中途採用をおこなったら、入社にあわせて手続き準備を進める必要があります。中途採用の場合、必要な書類は新卒採用とは異なります。人事・労務担当者は違いを理解し、入社に向けたスムーズなサポートを心がけましょう。
この記事では中途採用の入社手続きにおいて、必要な書類や各種保険の加入、よくあるトラブルについても解説します。
目次
採用選考が終わり内定者から入社の意向を確認したら、担当者は手続き準備に入ります。まずは入社前にやっておくことを解説します。
企業として採用(内定)が決まったら、採用(内定)通知書を送付します。これは「雇用することを承諾する」という意思表示の証拠になります。特に決まった形式はありませんし、書面で発行する義務はありません。
近年はネット上で採用活動をおこなう関係上、メールで採用連絡をおこなう企業も増えています。
内定者の入社意思を確認するためには、「入社承諾書・誓約書」を送付し、内定者には署名捺印をしてもらいます。発行が義務づけられているわけではありませんので、企業によっては送付しないところもあります。送付する場合は採用(内定)通知書と一緒に送付することが多く、就業規則や入社後の待遇、入社日について記載されています。
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入社にあたり、内定者に用意してもらう書類や必要な手続きをまとめたものが「入社手続きに関する案内通知」です。おもに後述する必要書類を内定者に準備してもらう意味があります。
「労働条件通知書」と「雇用契約書」は、どちらも締結が義務づけられた書類です。入社後に条件の認識違いを起こさないためにも、各種労働条件が記載されています。具体的には、雇用形態や職種、労働契約期間、職務内容や給与額などが書かれています。
企業によっては入社当日に説明があるところもあります。どちらにせよ、しっかり認識の齟齬がないかを確認し、相互で保管しておきます。
入社手続きの案内を事前に送付する方法には、郵送とメールなどの電子でのやり取りに分かれます。近年ではメールなどの電子送付が増えていますが、気軽におくれる反面、誤送信のリスクも高まります。社内チェックをしっかりおこない、適切なタイミングで正しく内定者に書類が送付されるよう対応します。
郵送する場合、必要書類がもれなく揃っているか、また送付先の住所や宛名に間違いがないかを確認してから送付します。これと合わせて、送付状の封入も同時におこないます。メールでのやり取りと比較し、なにかあった場合再送付や確認に時間を要しますので、書類の封入漏れなど特に気をつけましょう。
メールで書類を送付する場合、最も気をつけるべきは誤送信です。宛先や宛名、添付ファイルに間違いはないか確認してから送信しましょう。また、個人情報が記載されたファイルにはパスワードをかけるなど、情報漏えいに意識を向けて進めます。
入社時に必要になる書類は、雇用形態によって異なります。ここでは中途採用において必要になる書類を紹介していきます。
中途採用者が入社後は、厚生年金に加入します。加入には「基礎年金番号」を確認する必要があり、年金手帳が必要です。年金手帳は企業が退職まで預かる場合と、番号のみを企業が控え、年金手帳の原本は本人に返却する場合があります。
本人が年金手帳を紛失していた場合は、年金事務所で再交付が可能です。「年金手帳再交付申請書」に入社前の勤務先や所在地など、必要事項を記載して提出します。
社会保険や雇用保険の加入、年末調整にはマイナンバーが必要です。マイナンバーカードもしくはマイナンバー通知書など、番号のわかる書類を提出してもらいます。また、マイナンバーを収集する際には、使用目的を本人に伝える必要があります。取り扱いには十分に注意し進めましょう。
雇用保険被保険者証は、雇用保険に加入する際に必要です。転職者の場合、退職した企業から離職票と一緒に郵送されていることが多いです。
前職から7年以上ブランクのある中途採用者の場合、記載された被保険者番号はデータが有効でないこともあります。その場合、再就職先の企業が新たに雇用保険被保険者証の発行手続きをおこないます。
その年の年末調整を新しい会社でおこなう場合は、前職の源泉徴収票が必要になります。前職の源泉徴収票は、一般的に退職時に受け取れることが多いです。もし内定者が紛失してしまった場合や前職企業が渡していない場合、再度本人から前職企業に取り寄せをお願いしてください。
