この記事でわかること・結論
- 内定通知書とは、応募者が無事に内定となった際に応募企業から送られてくる通知書のこと
- 内定通知書に法的効力はないが、成立した労働契約には法的効力が発生する
- 内定通知書を発行する際は無料テンプレートの活用が便利
この記事でわかること・結論
内定通知書とは、就職時や転職時に採用が決まった人に送られる通知書のことです。選考を進み、入社することが決まれば応募した企業から送られてきますが、法的な意味合いや採用通知書との違いもよく理解しておきたいところです。
入社する方や企業側がしっかりと理解しておくためにも、本記事では内定通知書について法的効力や役割、採用通知書との違いなどを解説していきます。
すぐに使える内定通知書の無料テンプレートも紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
内定通知書とは、就職活動時や転職活動時などで企業への応募者が無事に内定となった際に応募企業から送られてくる通知書のことを指します。
就職活動などでエントリーシートや面接など選考が進み、晴れて企業側が内定を出して入社を受け入れる際に、内定した旨を応募者へ知らせるために「内定通知書」を発行します。内定通知書は、紙面での書類を意味します。
最近では、メールや就職支援サイト経由のメッセージなどで内定を伝える企業などもあります。ですが、正式に内定した旨を形として残しておけるため内定通知書を発行する企業も多いです。
転職活動時は中途採用であることが多いですが、中途採用の場合は内定通知書を発行しない企業がほとんどです。中途採用者が新卒採用者に比べて入社の意思が強い傾向にあることや、すぐにプロジェクトなどに参画してほしいなどの理由から内定通知書を発行しないで、メッセージなどで採用を伝えたりします。
内定通知書は企業が必ず発行しなければならないのでしょうか。実は内定通知書の発行義務はなく、企業側が発行するかどうかの裁量権があります。そのため内定通知書の法的効力もありません。
ですが「内定」という行為は、正式には労働契約法第6条における「労働契約の成立」を意味するため、成立した労働契約には法的効力が発生します。
労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。
また、内定を取り消すことは「事実上解雇」にあたるとされます。そのため、企業側は簡単に内定を取り消すことができません。労働契約の成立後(内定通知書を送付後)に内定取り消しをする場合は、労働契約法第16条に基づき、客観的に合理的な理由のうえ社会通念上相当であると認められなければなりません。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
ちなみに入社希望者は、内定通知書を受け取ったあとに辞退することもできます。もし、内定辞退をしたい場合は、法律上の決まりはありませんが、実務上入社の約1カ月前までに申し出るべきでしょう。
内定通知書と似ている言葉に、
などがあります。それぞれの違いや意味についてよく理解しておきましょう。
内定通知書とは別に「採用通知書」を発行する企業もあります。採用通知書とは、内定ではなく正式に採用する旨を伝える通知書を指します。そのため通知内容に違いがあります。
なかには内定と採用を同時にお知らせする「採用内定通知書」を発行する企業もありますが、別々で分けている場合はその内容自体に違いあることを覚えておきましょう。
次に内定承諾書ですが、こちらは応募者が企業への内定を承諾する際に利用する書類のことです。そのため、内定通知書のなかに同封されていることが多いです。
基本的に内定者は、入社までに企業との労働契約に承諾することを意味する内定承諾書を企業へ提出します。入社宣誓書や入社承諾書と呼ばれることもあります。
労働条件通知書とは、企業が応募者と労働契約を交わす際に交付しなければならない書類のことであり、労働基準法第15条で規定されている法定書類です。
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
内容は労働条件や、労働時間・賃金についてなどが記載されています。内定通知書や採用通知書などとは違い、労働条件通知書は企業に作成義務があることが大きな違いです。
雇用契約書は、使用者(企業)と労働者が労働関係を結ぶことを承諾するための書類であり、双方の署名などが必要です。記載内容は労働条件通知書とほぼ同じです。雇用に関する条件や期間などが明記されています。
内定通知書を受け取り、入社に関しての手続きが進んでいくうえで、雇用契約書への締結承諾などが流れとしてあります。
