離婚というと個人の問題のような気もしますが、会社の従業員が離婚するとなると、社会保険や雇用保険など会社としてやらなければいけない手続きが非常に多くあります。
また、場合によっては事務的なことだけでなく名札や名刺など、細かな変更事項も発生してきます。従業員が離婚したときに慌てないためにも、どのような手続きが必要か確認しておきましょう。
目次
従業員の離婚があった場合、さまざまな手続きが必要になります。離婚によって名字が変わる場合はまだわかりやすいかと思いますが、それ以外にも複数のことを確認しなければならず、その都度手続きも必要になってきます。
まずは離婚の事実確認に始まり、下記などの確認が必要です。
特に社会保険や雇用保険といった保険関連は、住所や氏名の変更は即座に届け出なければなりませんし、扶養家族の人数が変わった場合などは、所得税の計算が大きく変わってきます。次項から詳しく説明していきましょう。
まずは、社会保険の手続きから説明しましょう。
社会保険では「氏名変更と住所変更」および「被扶養者」関連の手続きが必要になります。氏名変更の手続きは「健康保険・厚生年金保険 被保険者氏名変更(訂正)届」に健康保険証を添付して行います。以下の必要な内容を記入して、健康保険証とともに年金事務所へと提出してください。
また書類だけでなく、年金手帳の氏名変更をおこなう必要もあります。被保険者から年金手帳を受け取り、変更後の氏名を記載してください。
離婚に伴って住所変更が発生した場合は「健康保険・厚生年金保険 被保険者住所変更届」に年金手帳を添付して提出する必要があります。こちらも事業所整理記号~被保険者の氏名、そして変更前・変更後の住所などの必要な内容を記入し、年金事務所へと提出してください。
さらに、扶養家族にも変更があった場合は「健康保険被扶養者(異動)届」、および被扶養者の健康保険証の提出が必要です(被保険者の健康保険証は必要ありません)。これも同じく事業所整理番号から始まり、異動の別(追加または削除)、変更内容などを記入して年金事務所へと提出します。
いずれの書類も、変更の事実を確認したら速やかに提出してください。
氏名変更がある場合は、雇用保険でも手続きが必要です。雇用保険の場合は「雇用保険被保険者氏名変更届」を使用します。
被保険者番号などのほか、変更後の氏名・変更前の氏名を記入するのですが、変更前の氏名は「被保険者氏名」と書かれている欄に記入することになっていますので、注意してください。
そして、事業所情報および事業所印を記入したら、事業所の所在地を管轄する公共職業安定所へと提出しましょう。氏名変更の事実があってから速やかに提出してください。またこの際、氏名変更の事実を確認できる書類(住民票や免許証のコピー)も必要になりますので、あわせて用意しておきます。
また、この書類は雇用保険被保険者資格喪失届と同一の書類になっています。そのため氏名変更届として提出する際は、上部にある「資格喪失届」の文字を抹消しておきましょう。
離婚によって扶養家族がいなくなった場合、扶養控除がなくなりますので、所得税の計算も変わってきます。そのため「扶養控除等(異動)申告書」の提出が必要です。この書類は事業主ではなく、労働者の方に記入してもらうことになります。
扶養家族がいる労働者の方には、毎年提出してもらっている書類です。離婚した場合には、扶養家族氏名記入欄の右に「異動月日および事由」という欄がありますので、そちらに離婚した日付や扶養控除異動の理由(離婚のため)などを記入してもらいます。
そしてこれを労働者から受け取り、事業主が保管しておきます※。労働者に記入・提出をしてもらう期限は、その異動があった日から数えて最初の給与支払日の前日までとなっていますので、なるべく早めに記入してもらうように呼びかけておきましょう。
提出を求められたときのみ、税務署および市区町村長へと提出することになっています。
従業員の離婚があると、さまざまな手続きを行わなければなりません。
従業員に記入してもらう書類もありますので、なるべく早い対応を心がけたいところです。とはいえ、離婚も人生の一大事ではあります。
離婚を経験した多くの人は、結婚よりも離婚の方が大変だったというほどです。労働者の方への負担は大きくなってしまうかもしれませんが、そのあたりをしっかりとフォローしつつ、迅速に諸手続を進めるように心がけましょう。
大学卒業後、地方銀行に勤務。融資及び営業の責任者として不動産融資から住宅ローンの審査、資産運用や年金相談まで幅広く相談業務の経験あり。在籍中に1級ファイナンシャル・プランニング技能士及び特定社会保険労務士を取得し、退職後にかじ社会保険労務士事務所として独立。
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