この記事でわかること・結論
- 退職証明書の役割や発行義務
- 退職証明書の書き方や発行手順、離職票との違い
- 退職証明書の無料テンプレートの活用方法

この記事でわかること・結論
従業員が会社を退職する際、会社側が発行する書類のひとつに退職証明書が含まれることがあります。退職証明書とはどのような役割を持つ書類なのでしょうか?
この記事では、退職証明書の基礎知識や発行までの流れ、離職票との違いなど、退職証明書に関する疑問をまとめて解説していきます。今すぐ使える退職証明書の無料テンプレートも公開しているのでぜひ参考にしてください。
目次
退職証明書とは、従業員が会社を退職したことや、在職中の使用期間、業務内容などを会社が証明する書類です。
国や自治体などが発行する公的な証明書ではなく、退職者からの請求を受けて勤務先の会社が発行します。
法律で決められた書式はなく、厚生労働省が公開するモデル様式のほか、必要事項を満たした自社様式でも作成できます。厚生労働省でも「退職事由に係るモデル退職証明書」が公開されています。
なお、会社が証明するのは、原則として退職者本人が請求した事項に限られます。会社の判断で、本人が請求していない退職理由や賃金などを記載しないよう注意しましょう。
退職証明書のモデル様式
厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー」
退職証明書は、すべての退職者へ自動的に発行する必要がある書類ではありません。ただし、退職者から請求を受けた場合は、会社に発行義務があります。
労働基準法第22条では、労働者が退職時に「使用期間」「業務の種類」「事業における地位」「賃金」「退職の事由」について証明書を請求した場合、使用者は遅滞なく交付しなければならないと規定されています。
退職証明書は、会社が任意で発行するだけの書類ではありません。退職者から請求された場合は、労働基準法に基づいて遅滞なく交付する必要があります。
一方、退職者から請求がなければ、会社が自主的に退職証明書を作成して交付する義務はありません。
退職証明書の交付を請求できる期間は、退職から2年間です。
また、期間内であれば請求回数に制限はないため、紛失した場合や別の手続きで再度必要になった場合など、退職者から改めて請求されたときは会社側で対応する必要があります。
退職後しばらく経ってから国民健康保険への加入や転職先への提出で必要になるケースもあるため、退職者から請求を受けた際にスムーズに発行できる体制を整えておきましょう。
退職証明書は、主に退職後の公的手続きや転職時の確認書類として利用されます。
退職後すぐに別の会社へ就職せず、これまで加入していた健康保険や厚生年金から外れる場合は、国民健康保険や国民年金への切り替えが必要になることがあります。
手続きでは退職日や社会保険の資格喪失日を確認できる書類を求められるため、退職証明書が利用できる場合があります。ただし、自治体によって必要書類が異なることがあるため、手続き前に居住地の市区町村へ確認すると安心です。
転職先の会社から、前職を退職していることや在籍期間などを確認するために退職証明書の提出を求められることがあります。
この場合も、転職先から求められた項目をそのまま会社が記載できるわけではありません。退職証明書に記載できる法定の証明事項については、退職者本人から請求されたものに限られます。
退職後、配偶者など家族の健康保険の被扶養者となる場合、以前の勤務先を退職したことや収入状況を確認するための書類を求められることがあります。
必要な証明書は加入先の健康保険組合や協会けんぽなどによって異なるため、退職証明書だけで手続きできるか事前に確認しておきましょう。

退職証明書には、法律で定められた統一様式はありません。そのため、自社で任意の様式を作成できますが、必要な項目を一から整理したり、レイアウトを整えたりするのは手間がかかります。
労務サーチでは、退職証明書の無料テンプレートを公開しています。退職者が証明を希望する事項に合わせて編集できるため、社内に決まった様式がない場合や、初めて退職証明書を作成する場合にも活用できます。
なお、退職証明書には、労働者が請求していない事項を記載しないよう注意が必要です。テンプレートを使用する場合も、使用期間や業務の種類、賃金、退職の事由などのうち、退職者が証明を希望する項目を確認したうえで作成しましょう。
退職時に関係する書類には、退職証明書のほかに「離職票」や「離職証明書」があります。名称が似ているため混同されやすいですが、それぞれ目的や発行・作成する主体、提出先が異なります。
特に、退職証明書は会社が退職の事実などを証明する書類であるのに対し、離職票は失業等給付の手続きに使用する書類、離職証明書は離職票の交付に必要な手続きを行うために会社がハローワークへ提出する書類です。違いを整理すると、以下のとおりです。
| 項目 | 退職証明書 | 離職票 | 離職証明書 |