内定通知書は、採用したことを入社希望者へ伝える通知書のことを指します。しかし、企業への発行義務はないため、わざわざ書類作成をするよりメールなどで済ませしてしまう方が楽に感じます。
実は、それでも内定通知書を発行する理由があります。ここでは内定通知書を発行する意味を解説します。
採用は企業との労働契約が開始するという意味があります。内定通知書での交付以外にも、採用を伝える手段はありますがデメリットとして形として残らないということがあります。
そうなれば、口約束になってしまうためお互いの関係が曖昧になってしまいます。内定者が他の企業へ流れてしまったり、証明できずにトラブルになってしまったりなどが想定されるため内定通知書を発行しておくのです。
内定通知書を発行していることで「手続きに関して、ちゃんとしている会社である」という印象付けができます。最終選考が終わりメールだけというよりは、書類が届く方が歓迎されている気持ちにもなるでしょう。
たとえば、内定者が複数企業から内定をもらっているとするならば、より手続きに積極的であるような企業が好印象に見えます。内定通知書を発行しないことで、内定者を不安にさせてしまう可能性もあります。
また、新卒採用者は最終選考から入社までに期間が空くため、そのワンクッションとして入社前のタイミングで内定通知書を発行するという意味もあります。
就職活動者は、さまざまな企業へ応募していますので内定を出したからといって入社してくれるとは限りません。
そのため、内定通知書を発行しておくことで精神的な安心感を与えて、内定辞退を防ぐという目的もあります。採用者に積極的に入社してもらうためにも内定通知書を発行するという企業が多いです。
内定通知書の一般的な記載項目は以下です。
内定通知書には、内定承諾書や労働条件通知書、誓約書などを同封します。そのなかには応募者本人が署名などして提出する書類もあるため、きちんとその旨を内定通知書にも記載しておきましょう。
特に新卒者であれば初めて会社に属するための第一歩となります。右も左も分からないまま本人に任せきりであれば適正な入社手続きができない可能性もあります。提出書類や入社までにすることは分かりやすく明記してあげると良いでしょう。
また、内定取り消しの事由については先述した理由などの場合に認められます。特に内定者本人に関連することではなく、企業側の業績悪化などで止むを得ない場合なども万が一に備えて記載しておくと安心です。
社内で内定通知書の決まったフォーマットがない場合は、無料テンプレートの活用がおすすめです。弊サイトでも内定通知書の無料テンプレートを用意しているので、下記からダウンロードの上、ご自由にご活用ください。
内定通知書を作成し、応募者への送るときには注意しなければならないポイントがあります。
内定通知書は、いつ頃に送らなければならないという決まりがありません。そのため、採用が企業側で決定次第なるべく早めに送ると応募者も決めやすいでしょう。
ですが、政府による就職・採用活動についての要請では正式な内定通知をするには「卒業・修了年度の10月1日以降」と定められています。
内定通知書の送付方法は決まりがないため、企業が自由に選べます。しかし、郵送物であれば応募者本人が気づかないケースなどもあるでしょう。そのため、配達の記録が残せる書留で送付するのが理想的です。
もっと丁寧に内定通知のフローを辿るのであれば、まずはメールでお知らせをしておきましょう。メール内で、別途書留で内定通知書および承諾書など届ける旨をお伝えできればより良いです。
内定通知書は、企業が応募者に対して内定である旨を伝える通知書のことを指します。法的書類ではないため、発行しなくても良いのですが形として残る方がトラブルにならないため発行する企業も多いです。
内定者にはほかにも、採用通知書や労働条件通知書など似ているような書類が送られてきます。それぞれの意味や、署名する書類などを区分して覚えておきましょう。
また、企業担当者は内定通知書の記載項目やタイミングなどおさえて適切に内定者へのサポートをしてあげると、企業としても良い印象を与えることができます。本記事の内容を参考に良い採用活動を進めていってください。
1984年生まれ。社会保険労務士。
都内医療機関において、約13年間人事労務部門において労働問題の相談(病院側・労働者側双方)や社会保険に関する相談を担ってきた。対応した医療従事者の数は1,000名以上。独立後は年金・医療保険に関する問題や労働法・働き方改革に関する実務相談を多く取り扱い、書籍や雑誌への寄稿を通して、多方面で講演・執筆活動中。
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