岡 佳伸 社会保険労務士法人|岡佳伸事務所
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両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)は、今話題となっている介護離職の予防のため、会社がさまざまな制度を作るなどの取り組みに対して、国から助成金が出る制度となります。

ポイントは仕事と介護の両立支援のために「介護離職を予防するための両立支援対応モデル」を策定することです。介護休業の取得促進や、その後の職場復帰の手助け、または働きながら介護を行うための勤務制度を作り上げることとなります。詳しく内容を見ていきましょう。

職場環境整備の取り組みとはどのようなものなのか?

仕事と介護の両立のためには、まず従業員たちが現在介護を行っているのか、今後その可能性があるのかなどを調査し、それに応じて職場環境の整備を行っていかなければなりません。
各項目の参考資料やリストについては下記出典先を参照してください。

出典:厚生労働省ホームページ

従業員の状況把握

まずは、厚生労働省が指定する調査票「仕事と介護の両立実態把握アンケート」を実施し、従業員たちの状況を把握しておく必要があります。このアンケートは、過去に介護を行ったことがあるか、現在介護を行っているか、将来介護を行う可能性があるかなどの項目があります。

調査対象
長期休業中の従業員(長期出張中、出向者を含む)などをのぞき、原則として雇用する全ての従業員としています。

ただし、常時雇用する従業員が100人以上いる事業主の場合は、最低でも100人以上を調査対象とする必要があります。そして当アンケートは、回収率が3割以上、あるいは回収数が100人以上でなければ、助成金の対象とならないので注意しましょう。また、アンケート実施後は結果を集計し、「両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)アンケート調査結果報告書」により取りまとめます。

制度設計・見直し

もし、介護に関する制度がきちんと整備されていないのであれば、制度設計と見直しの必要があります。最低でも以下の6つの「介護休業関係制度」を、労働協約または就業規則に規定しなければなりません。

介護休業関係制度

  1. 介護休業の制度
  2. 介護休暇
  3. 深夜業の制限
  4. 所定労働時間の短縮等の措置
  5. 時間外労働の制限
  6. 所得外労働の制限

すでに導入されている場合でも、厚生労働省のホームページにある「『仕事と介護の両立支援制度』を周知しようチェックリスト」を使用し、これらの制度がどれだけ周知されているかを把握します。

従業員への支援も取り組みに含まれる

もちろん環境の調査だけでなく、実際に従業員に対して支援も行わなければなりません。

介護を行う可能性のある従業員への支援

介護の可能性がある従業員に対しては、人事労務担当者等による仕事と介護を両立するための社内研修を行わなければなりません。厚生労働省が指定する資料「仕事と介護の両立セミナー」の資料をもとに、研修を行えるように準備しておきます。

介護を行っている従業員への支援

現在介護を行っている従業員に向けて、相談窓口の設置とその存在の周知を行い、相談窓口の担当者は上記の「仕事と介護の両立セミナー」に基づいた社内研修を受けます。ただし、研修担当者と相談窓口担当者が同一である場合や、社外から担当者を招く場合はこれに該当しません。

そして周知については、厚生労働省が指定する資料「仕事と介護の両立準備ガイド」を使用し、原則として雇用する全ての労働者に対して実施しなければなりません。

助成金の対象となる介護支援プランとは?

介護支援プランとは介護休業を迅速に取得することはもちろんのこと、休業期間終了後には従業員が速やかに復帰できるよう、あらかじめ立てておくプランのことをいいます。

介護支援プランの作成について

作成の際は厚生労働省の「介護支援プラン策定マニュアル」を参考にしてください。また、このプランには、従業員が行っていた業務の整理や引き継ぎに関する措置、休業期間終了後の職場復帰の段取り、復帰後のフォロー面談などが組み込まれています。

介護支援プランは、助成金を支給してもらうためには必須となりますので、必ず作成するようにしましょう。

助成金の対象となる介護休業、介護制度

前項の介護支援プランは、従業員が「介護休業」「介護制度」のどちらを取得する場合でも必要になります。

介護休業とは

介護が必要な家族1人につき通算93日まで、3回を上限として介護休業を分割取得できることをいいます。

助成金の対象となる介護休業を利用する場合
家族の要介護の事実を把握したあと、介護休業の開始日の前日までに、対象介護休業取得者の上司または人事労務担当者と休業取得者が、少なくとも1回以上は介護支援プラン策定のための面談を行います。その面談結果について記録し、作成したプランに基づいて業務の整理・引き継ぎを介護休業の開始前日までに行わなければなりません。

