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扶養に関するアンケート調査

今後、扶養から外れる?続ける?扶養内で働く人300名の意向調査結果

監修者:労務SEARCH 編集部
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現在、さまざまな年収の壁の改正が進んでいます。年収の壁はパートタイム・アルバイトなど扶養内で働く方に大きな影響を与えるもので、今後、働く時間を増やす方、扶養から外れて働くことを選択する方もいるかもしれません。

そこで今回労務SEARCHでは、配偶者や親の扶養に入る300名を対象に、扶養に関するアンケート調査を実施してみました。現在扶養に入っている理由、今後もし扶養に外れるとしたらどんなとき?、年収の壁の引き上げで働き方を変えるかなど、気になる点を聞いています。

扶養に入った理由や生活への影響に関する調査結果

まずは、扶養に入った理由や扶養に入った後の生活への影響について調査してみました。

扶養に入った理由の第1位は「家事や育児、介護などの役割を優先したいから」

最初に、扶養に入ることを決めた理由は何ですか?と聞いてみたところ、最も多かった回答は「家事や育児、介護などの役割を優先したいから」でした。

扶養に入ることを決めた理由は何ですか?

今回のアンケート調査における回答者の男女別の割合は、女性が87.0%、男性が13.0%です。これらを踏まえると、女性にとっては依然として家庭と仕事の両立の難しさや、家事・育児の負担の偏りが扶養に入る大きな理由となっていることがわかります。

そして、扶養に入ることを決めた理由の第2位は「税金や社会保険料の負担を抑えられるから/手取りが減るのを避けたいから」、第3位は「専業主婦(夫)だから/働いていないから」、第4位は「自分の収入が少ないから」と続きました。

なお、回答者の雇用形態は「パートタイム・アルバイト」が47.0%、「フリーランス」が12.3%、「正社員」が6.7%、「派遣社員」および「契約社員」が2.0%、「その他」が30.0%となっています。

あなたの現在の雇用形態を教えてください

回答者の年収帯は「年収103万円未満」が最多

パートタイムなどを含む会社勤めの給与所得者の場合、年収によって税金や社会保険料の支払い義務が発生するかが決まります。たとえば、住民税は年収100万円を超えた場合、所得税は年収103万円を超えた場合に課税対象となります(2025年2月時点)。

今回のアンケート調査の回答者に自身の年収帯を聞いてみたところ「年収103万円未満」が62.0%、「収入なし」が19.0%、「年収103万円~130万円」が9.4%、「年収202万円以上」が6.3%、「年収131万円~160万円」が3.0%、「年収161万円~201万円」が0.3%となりました。

現在のあなたの年収帯を教えてください。

この結果から、扶養内で働く方は住民税や所得税の発生ラインを超えないように働いている方が多いことがうかがえます。

また、所得税の発生ラインである年収103万円を超えたら、次に意識するのが扶養から外れるラインである年収130万円です。年収130万円を超えると、基本的には扶養から外れ、社会保険か国民健康保険に加入しなければなりません。年収帯の回答において「年収103万円~130万円」が第3位にランクインしていることを考えると、年収103万円を超えた扶養内で働く方の多くは、130万円は超えないように抑えて働く方が多いようです。

2023年10月から厚生労働省は「年収の壁・支援強化パッケージ」を開始し、年収が130万円を超えた場合でも、事業主が一時的な収入増であることを証明すれば、最大2年間は引き続き扶養に入ることができます。

40.7%が扶養に入ることで経済的な負担が「ある程度軽減された」

次に、扶養に入ることで経済的な負担が軽減されたと感じますか?と質問してみたところ「ある程度軽減された」が40.7%、「あまり変わらない」が32.0%、「大きく軽減された」が17.7%、「軽減されていない」が9.6%という結果になりました。

扶養に入ることで経済的な負担が軽減されたと感じますか?

扶養に入ることで経済的な負担が軽減されたとプラスに感じている方は約6割、変化や効果を感じていない方は約4割とおおよそ半々です。

このことから、扶養に入るか入らないか、年収をいくらに抑えるかなどを考える際は税金・社会保険料の負担を意識している方が多いものの、扶養に入ったことが経済的な負担の軽減につながっていると実感している方は半数程度なことがわかります。

40.3%が扶養に入ることで生活に安心感を「どちらかといえば感じている」

次に、扶養に入ることで生活に安心感を感じていますか?と質問してみました。その結果「どちらかといえば感じている」が40.3%、「あまり感じていない」が27.7%、「感じている」が21.7%、「全く感じていない」が10.3%となりました。

扶養に入ることで生活に安心感を感じていますか?

