この記事でわかること・結論
- 就業時間とは、雇用契約書や就業規則に記載されている時間範囲のことであり休憩時間も含む
- 就業規則には、始業から休憩そして終業までの時間(就業時間)を明記する義務が定められている
- 賃金計算などするうえで就業時間と労働時間や時間外労働などを区別して覚えておく必要がある
この記事でわかること・結論
就業時間とは、会社の就業規則に定められている始業時間から休憩を挟んだ終業時間までの時間帯のことを指します。
労働者が働く時間についてはほかにも勤務時間や就労時間、労働時間や残業時間などさまざまな呼び方がありますが、それぞれ違いはあるのでしょうか。
本記事では、就業時間について法的な定義および平均的な時間、そして似ている言葉との違いや計算方法などを解説します。
目次
就業時間とは、各会社の就業規則および雇用契約書などに記載されている「始業時間から就業時間までの合計時間」のことを指します。休憩時間についても就業時間に含まれます。
この場合は、午前10時から午後19時まで休憩時間を含んだ「合計9時間」が就業時間になります。9時出勤〜18時退勤や8時出勤〜17時退勤の会社なども同様に、合計9時間が就業時間です。
上記の時間について企業は必ず就業規則などに記載する義務があるため、労働者で自身の就業時間が気になる方は就業規則や雇用契約書を確認しましょう。
就業時間は、会社の就業規則や労働者を雇用する際の雇用契約書などに明記しなければならず、その義務や詳細は労働基準法第89条にて定められています。
企業の就業規則に明記しなければならない事項は労働基準法で決められています。「始業および終業の時刻、そして休憩時間」つまり就業時間の内容も同法に明記されているため、就業時間は法的な定義として「就業規則に準拠した時間」とも言えるでしょう。
また、就業規則には必ず明示する「絶対的必要記載事項」と該当企業のみ記載する「相対的必要記載事項」がありますが、就業時間については前者であるため必ず記載しておく必要があります。
常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。1. 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項(以下略)
絶対的必要記載事項には他にも、
などがあります。また、就業時間など記載した就業規則については労働者への周知義務も労働基準法第106条にて定められています。具体的には書面交付や掲示などで周知することが一般的です。
就業時間と似ている言葉のなかに「就労時間」や「勤務時間」があります。これらは言葉は異なりますが、就業時間と同様の意味を表しています。
勤務時間という文字は、スタッフ募集中などと書かれたアルバイトの募集チラシなどでしばしば見かけることがあります。
就業時間には就労時間や勤務時間のほかにも「労働時間」や「残業時間」などが似ている言葉として存在します。先ほどの2つと違って、労働時間や残業時間は就業時間と意味合いが少し異なるためそれぞれ解説します。
労働時間とは「労働者が使用者の指揮命令および監視下にある時間帯」であると考えられることが一般的であり、休憩時間を含まない時間を指します。就業時間が休憩時間を含む範囲であるのに対して、労働時間は休憩時間を含まない範囲という違いがあります。
上記の会社では就業時間は9時間でしたが、労働時間は実際に働く時間である休憩を除いた8時間を指します。
また、労働時間については労働基準法第32条にて労働時間の上限などが定められており、以下条文に準拠して「週40時間、1日8時間以内」を法定労働時間として守る必要があります。
さらに労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与える義務があります。
使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。
上記の法定労働時間を超えて労働者に時間外労働で働いてもらう場合は、労使間で36協定を締結して労働基準監督署に届け出をする必要があります。時間外労働(残業時間)の詳細は、次で解説します。
残業時間とは企業が決めた就業時間や、法定労働時間を超えて労働した時間のことを総じて呼びます。残業時間には大きく「法定内残業」と「法定外残業」の2つがあるためそれぞれ解説します。
法定内残業とは、企業が定めた就業時間は超えているが法定労働時間を超えない残業分のことを指します。たとえば1日5時間で勤務している労働者が、その日3時間分の残業をする場合などが該当します(法定労働時間は1日8時間)。
上記のような法定内残業である場合は通常賃金は超えた分の支払いが必要ですが、別途、割増賃金などを支給する必要はありません。
法定外残業とは、法定労働時間を超えた残業分のことであり超過分は割増賃金で支払う必要があります。具体的には先述した「週40時間、1日8時間以内」を超える場合、超えた時間分に対して基本賃金の25%を割増賃金として支払う必要があります。
就業時間をしっかり計算して把握することで、勤怠の正確の把握はもちろん賃金計算もスムーズにおこなえるでしょう。ここではいくつかの就業時間パターンおよび計算方法を解説します。
まずは、多くの企業で採用されている所定労働時間8時間・休憩1時間のケース(8:00 〜 17:00勤務の場合)を見てみましょう。
8:00〜12:00 | 所定労働時間4時間 |
---|---|
12:00〜13:00 | 休憩1時間 |
13:00〜17:00 | 所定労働時間4時間 |
上記の場合は「就業時間が9時間・所定労働時間が8時間」となります。法定労働時間内であり、残業も特にないため通常の賃金支給で問題ありません。
続いては所定労働時間が8時間より少ないですが、残業をしているパターン(8:00 〜 14:00勤務・残業ありの場合)を解説します。
8:00〜14:00 | 所定労働時間6時間 |
---|---|
14:00〜14:45 | 休憩45分 |
14:45〜15:45 | 所定労働時間1時間(法定内残業) |
上記の場合は「就業時間が6時間45分・所定労働時間が6時間・実働時間は7時間」となります。本来は8時から14時までの勤務でしたが、1時間の残業が途中で確定してしまいました。
また、労働時間が6時間を1分でも超える場合は45分以上の休憩が必要であるため、間で休憩時間を取っています。その後、法定内残業を1時間しますが合計で7時間労働であり割増賃金には該当しません。
最後に法定外残業をする場合(8:00 〜 17:00勤務・残業ありの場合)を解説します。
8:00〜12:00 | 所定労働時間4時間 |
---|---|
12:00〜13:00 | 休憩1時間 |
13:00〜17:00 | 所定労働時間4時間 |
17:00〜19:00 | 時間外労働2時間(法定外残業) |
上記の場合は「就業時間が9時間・所定労働時間が8時間・実働時間は10時間」となります。また、法定労働時間である1日8時間を超えているため17時から19時までは基本賃金の25%である割増賃金として計算します。
就業時間とは、出勤時間から退勤時間までとその間の休憩時間を含む合計時間のことを指します。就業規則や雇用契約書に記載されている範囲や、募集要項で「勤務時間」という言葉で書かれる範囲のことです。
また、言葉としては似ていますが労働時間とは休憩時間を含まない時間範囲を指します。労働時間は法律のなかで「1日8時間・週40時間以内」という法定労働時間で決められています。
例外として36協定を締結して時間外労働になれば割増賃金の支給義務があります。賃金計算にも影響するため、就業時間およびそれぞれの時間範囲については区別して理解しておく必要があります。
労務・人事・総務管理者の課題を解決するメディア「労務SEARCH(サーチ)」の編集部です。労働保険(労災保険/雇用保険)、社会保険、人事労務管理、マイナンバーなど皆様へ価値ある情報を発信続けてまいります。
詳しいプロフィールはこちら