会社を退職する方についての住民税の取り扱いは、転職先に就業するまでの期間が開いているかどうか、あるいは退職日が新たな年度に切り替わる6月より前か後かによって「転職先で特別徴収を継続する」「一括徴収」「普通徴収」の3つの方法で住民税を徴収することとなります。
それぞれの仕組みについて説明していきます。
住民税とは、市町村民税や都道府県民税の総称です。一定以上の所得がある労働者は、住民税を住所地の区市町村へ納めることが義務付けられています。
前年の1月1日から12月31日までの1年間の期間における所得を基準として、それを基に計算された住民税を、翌年の6月から始まる1年間で納付します。
住民税の納付方法は「一般納税」と「特別納税」の2種類に分かれています。
一般納税と特別納税の違い
一般納税 | 労働者が居住する区市町村へ直接納付する方法 |
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特別納税 | 労働者の所得から住民税分をあらかじめ天引きし、 労働者に代わって区市町村へ納付する方法 |
特別納税の場合、前年度の所得から算出された住民税を12分割し、毎月の給与から天引きしていきます。
名前こそ一般・特別となっていますが、たいていの場合は特別納税がとられています。実をいうと、会社に雇用されている労働者は一般納税を選ぶことができず、すべてのケースで特別納税となります。
労働者が転職した場合、住民税の納付は誰が担当するのでしょう。給与の支払いがないため、特別徴収が継続できません。この場合の住民税の納付方法は、
の3つに分かれます。もし転職先がすでに見つかっていて、給与が発生しない期間がない場合は「転職先の事業所で特別徴収を継続」での対応になります。
その後は転職先の会社から従業員住所地の区市町村へと提出され、特別徴収が継続します。
しかし、転職先がまだ見つかっていない、あるいは次の事業所で働き始めるまでに期間が開く場合、
で処理が変わってきますので、その違いはきちんと確認し労働者へ周知しておくべきでしょう。
退職日 | 徴収方法 |
1月1日~4月30日までの場合 | 一括徴収 |
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6月1日から12月31日まで場合 | 退職者の意思で、翌年5月までの住民税の納付方法を 一括徴収か普通徴収か選択 |
5月1日から5月31日までの場合 | 最終給与から特別徴収として処理 |
一括徴収は、12分割された住民税のうち、未納分を一括で支払う方法です。
例えば退職日が1月1日から4月30日の場合、退職月から5月分までの残額があります。1月に退職したのであれば、2月~5月分までの住民税が、3月に退職したのであれば3月~5月分が残額となるのですが、それを一括で支払います。
また、退職日が5月1日から5月31日となる場合は、住民税の残額は5月分のみとなるため、通常通り最終給与から特別徴収として処理されます。
退職日 が6月1日から12月31日の場合は、住民税は新たな年度に替わっています。
もちろん翌年5月までの住民税の残額を一括で納付することも可能ですが、金額が大きくなるため、給与を受けていない時期に一括で支払うのは少し厳しくなります。その場合は、普通徴収によって分割で支払うことも可能です。
普通徴収は、転職後の特別徴収の継続や退職後の一括徴収を選択しなかった場合、自動的に特別徴収から切り替わります。納税時期が近づくと、住所地の自治体から普通徴収の通知が届くようになります。
ただし分割といっても12分割だった特別徴収とは違い、3カ月ごとの4分割となるため、いずれにしても1回あたりの納税額が大きくなります。そういった点も、退職者に事前説明しておくべきでしょう。
住民税は基本的に特別徴収であるため、労働者が滞りなく住民税を支払うためには、事業所の努力が必要不可欠になります。
転職の際にスムーズに特別徴収を継続できるよう、きちんと各手続きを確認しておきましょう。あるいは一括徴収・普通徴収になった場合でも、労働者が戸惑わないよう、事前に説明できるようになっておくべきでしょう。
退職後のことだからといって任せっきりにするのではなく、最後までしっかりとサポートしてあげてください。
日本大学卒業後、医療用医薬品メーカーにて営業(MR)を担当。その後人事・労務コンサルタント会社を経て、食品メーカーにて労務担当者として勤務。詳しいプロフィールはこちら