この質問に対する回答も、程度に差はあるもののプラスに感じている方が約6割、変化や効果を感じていない方が約4割とおおよそ半々となりました。これらの結果から、回答者の半数近くは扶養に入ることにあまりメリットを感じていない可能性があることがうかがえます。

今後、扶養から外れる?意向調査結果

では、現在扶養に入っている方が扶養から外れるとしたら、どんなときなのでしょうか。ここからは、現在扶養から外れることを検討している方の割合や、扶養から外れることを検討する理由について調査してみました。

扶養から外れることを「なんとなく検討している」方は41.7%

はじめに、今後、扶養から外れて働くことを検討していますか?と質問してみたところ「なんとなく検討している」が41.7%、「あまり検討していない」が31.0%、「具体的に計画している」が14.3%、「全く検討していない」が13.0%となりました。

今後、扶養から外れて働くことを検討していますか?

「具体的に計画している」または「なんとなく検討している」と回答した方のなかには、今後の年収の壁の引き上げに伴い、扶養から外れることを検討している方もいるでしょう。

扶養を外れるとした場合、その理由の第1位は「自分の収入を増やしたい」から

次に、扶養を外れるとした場合、その理由としてあなたの考えに最も近いものを一つお選びくださいと聞いてみました。その結果、圧倒的に多かった回答は「自分の収入を増やしたい」で、54.0%の方がこの回答を選んでいます。

扶養を外れるとした場合、その理由としてあなたの考えに最も近いものを一つお選びください。

次いで「子どもの成長や独立により時間に余裕ができたため」が15.0%、「キャリアアップを目指したい/正社員やフルタイムで働きたい」が11.0%、「家庭の事情が変わるため(離婚、家族の転勤など)」が8.0%と続きました。「その他」を選んだ方に対しては具体的な理由を聞いてみたところ「法律が変わりそうだから」などの回答が集まりました。

配偶者控除・配偶者特別控除に関する調査結果

次に、配偶者の年収に応じて納税者が控除を受けられる「配偶者控除」や「配偶者特別控除」について調査してみました。ここからは回答者を配偶者の扶養に入っている方のみに絞っています。また、7割以上の回答者の配偶者は、配偶者控除または配偶者特別控除を受けていると回答しています。

配偶者の扶養に入っている方にお聞きします。現在、あなたの配偶者は「配偶者控除」や「配偶者特別控除」を受けていますか?

年収上限の引き上げについて「なんとなく知っていた」方が約半数

2025年に配偶者控除と配偶者特別控除の年収上限が引き上げられます。この改正については「なんとなく知っていた」方が51.2%、「知っていた」方が33.7%、「知らなかった」方が15.1%でした。

配偶者の扶養に入っている方にお聞きします。2025年に配偶者控除と配偶者特別控除の年収上限が引き上げられることをご存知でしたか?

現在、配偶者特別控除においては配偶者の年収が150万円以下なら、配偶者控除においては配偶者の年収が103万円以下なら、満額の控除を受けられます。今後、これらの年収上限が改正される予定で、配偶者特別控除は年収160万円まで、配偶者控除は年収123万円まで引き上げられることが決まっています。

今回の改正による働き方への影響は「特になし」が45.0%

では、今回のこの改正は、配偶者の扶養に入っている方にどれくらい影響を与えるのでしょうか。

次に、この年収上限の引き上げは、あなたの働き方にどのような影響を与えると思いますか?と質問してみたところ「働き方に特に影響はない」の回答が45.0%と最も多く、続けて「新たな年収上限を超えないように働く時間を増やす」が33.7%、「フルタイムや正社員として働くことを検討する」が16.7%という結果になりました。

配偶者の扶養に入っている方にお聞きします。この年収上限の引き上げは、あなたの働き方にどのような影響を与えると思いますか?

今回の配偶者控除および配偶者特別控除にかかる改正は、約半数の方にとって働き方に大きな影響をもたらすものではないようですが、働く時間や雇用形態を変えて収入を増やすことを検討している方も一定数いることがうかがえます。

改正後は「年収123万円未満」を希望する方が最多

次に、配偶者控除や配偶者特別控除の年収上限の改正後はどの年収帯で働きたいですか?と質問してみました。その結果「年収123万円以下」と回答した方が41.1%と最も多く、「現在と変わらない」が20.9%、「年収123万円~150万円」が15.5%、「年収202万円以上」が9.3%と続きました。

配偶者の扶養に入っている方にお聞きします。配偶者控除や配偶者特別控除の年収上限の改正後は、どの年収帯で働きたいですか?

