労務SEARCH > アンケート > 年末調整で最も負担なこととは?年末調整に関する従業員の本音を調査
年末調整に関するアンケート調査

年末調整で最も負担なこととは?年末調整に関する従業員の本音を調査

監修者:労務SEARCH 編集部
詳しいプロフィールはこちら

年末調整は、毎年12月頃におこなわれる給与所得者の所得税を精算する手続きです。しかし、その仕組みは複雑で、従業員にとっては負担に感じられることも少なくありません。

そこで労務SEARCH編集部では、年末調整に対する従業員の意識や手続きにおける課題を把握するため、20代以上の男女300名を対象にアンケート調査を実施しました。本記事では、その調査結果を分析し、年末調整に関する従業員の理解度と手続きの負担感、そして企業が提供すべきサポートや改善策について考察していきます。

年末調整に対する理解度を調査

まず、企業で働く人々がどれくらい年末調整について理解しているのか、年末調整の理解度について調査してみました。

年末調整の目的や手続きの流れは、半数以上が「ある程度理解している」

最初に、年末調整の目的や手続きについて、どのくらい理解していますかと質問してみたところ、「ある程度理解している」が54.3%と最も多く、次に「よくわかっていない」が28.7%、「よく理解している」が12.3%、「全くわかっていない」が4.7%という結果になりました。

年末調整の目的や手続きの流れについて、どのくらい理解していますか?

半数以上の人が「ある程度理解している」と回答しているものの、「よくわかっていない」と「全くわかっていない」と回答した人は合わせると3割を超えています。

「よくわかっていない」と回答した割合を年代別に見ると、若い年代ほどこの回答を選ぶ傾向が見られました。具体的には、20代の40.0%、30代の32.8%、40代の22.9%、50代の12.5%の回答者がこの回答を選んでおり、60代以上は0%でした。

年末調整とは?

会社が従業員の給与から天引きした所得税を、一年間の正確な金額に調整する手続きです。具体的には、毎年12月31日時点で、従業員の一年間の給与総額と適用される控除を計算し、実際に納めるべき所得税の金額を算出します。

年末調整の提出書類は71.7%が「なんとなく把握している」

次に、年末調整の提出書類に関する質問をしてみました。年末調整で提出が必要な書類を把握していますかと聞いてみたところ、「なんとなく把握している」人が71.7%と7割以上を占め、「全て把握している」人は20.3%にとどまり、「全く把握していない」人も8.0%存在しました。

年末調整で提出が必要な書類を把握していますか?

多くの人が年末調整の提出書類について「なんとなく」は理解しているものの、正確に把握している人は少ないことがうかがえます。なお、年末調整において従業員が会社に提出する書類は、主に以下の5つです。

年末調整における提出書類
  • 源泉徴収票
  • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
  • 給与所得者の保険料控除申告書
  • 給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書
  • 給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書

ただしこれらの書類も、年の途中で転職した従業員のみが提出するもの、被扶養者がいる従業員が提出するものなど、それぞれ対象者が決まっています。企業の人事・労務担当者は、年末調整の時期になったら従業員にわかりやすいように、各書類の対象者を説明してあげましょう。

提出書類の記入方法は56.7%が「ある程度理解している」

続けて、年末調整における提出書類の記入方法について、どのくらい理解していますかと質問してみたところ、56.7%が「ある程度理解している」、28.3%が「よくわかっていない」、11.0%が「よく理解している」、4.0%が「全くわかっていない」という結果になりました。

年末調整における提出書類の記入方法について、どのくらい理解していますか?

提出書類の記入方法についても、半数以上の人が「ある程度理解している」と回答しているものの、理解度には個人差があることがわかります。

2番目に回答が多かった「よくわかっていない」の回答者を年代別に見ると、20代の40.0%、30代の31.9%、40代の24.0%、50代の8.3%がこの回答を選んでおり、60代は0%なことから、若い年代ほど理解度が低いと言えるでしょう。

年末調整の手続きに関する調査

次に、年末調整の手続きに関する調査を実施してみました。手続きにかかる時間や、手続きに時間がかかる原因となっている点を探っていきます。

年末調整の手続きにかかる時間は「15分~30分」が最多

年末調整の手続きにかかる時間については、「15分~30分」と回答した人が41.0%と最も多く、次に「15分以内」が27.7%、「30分~1時間」が22.3%、「1時間以上」が9.0%となりました。

年末調整の手続きはどれくらい時間がかかりますか?