|---|---|---|---|
| 主な目的 | 退職の事実や在職中の情報などを証明する | 雇用保険の基本手当などの手続きに使用する | 離職票の交付に必要な離職内容をハローワークへ届け出る |
| 発行・作成主体 | 会社 | ハローワーク | 会社 |
| 主な提出先・利用先 | 転職先・自治体・健康保険の手続き先など | ハローワーク | ハローワーク |
| 根拠法令 | 労働基準法 | 雇用保険法 | 雇用保険法 |
このように、退職証明書・離職票・離職証明書は、それぞれ役割が異なります。
特に退職証明書と離職票は、どちらも退職後に関係する書類であるため混同されやすいですが、退職証明書は退職の事実や在職中の情報を証明する書類、離職票は雇用保険の基本手当などの手続きに使用する書類です。
また、離職票を交付していても、退職者から退職証明書の請求を受けた場合は、会社は別途退職証明書を交付する必要があります。
退職証明書と解雇理由証明書は、どちらも労働基準法第22条に基づく証明書ですが、請求できるタイミングや証明する内容が異なります。
| 項目 | 退職証明書 | 解雇理由証明書 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 退職の事実や在職中の情報を証明する | 解雇された理由を証明する |
| 請求できるタイミング | 退職後 | 解雇予告後から退職日まで |
| 証明する内容 | 使用期間・業務の種類・地位・賃金・退職の事由のうち本人が請求した事項 | 解雇の理由 |
| 発行義務 | 労働者から請求された場合あり | 対象となる労働者から請求された場合あり |
退職証明書は、退職後に使用期間や業務の種類、賃金、退職の事由などについて証明を求める書類です。一方、解雇理由証明書は、解雇予告を受けた労働者が、退職前に解雇理由の証明を求める際に使用します。
たとえば、会社から「1か月後に解雇する」と予告された労働者が、その理由を確認したい場合は、退職日を待たずに解雇理由証明書を請求できます。
なお、解雇予告後に、その解雇とは別の理由で労働者が退職した場合は、退職後に解雇理由証明書を交付する必要はありません。
退職証明書には法律で定められた書式はありませんが、労働基準法第22条では、労働者が証明を請求できる事項が定められています。
会社は、退職者が希望する内容を確認したうえで、必要な事項のみを記載しましょう。本人が請求していない事項を会社の判断で追加することはできません。
退職証明書では、労働者から請求があった場合に、次の事項を証明します。
| 項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 使用期間 | 入社日から退職日までの在籍期間 |
| 業務の種類 | 在職中に従事していた業務や職種 |
| 事業における地位 | 役職や社内での地位 |
| 賃金 | 在職中の賃金に関する内容 |
| 退職の事由 | 自己都合退職、会社都合退職、解雇など。解雇の場合はその理由を含む |
これらすべてを必ず記載するわけではありません。たとえば、退職者が「使用期間と業務の種類だけ証明してほしい」と請求した場合は、その2項目のみを記載します。
なお、書類として分かりやすくするため、実務上は退職者氏名、退職年月日、証明年月日、会社名、所在地、代表者名なども記載しておくとよいでしょう。
退職者から「退職の事由」の証明を求められた場合は、実際の退職理由に沿って記載します。
自己都合による退職であれば「自己都合による退職」など、事実関係が分かる簡潔な表現で問題ありません。
一方、解雇の場合は、退職者から求められれば解雇理由も含めて証明する必要があります。会社と労働者の間で退職理由について見解が異なる場合でも、会社は自社の認識に基づいた内容を記載して遅滞なく交付する必要があります。ただし、虚偽の内容を記載してはいけません。
退職証明書は、退職者から請求を受けたら、希望する証明事項を確認して作成し、遅滞なく交付します。
退職証明書を発行する流れ
まずは、退職者が何について証明を希望しているのか確認します。
使用期間や業務の種類、賃金、退職理由など、証明できる事項は複数ありますが、会社が記載できるのは退職者から請求された事項に限られます。
メールや申請書などで希望項目を確認できるようにしておくと、記載内容をめぐる認識違いを防ぎやすくなります。
希望する証明事項を確認したら、在籍記録や賃金台帳、人事情報などと照らし合わせながら退職証明書を作成します。
特に、使用期間や賃金、退職理由などは、離職票をはじめとする他の退職関連書類と内容が食い違わないよう、事実関係を確認しておきましょう。
社内に様式がない場合は、無料テンプレートを活用すると効率的です。
退職証明書には「請求後○日以内」といった具体的な日数は定められていませんが、労働基準法では「遅滞なく」交付することが求められています。