配偶者の扶養に入っている方は、改正後も引き続き、扶養範囲内で働くことを希望する方が多いことがわかります。

特定扶養控除に関する調査結果

次に、アンケート調査の回答者を親の扶養に入っている方のみに絞り、特定扶養控除について聞いてみました。なお現在、親が特定扶養控除を受けている方は全体の1割弱なようです。

親の扶養に入っている方にお聞きします。現在、あなたの親は特定扶養控除を受けていますか?

特定扶養控除の年収上限の引き上げは「なんとなく知っていた」方が39.7%

現在、特定扶養控除を受けられるのは年収103万円以下の大学生などの特定の子を扶養する世帯ですが、今後、この年収上限が150万円に引き上げられる予定です。

この年収上限の引き上げについて認知度を調査してみたところ、最も多かった回答は「なんとなく知っていた」で39.7%でした。続けて「知らなかった」が38.1%、「知っていた」が22.2%となりました。

親の扶養に入っている方にお聞きします。2025年に特定扶養控除の年収上限が引き上げられることをご存知でしたか?

配偶者控除や配偶者特別控除の年収上限の引き上げについては、半数以上の方が「なんとなく知っていた」と回答していたことから、特定扶養控除に関する改正の方が認知度が低いことがうかがえます。

今回の改正による働き方への影響は「特になし」が60.3%

次に、特定扶養控除の改正が働き方にどのような影響を与えると思うか質問してみました。その結果「働き方に特に影響はない」が60.3%と最も多く、親の扶養に入っている方のうち約6割は、今回の改正が自身の働き方に大きな影響をもたらすとは考えていないことがわかります。

親の扶養に入っている方にお聞きします。この年収上限の引き上げは、あなたの働き方にどのような影響を与えると思いますか?

その一方で、「新たな年収上限を超えないように働く時間を増やす」と回答した方も33.3%います。

改正後は「年収103万円未満」を希望する方が最多

改正後の希望年収帯については「現在と変わらない」と回答した方が最多となりました。現在と異なる年収を希望する場合は「年収103万円未満」が20.6%と最も多かったものの、「年収103万円〜123万円」および「年収124万円〜150万円」がいずれも17.5%と、その回答数にあまり差はありません。

親の扶養に入っている方にお聞きします。特定扶養控除の年収上限の改正後は、どの年収帯で働きたいですか?

これらの結果から、特定扶養控除の年収上限が引き上げられたとしても、親の扶養に入る方の働き方はあまり変わらないかもしれません。

特定親族特別控除の新設を「知らない」方は86.7%

最後に、2025年から新設される「特定親族特別控除」の認知度を調査してみました。その結果、特定親族特別控除が新設されることを知っていた方は13.3%、知らなかった方は86.7%と、認知度は低いことが明らかとなりました。

2025年から「特定親族特別控除」が新設されることをご存知でしたか?

特定親族特別控除とは、2025年度の税制改正において新たに導入される制度です。子の年収が123万円を超えた場合に従来の特定扶養控除に加えて受けられ、子の年収が150万円以下であれば親は63万円の控除を受けることができます。なお、子の年収が150万円を超えたら控除額は段階的に減少し、188万円を超えると控除額はゼロになるしくみです。

大学生年代の子をもつ従業員やアルバイトを雇用している企業は、必要に応じて従業員に改正内容を周知しましょう。

まとめ

今回のアンケート調査を通して、扶養制度が多くの人々の生活に深く関わり、その恩恵を感じている方がいる一方で、今後の改正に対する認知度の低さなど、さまざまな課題も抱えていることが明らかになりました。

現在、扶養に入っている方が扶養に入ることを決めた理由としては「家事や育児、介護を優先したいから」が最多で、経済的な負担の軽減や生活に安心感を得ている方がどちらかというと多いようです。その一方で、今後扶養から外れることを「なんとなく検討している」方も約4割います。

しかし、具体的に検討している方は少ないようで、配偶者控除および配偶者特別控除や、特定扶養控除の年収上限の引き上げがおこなわれたとしても、半数近くの方は「働き方に影響はない」と考えていることが明らかとなりました。政府は年収の壁の引き上げにより働き控えの解消を狙っていますが、まずは対象者への改正内容の周知が必要そうです。

アンケート調査概要

調査名 扶養に関するアンケート
調査対象 10代以上の男女300名
調査期間 2025年1月22日~2025年2月5日
調査方法 インターネット調査
監修者労務SEARCH 編集部

労務・人事・総務管理者の課題を解決するメディア「労務SEARCH(サーチ)」の編集部です。労働保険(労災保険/雇用保険)、社会保険、人事労務管理、マイナンバーなど皆様へ価値ある情報を発信続けてまいります。
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