年末調整に慣れている人は短時間で終わらせることができる一方、不慣れな人は1時間以上かかる場合もあることがわかります。しかし、手続きにかかる時間は、提出書類の多さに比例することも考えられます。

従業員が最も負担に感じるのは「書類の記入方法の理解」

では、年末調整の手続きにおいて、従業員が負担に感じている部分は何でしょうか。

それを調査するため、次に、最も負担に感じる部分はどこですかと聞いてみたところ、第1位が「書類の記入方法の理解」で52.4%、第2位が「必要書類の準備」で29.0%、第3位が「提出期限を守ること」で9.3%、第4位が「システムやフォーマットの利用」で8.3%となりました。

年末調整の手続きにおいて、最も負担に感じる部分はどこですか?

この結果から、多くの人が書類の記入方法について理解することに最も負担を感じていることがわかります。特に、複雑な計算が必要な箇所や、専門用語が多い箇所については、従業員の大きなストレスとなっている可能性があるでしょう。

年末調整で困った経験や不明点の解決方法について調査

年末調整の手続きにかかる時間は人によって大きく異なるようですが、手続きにおいて疑問や不明点があったとき、従業員はどのように解決しているのでしょうか。次に、年末調整で困った経験や疑問の解決方法について調査してみました。

8割以上が必要書類の準備で困ったことは「ない」

最初に、年末調整の必要書類の準備について、困ったことはありますかと質問してみました。その結果「はい」が18.0%、「いいえ」が82.0%と、これまでに困ったことはない人が大多数を占めました。

年末調整の必要書類の準備について、困ったことはありますか?

なお、この質問に「はい」と回答した人に、その困った経験について具体的に聞いてみたところ、「保険料の証明書を紛失した」「住宅ローンの書類の記入方法がわからなかった」「前職の源泉徴収票の入手が遅れた」などの回答が集まりました。

不明点の解決方法は「人事部(担当部署)に問い合わせる」が最多

では、従業員は年末調整に関してわからないことがあった場合、どのように解決することが多いのでしょうか。

次に、年末調整に関する質問や不明点がある場合、どのように解決していますかと質問してみたところ、第1位は「人事部(担当部署)に問い合わせる」で32.3%、第2位は「上司や同僚に相談する」で31.0%、第3位は「社内マニュアルやガイドを参照する」で24.7%という結果になりました。

年末調整に関する質問や不明点がある場合、どのように解決していますか?

多くの従業員は、人事部や上司、同僚など、身近な人に相談することで、疑問を解決しているようです。しかし、相談相手がいない場合や、質問しにくい雰囲気の職場では、自己解決を強いられることになり、従業員の負担が増大する可能性もあります。

年末調整における企業のサポート体制に対する満足度調査

ここからは、年末調整における企業のサポート体制に対する満足度調査をしてみました。

会社からの情報提供やサポートは約半数が「比較的わかりやすい」と回答

まず、会社からの年末調整に関する情報提供やサポートは、わかりやすいと感じますかと聞いてみたところ、「比較的わかりやすい」が51.0%と最も多く、続けて「所々わかりづらい点がある」が31.3%、「わかりづらい」が9.7%、「とてもわかりやすい」が8.0%という結果になりました。

会社からの年末調整に関する情報提供やサポートは、わかりやすいと感じますか?

半数の人が「比較的わかりやすい」と感じているものの、約4割の人が「所々わかりづらい点がある」と感じていることから、企業の情報提供やサポートは、必ずしも全ての従業員に十分な情報が伝わっているとは言えない現状がうかがえます。

従業員が最もわかりやすいと感じる情報提供方法は「紙の資料の配付」

では、従業員はどのような情報提供方法を望んでいるのでしょうか。次に、年末調整に関する情報提供の方法として、どれが最もわかりやすいと感じますかと聞いてみました。その結果、第1位が「紙の資料の配付」で33.4%、第2位が「個別での質問対応」で25.3%、第3位が「マニュアル動画の視聴」で13.0%、第4位が「メールでの周知」で10.3%となりました。

年末調整に関する情報提供の方法として、どれが最もわかりやすいと感じますか?