退職後の転職手続きや社会保険関係の手続きで早急に必要となる場合もあるため、請求を受けたらできるだけ速やかに交付しましょう。
なお、退職前に退職証明書そのものを交付する制度ではありません。解雇予告期間中に労働者から解雇理由の証明を求められた場合は、別途「解雇理由証明書」の交付が必要です。
退職証明書そのものについて一律の法定保存期間が定められているわけではありませんが、発行した証明書の写しや発行日、請求内容などを社内で記録しておくと安心です。
退職者から再発行を求められた場合や、記載内容について問い合わせがあった場合にも確認しやすくなります。個人情報を含むため、保管する場合は閲覧権限などを適切に設定しましょう。
退職証明書の記載内容や交付方法を誤ると、労働基準法違反となる可能性があるため注意しましょう。
退職証明書には、労働者が請求していない事項を記載してはいけません。
労働基準法第22条では、使用期間、業務の種類、事業における地位、賃金、退職の事由のうち、労働者が請求した事項について証明することが定められています。
たとえば、退職者が使用期間だけを証明してほしいと請求した場合、会社側の判断で賃金や退職理由まで記載することはできません。
また、労働者の再就職を妨げる目的で、第三者と申し合わせて秘密の記号などを記載することも禁止されています。
退職者から退職証明書を請求された場合、会社は遅滞なく交付する必要があります。
正当な理由なく交付を拒否した場合や、労働者が請求していない事項を記載した場合は、労働基準法第22条違反となり、30万円以下の罰金が科される可能性があります。
退職証明書には「請求から何日以内」といった具体的な期限はありませんが、退職後の社会保険手続きや転職などで早急に必要となる場合もあるため、請求を受けたら速やかに対応しましょう。
退職証明書と離職票は、それぞれ目的が異なる別の書類です。
離職票をすでに退職者へ交付していても、それを理由に退職証明書の発行を拒否することはできません。厚生労働省でも、離職票の交付をもって退職証明書の交付義務を果たしたことにはならないとしています。
退職者から退職証明書の請求を受けた場合は、離職票の発行状況にかかわらず、別途対応しましょう。
従業員が退職する際は、退職証明書以外にも、会社側で交付や返却の手続きが必要となる書類があります。
必要な書類や手続きは退職者の加入状況などによって異なるため、退職日までに確認しておくとスムーズです。
離職票は、退職者が雇用保険の基本手当を受給する際などに使用する書類です。
離職票は、会社が雇用保険の資格喪失・離職に関する手続きを行った後、ハローワークから交付されます。従来は会社を経由して退職者へ渡す方法が一般的でしたが、2025年からは、離職者本人のマイナポータルへ直接交付する仕組みも始まっています。
厚生労働省では、離職後に会社から離職票が届かない場合は、会社へ処理状況を確認し、それでも届かない場合にはハローワークへ相談するよう案内しています。
なお、離職票と退職証明書は目的や発行主体が異なる別の書類です。離職票を交付していても、退職者から退職証明書を請求された場合は、別途対応する必要があります。
年の途中で退職した従業員には、会社から「給与所得の源泉徴収票」を交付します。
給与所得の源泉徴収票には、その年に会社から支払われた給与や源泉徴収税額などが記載されており、転職先での年末調整や本人が確定申告を行う際に使用します。
中途退職者については、退職の日以後1か月以内に本人へ交付する必要があります。
また、退職金を支給した場合は、給与所得の源泉徴収票とは別に「退職所得の源泉徴収票等」が必要となります。2026年1月1日以後に支払う退職手当等についても、原則としてすべての受給者について作成し、退職後1か月以内に交付します。
雇用保険被保険者証は、雇用保険の被保険者番号などを確認するための書類です。
雇用保険の加入手続き後、原則としてハローワークから事業主を通じて本人へ交付されます。
退職後に転職する場合、転職先で雇用保険の加入手続きを行う際に被保険者番号の確認が必要になることがあります。会社で保管している場合は、すみやかに本人に返却しましょう。
退職証明書について、企業の担当者や退職者が疑問に感じやすいポイントをまとめました。
退職証明書は、退職の事実や使用期間、業務の種類、賃金、退職の事由などについて、退職者から請求を受けた場合に会社が交付する書類です。
退職者から請求された場合、会社は遅滞なく交付する義務があり、本人が請求していない事項を勝手に記載することはできません。また、離職票とは目的の異なる書類であるため、離職票を交付済みであっても退職証明書の請求には別途対応する必要があります。
退職証明書には決められた書式がないため、一から作成することも可能ですが、必要な項目を確認しながら作成するには手間がかかります。効率よく作成したい場合は、労務サーチの無料テンプレートをご活用ください。