介護休業終了後は、再び対象介護休業取得者の上司または人事労務担当者と休業取得者で、職場復帰した日の翌日から1ヶ月以内にフォロー面談を1回以上行い、その面談結果について記録することとしています。そして、引き続き雇用保険被保険者として1ヶ月以上の継続雇用している(本助成金の支給申請日においても)ことが助成金支給の条件となります。

介護制度とは

介護休業を利用していないにしても、以下のいずれかの勤務制度を継続で3ヶ月以上、あるいは分割でも90日以上利用するものをいいます。

介護制度に当たるもの

  • 短時間勤務制度
  • 深夜業の制限制度
  • 所定外労働の制限制度
  • 時差出勤制度

助成金の対象となる介護制度を利用する場合
家族の要介護の事実について把握した後、介護休業の開始日の前日までに、対象介護休業取得者の上司または人事労務担当者と休業取得者が、少なくとも1回以上は介護支援プラン策定のための面談を行い、実施結果を記録します。

これに基づいて休業取得者の制度利用期間中の業務体制の検討を、制度利用開始日の前日までに実施し、制度利用期間終了後は、その終了日の翌日から1ヶ月以内に、再び対象介護休業取得者の上司または人事労務担当者と休業取得者でフォロー面談を実施し、結果の記録をすることで助成金の対象となります。

助成金受給の流れと申請時期

助成金の申請は、以下のように行います。

介護休業の場合

「介護離職防止支援コース(介護休業)支給申請書」等を、対象介護休業取得者の休業終了日の翌日から起算して1ヶ月が経過する日の翌日から2ヶ月以内に所在地を管轄する都道府県労働局雇用環境・均等部(室)へと提出してください。面談などもあるため、休業期間が終了してからすぐの提出は認められていません。

介護制度の場合

「両立支援等助成金(介護離職防止支援コース(介護制度))支給申請書」等を、制度利用期間の最終日から起算して1ヶ月が経過する日の翌日から2ヶ月以内に所在地を管轄する都道府県労働局雇用環境・均等部(室)へと提出してください。両制度ともに申請後、助成金の支給が決定した場合は「両立支援等助成金支給決定通知書」が送られてきます。

支給額

厚生労働省による、助成金の支給額は以下のように定められています。(2017年4月25日 時点)

イ 支給額は、次の額を支給することとする。
ただし、「第1共通要領0302」に規定する生産性要件を満たす場合は、括弧内の額を支給する。

(イ) 介護離職防止支援コース(介護休業)

38万円(48万円)(中小企業は57万円(72万円))

(ロ) 介護離職防止支援コース(介護制度)

19万円(24万円)(中小企業は28.5万円(36万円))

ロ 助成金の支給は、1事業主当たり、上記イ(イ) (ロ)それぞれについて有期契約労働者1人、
雇用期間の定めのない労働者1人の計2人を対象とする。

有期契約労働者であるか雇用期間の定めのない労働者であるかの判定は、介護支援プランの策定日において行う。

出典:厚生労働省ホームページ 両立支援等助成金

まとめ

やはり従業員が安心して働くことができる環境を作るには、こういった仕事と家庭を両立できるような制度が必要不可欠でしょう。介護が必要な従業員に対して休業を与えるだけでなく、休業期間終了後にはスムーズに復帰できるように努めるというのもポイントですね。

また、今後介護が必要になる可能性がある従業員に対しても、その時を想定して早めに準備しておくというもの大切になります。

社会保険労務士法人|岡佳伸事務所 監修者岡 佳伸

社会保険労務士法人|岡佳伸事務所の代表、開業社会保険労務士として活躍。各種講演会の講師および各種WEB記事執筆。日本経済新聞女性セブン等に取材記事掲載。2020年12月21日、2021年3月10日にあさイチ(NHK)にも出演。
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