会社を移転する際の手続きのひとつに「労働保険名称、所在地変更届」の提出が求められます。
また、「労働保険名称、所在地変更届」は定期的に出す書類ではないことから、移転時に書類の作成をうっかり忘れてしまいがちです。今回は「労働保険名称、所在地変更届」を、いつまでに、どこに提出すれば良いのか等について解説します。
会社を移転する際に提出しなければならない書類が、今回解説する「労働保険名称、所在地変更届」です。この場合「労働保険名称、所在地変更届」の提出時期は、事実として変更が発生した日の翌日から起算して、10日以内とされています。
このとき、移転前に提出するのではなく、移転後に提出することを覚えておきましょう。また、届け出るのは事業主本人でなければならないというわけではなく、社会保険労務士による提出の代行も可能となっています。
冒頭でお伝えしましたように、「労働保険名称、所在地変更届」は定期的に出す書類とは異なり、事実が発生した場合にのみ提出する書類となります。つい見落としがちですが、従業員の保険など労働環境を整えるためにも必要な書類であることを忘れてはなりません。
「労働保険名称、所在地変更届」の提出先ですが、行っている事業の種類によって異なります。この点について、確認をしていきましょう。
まず、事業の種類は、いわゆる「一元適用事業」と「二元適用事業」に分けられます。それぞれの違いについてご紹介しますと、一元適用事業とは、労災保険と雇用保険の保険料の申告や納付をまとめて取り扱う事業のことを指します。
二元適用事業とは、労災保険と雇用保険の取り扱いをそれぞれ区別しておく必要があるため、一元適用事業とは異なり、両保険において保険料の申告と納付等を別々に行う事業を指します。一元適用事業の場合、「労働保険名称、所在地変更届」の提出先は移転先の所在地を管轄する労働基準監督署へのみ提出します。
一方で二元適用事業の場合は、先にご紹介したように労災保険と雇用保険を別々に取り扱っていることから、労災保険については移転後の所在地を管轄する労働基準監督署へ、雇用保険については移転後の所在地を管轄する公共職業安定所(以下:ハローワーク)へ、それぞれ「労働保険名称、所在地変更届」の提出が必要となります。
ご自身の事業がどちらに該当するかは、事業主であれば当然ご存じかと思います。いずれにせよ、提出先については留意しておくに越したことはありません。また、不明点があれば自己判断で行わず、必ず確認することが大切です。事業規模が小さく専門の担当者がいない会社では、あらかじめ社会保険労務士などに相談することも考えておきましょう。
この「労働保険名称、所在地変更届」は、何も会社の移転時のみに提出しなければならない書類ではありません。事業を継続していくなかで、「労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則第5条」に挙げられている事項に変更があった場合に提出が必要となる書類が、この「労働保険名称、所在地変更届」です。
この書類を使用し、変更を届け出る事項としては、事業主の氏名または名称、住所、事業の種類のほか、厚生労働省令で定める事項に変更があったとき、とされています。そのため、何か会社にかかわる変更があった際は、どんな些細なことだとしても、事前に届け出る必要があるか確認をすると良いかもしれません。
また、届出に際して特に間違える人が多い項目としては、代表者名の変更や個人事業主の氏名変更、また有限会社から株式会社への変更が挙げられます。もちろん、この際の手続きにも「労働保険名称、所在地変更届」の届出が必要です。提出し忘れることや提出漏れがないように、常々確認しながら手続きを行うことが大切だと言えます。
事業を続けていくにあたり、事業内容や代表者名、そして所在地などの変更は避けられない事態として生じる可能性のあるものです。「労働保険名称、所在地変更届」は、これらの変更があった際に必ず提出しなければならない書類となっていますので、よく覚えておきましょう。
また、こういった手続きについては、事業主のみならず、労災保険や雇用保険との絡みもあるために従業員への影響も考えられます。軽視せず、しっかりと提出の義務を果たすように留意しましょう。
1982年生まれ、東京都豊島区出身
2016年:社会保険労務士開業登録
2018年:特定社会保険労務士付記
2019年:行政書士登録
ワイエス行政書士・社会保険労務士事務所の特定社会保険労務士
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