このことから、多くの人が、紙の資料や個別での質問対応など、従来のコミュニケーション方法を重視していることがわかります。しかし、マニュアル動画や社内説明会を求める人も一定数おり、情報提供の方法は、従業員の属性や理解度に合わせて多様化する必要がありそうです。

スムーズな手続きのために必要な改善点は「書類の記入方法の詳細な説明」

次に、より年末調整の手続きを円滑に進めるためにはどうすればいいのかを調査するため、なにが改善されれば、よりスムーズに年末調整の手続きを進められると思いますかと質問してみました。

その結果、「書類の記入方法の詳細な説明」が39.3%と最も多く、次に「必要書類の案内方法」が15.0%、「現状のままで問題ない」が11.3%、「提出システムやツールの操作方法の共有」が10.3%、「年末調整に関するスケジュールの事前共有」が9.0%、「不明点を質問できる社内窓口の設置」が8.7%となりました。

なにが改善されれば、よりスムーズに年末調整の手続きを進められると思いますか?

やはり、多くの従業員が、書類の記入方法について詳細な説明を求めていることがわかります。また、必要書類の案内方法や提出システム・ツールの操作方法など、手続き全体の効率化を求める声も多く挙がりました。

年末調整システムの利用状況を調査

最後に、年末調整の手続きを簡単にしてくれる『年末調整システム』の利用状況について調査してみました。

6割以上が年末調整システムを「利用していない」

まず、現在あなたが勤めている会社では、年末調整システムを利用していますかと質問してみたところ、「はい」が36.0%、「いいえ」が64.0%という結果になりました。このことから、多くの企業では依然として紙ベースでの手続きが中心であることが判明しました。

現在あなたが勤める会社では、年末調整システムを利用していますか?

年末調整システム導入企業の約8割が利便性を実感

では、年末調整システムを利用している人は、どのようなメリットを感じているのでしょうか。

次に、前問で「はい」と回答した人に対して、年末調整システムを利用することで、手続きが簡単になったと感じますかと聞いてみたところ、「ある程度簡単になった」が50.9%、「とても簡単になった」が28.7%と、合わせて約8割の人がシステムの導入によって手続きが簡単になったと感じていることがわかりました。

前問で「はい」と回答した方にお聞きします。年末調整システムを利用することで、手続きが簡単になったと感じますか?

一方で、「あまり変わらない」が15.8%、「逆に不便になった」が3.7%という回答もあり、導入したシステムが必ずしも従業員のニーズに合致しているとは限らない場合もあることがうかがえます。

まとめ

今回のアンケート調査で、年末調整は従業員にとってそこまで大きな負担となっていないことが明らかになりました。特に年末調整システムを導入している企業においては、それぞれ従業員の約8割がその利便性を実感しており、従来の紙による手続きより負担が減っていることがうかがえます。

年末調整の目的や手続きの流れ、提出書類などに関する理解度についても、半数以上はなんとなく理解していると言えるでしょう。しかし回答を年代別に見ると、若い年代ほど理解度が低い傾向にあったため、従業員の年齢層が若い企業では、人事・労務担当者による説明やサポートが必要不可欠です。

なお、情報提供する際は紙の資料を配付し、特に書類の記入方法に関する説明を丁寧におこなうと従業員からの問い合わせも減少するかもしれません。企業の人事・労務担当者はこのアンケート調査結果を参考に、従業員の視点に立った改善に取り組みましょう。

アンケート調査概要

調査名 年末調整に関するアンケート
調査対象 20代以上の男女300名
調査期間 2024年12月9日~2024年12月20日
調査方法 インターネット調査
監修者労務SEARCH 編集部

労務・人事・総務管理者の課題を解決するメディア「労務SEARCH(サーチ)」の編集部です。労働保険(労災保険/雇用保険)、社会保険、人事労務管理、マイナンバーなど皆様へ価値ある情報を発信続けてまいります。
詳しいプロフィールはこちら

本コンテンツは労務SEARCHが独自に制作しており、公正・正確・有益な情報発信の提供に努めています。 詳しくはコンテンツ制作ポリシーをご覧ください。 もし誤った情報が掲載されている場合は報告フォームよりご連絡ください。

この記事をシェアする

労務SEARCH > アンケート > 年末調整で最も負担なこととは?年末調整に関する従業員の本音を調査