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整理解雇とは?解雇との違いや手続きを解説!

監修者:加藤 一徹 加藤社会保険労務士事務所
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会社経営を維持していくうえで、非常に残念ですが、やむを得ず整理解雇を必要とする場面が生じることが考えられます。この整理解雇とは、いわゆる解雇と何が違うのでしょうか。

解雇に係る事案は、個別労働紛争になりやすい問題ですので、会社側の一方的な言い分だけではなく、対象労働者に対して正しく丁寧な対応が必要とされます。ここでは従業員側にも極力理解を得られる整理解雇の手続きについて説明します。

一般の解雇について必要とされる要件とは

整理解雇について説明する前にまずは、一般的な解雇がどのようなものなのか説明したいと思います。解雇には「普通解雇」「整理解雇」「懲戒解雇」の3種類があり、ここで紹介する一般的な解雇とは「普通解雇」のことを指します。

普通解雇とは会社側からの申し出によって一方的に雇用契約を打ち切るというものです。労働契約の継続が難しくなり、普通解雇を行う条件には以下のようなものがあげられます。

  • 当該従業員の仕事の成績が悪く、また、指導を行っても改善が見られない場合
  • 体調を崩したことに伴う療養によって、長期にわたって職場に復帰することが見込めない場合
  • 他の従業員との協調性に欠け、業務に支障をきたし、指導を行っても改善が見られない場合
    など

上記のような要件に合致した従業員がいる場合は普通解雇を行うことができます。ただし、解雇はいつでも行うことができるわけではありません。

まず、解雇するにあたって、あらかじめ解雇事由を就業規則や労働契約書に示しておかなければなりません。また、解雇事由は客観的にみて合理性があるものでなければならないと法律で決められているため、性別や育児休業によるもの、企業の都合によるものなど、勝手な事由を立てることはできません。

さらに、解雇を行うときは解雇の30日前までにその旨を伝えておく必要があります。30日を切った段階で予告する場合は解雇予告手当を支払うことになります。

整理解雇とはどのようなもので、必要とされる要件とは

整理解雇とは、会社の業績悪化に伴い人員整理を行うことを目的とした解雇です。

先ほどの普通解雇の条件は従業員に原因があるものでしたが、整理解雇の場合は解雇せざるを得ない状況を作ってしまった企業側に原因があるものとされます。企業側に原因があるということもあって、整理解雇を行う際は以下の4点を満たしていなければなりません。

  • 整理解雇の必要性があるのかどうか
  • 整理解雇を回避するための努力を行ったかどうか
  • 整理解雇を行う場合、解雇対象となる従業員の人選が合理的であるかどうか
  • 労働組合や労働者に対して説明をしっかりと行い納得してもらっているかどうか

整理解雇の必要性に関しては、人員削減の原因が、不況や経営状況の悪化など、企業経営を行ううえでの十分な必要性がなければなりません。また、すぐに整理解雇を行うのではなく、部署の異動や希望退職者を募るなど整理解雇を避けるための努力をすることが必要となります。

さらに、実際に整理解雇を行うにしても解雇の対象となる従業員を決めるための基準がはっきりとしていて、それが客観的かつ合理的であり正しく運用されていなければなりません。また、解雇理由や必要性など解雇対象者が納得できるように説明責任を果たすことも必要です。

4要件を満たさない整理解雇を実施してしまった場合の事例

近年では4要件すべてを満たしていなくても整理解雇を行い、その結果解雇とされたケースもあります。

しかし、ほとんどの判例では整理解雇の実施にあたっては先ほど紹介した4つの要件を満たしていることが前提となります。このケースはAという企業が業績悪化に伴い、Bという従業員に対して能力不足を理由に整理解雇したものの、Bが解雇無効を主張し訴訟を起こしたというものです。

裁判ではAの業績悪化にともなう人員削減の必要性こそ認められたものの回避のための取り組みが十分でなかったこと、Bを解雇する選定基準が不明確で、本人や労働組合との話し合いの際にも整理解雇であることを明かしていなかったため説明も不十分とされ、解雇は無効であるとの判決がくだされました。

このケースのように整理解雇にあたっては4要件を満たすことが原則なります。従業員が不当に解雇されたと思うと裁判にもつれこむ可能性もゼロではありません。そうならないためにも、嘘偽りのない対応を行うことは重要となります。

また、整理解雇に応じてもらうため、特別な手当の支給や退職金の上乗せ、再就職活動の手助けを行うことなども円滑に整理解雇を進めるうえで重要になると考えられます。

まとめ

今回は、解雇の1つである整理解雇について紹介してきました。企業にとってはできれば整理解雇は避けたいものですが、万が一のときに備えて労務担当者は整理解雇に必要な4要件をしっかりと把握しておくようにしましょう。

また、従業員を解雇して終わりではなく、再就職支援や特別手当の支給など、解雇される従業員ができるだけ円満に会社を辞めることができるようにサポートすることも必要になります。

加藤社会保険労務士事務所 監修者加藤 一徹

日本大学卒業後、医療用医薬品メーカーにて営業(MR)を担当。その後人事・労務コンサルタント会社を経て、食品メーカーにて労務担当者として勤務。詳しいプロフィールはこちら

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