単身赴任手当とは?
転勤によりやむを得ず家族と別居しなければならなくなったため支給される手当です。別名「別居手当」とも言います。たとえば、子供の学校や受験、持ち家の管理、老親や病人の介護などが理由で家族と別居を余儀なくされるケースなどが当てはまります。
近年は労働者の権利意識とともに企業側のコンプライアンスも向上し、長時間労働などの労働環境の悪習が見直され始めています。
しかし、それに伴い人事・労務担当者の業務上の悩みも増えていることでしょう。そこで今回は「配転(従業員の配置変更)」のなかでも「単身赴任」に焦点を絞り、その法的根拠と主な手当についてご説明します。
単身赴任をする際に従業員が受け取る代表的な手当は、次の3つがあります。
まずは、単身赴任時の手当として最初に思い浮かべる方も多いであろう「単身赴任手当」について説明します。
転勤によりやむを得ず家族と別居しなければならなくなったため支給される手当です。別名「別居手当」とも言います。たとえば、子供の学校や受験、持ち家の管理、老親や病人の介護などが理由で家族と別居を余儀なくされるケースなどが当てはまります。
単身赴任手当の金額については、一律定額とする方法や転勤先、家族が住む住居との距離、役職などから決める方法など、会社によってさまざまです。
単身赴任先の土地では、労働者が新たに住居を借りて住むことになります。そのとき、会社が出す手当が「家賃補助」です。
いわゆる「住居手当」と呼ばれるもので、会社により名称はさまざまです。一般的には住居を借りた家賃の一部を会社が負担するという形になりますが、負担方法には大きくわけて2つの方法があります。
・社員自らが借りた物件の家賃を補助する
・会社が借りた社宅に住まわせる
なお、この際の家賃設定により事実上非課税とする方法もあります。詳しくは国税庁のホームページをご覧ください。
単身赴任者には「帰省手当」も支給されます。
単身赴任後に自宅に帰るための交通費のことです。その支給方法は大きく分けて2つあります。
・定額を支給する
・領収書にもとづき実費を支給する
いずれの方法も、会社の就業規則にもとづき、該当者に手当を支給する形となります。
上記3種類の手当のほか、会社の就業規則に規定されることが多い手当の項目として、引っ越しに係る一時金としての手当や光熱費に対する手当に加え、家族構成等をもとにする家族手当などがあります。
最後に単身赴任時に支給する手当の金額の参考として、国家公務員のケースをご紹介します。
国家公務員の場合、単身赴任手当は月額30,000円ですが配偶者の住居と赴任先住居の距離に応じて加算されています。また、住居に関しては27,000円を上限に住居手当が支給され、これに配偶者等が引き続き家賃を支払う必要がある場合は13,500円を上限として手当が加算されます。
また単身赴任手当のところでも説明したように、赴任先によっては地域手当などを支給します。
企業が労働者を配転※するにあたり、気を付けなければならない点は「配転命令権の行使の権利の乱用になるかどうか」です。
労働者の職務内容・勤務地が長期間変わること。
企業における配転は、多くの職場や仕事を経験させて人材育成を行う、あるいは企業内で人員配置を調整し、従業員の雇用を維持することを目的として行われます。
適法な配転を行うためには、次の2つの要件が必要です。
上記のうち1と2に関しては適正であれば問題ありませんが、3の「不利益」についてはその大きさについての考え方が判断のポイントとなります。
つまり配転については、最近特に注目されている仕事と家庭の両立、育児や介護等がかかわるケースで、特定の配慮が必要かどうかを慎重に判断しなければならないということになります。
配転自体については一定の規制や配慮が求められますが、それに対する手当の支給はその項目や金額については任意となります。
一般的に、単身赴任する労働者には何らかの手当を支給する企業が多く見られます。
しかし他方で、単身赴任手当の規定そのものがない企業が存在することも事実です。とはいえ、各企業の支給可能な金額を考慮したうえで、単身赴任を必要とする仕事の重要性や、単身赴任者のモチベーション維持・向上に必要な対価を払うことについても考慮されるべきではないでしょうか?
日本大学卒業後、医療用医薬品メーカーにて営業(MR)を担当。その後人事・労務コンサルタント会社を経て、食品メーカーにて労務担当者として勤務。詳しいプロフィールはこちら