また、年をまたぐ入社の場合(退職が前年の11月、入社が本年の2月など)年末調整を新しい会社ではおこないませんので、前職の源泉徴収票の提出は不要です。
正式名称を「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」と言います。配偶者や扶養家族の有無を確認し、毎月の給与から源泉徴収する所得税を算出するために使用します。また、扶養家族がいない場合も提出が必要になります。
配偶者や子供がいる社員は、「健康保険被扶養者異動届」の提出が必要です。この書類は、従業員の被扶養者に変更や増減があった場合、企業が年金事務所や健康保険組合に提出が必要になるものです。
給与振込を希望する銀行や支店、口座番号などを記載する書類です。企業によっては通帳コピーの提出を義務づけるところもあります。
健康診断は、労働安全衛生法により企業によって義務づけられています。健康診断は入社前3カ月〜入社後3カ月以内に実施する必要があります。「雇い入れ時の健康診断」の検査項目は決まっています。必要な検査を受けてもらい、健康診断書を提出してもらいます。
誓約書とは、就業規則や機密保持といった会社のルールを遵守することを本人が宣誓する書類です。身元保証書とは、従業員の故意または重大な過失により損害が生じた場合、身元保証人が連帯して賠償責任を負うことを約束してもらうための書類です。
企業や業種によっては、これ以外に必要となる書類があるかもしれません。たとえば専門性の高い業種であれば、付随する免許や資格の証明書類の提出が必要です。必要なものが別途ある場合、漏れなく伝えて速やかに準備してもらいましょう。
入社時に人事・労務担当者がおこなう手続きについて説明します。先ほど紹介した必要書類を使い、手続きを進めていきます。
「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」の作成をおこないます。
「労働者名簿」とは、従業員情報が記載された帳簿です。氏名や住所、生年月日などが事務所ごとに記載されています。
「賃金台帳」は、給与の支払い状況が記載されたものです。賃金支払のたびに作成する必要があり、賃金計算期間や労働日数、労働時間数や基本給、各種手当について記載します。
「出勤簿」は、タイムカードを元に作成されている企業も多いです。従業員の労働時間の記録に関する書類を保存するものです。
これら書類は社会保険手続きをおこなう際に添付が必要です。また労基署調査においても提出が必要になります。速やかに作成し、適切な保管を心がけましょう。
社会保険の加入手続き期限は、雇用開始から5日以内です。「健康保険・厚生年金被保険者資格取得届」を用意し、年金事務所に提出します。
提出方法は手渡しや郵送、電子申請が可能です。この際に扶養家族がいる場合「健康保険被扶養者(異動)届」や「国民年金第3号被保険者関係届書」の提出も必要になります。
手続き完了後、企業には健康保険証が10日~2週間ほどで送付されます。届きましたら本人に健康保険証を渡します。
雇用保険の加入手続きは、事業所管轄のハローワークにておこないます。「雇用保険被保険者資格取得届」をハローワークに提出します。この際、はじめての雇用保険被保険者資格取得届であったり、期限が過ぎての手続きだった場合、
の書類添付が必要です。
住民税の納付方法には、普通徴収と特別徴収があります。普通徴収は納税者自身でおこなう方法で、特別徴収は会社が代行しておこなうものです。給与所得者は一般的には特別徴収が適用されます。前の会社から継続して特別徴収を希望する場合、「給与所得者異動届出書」に必要事項を記載し、市区町村へ提出します。
内定手続きをつつがなく進めていても、ちょっとしたトラブルは起きるものです。ここでは企業が直面するよくあるトラブルについて3つ紹介します。
提出書類が期日までに揃わないと適切な手続きが行えません。期限を過ぎたからといって手続き出来ないわけではありませんが、別途提出書類が発生する場合があります。例えば、雇用保険の場合、3ヶ月以上遅延すると賃金台帳と出勤簿の写しが必要です。提出書類に漏れなどないか確認し、速やかに手続きをおこないましょう。
急な入社辞退があった場合、提出してもらった書類で返却が必要なものは返却し、内定者から返却が必要な書類は速やかに返送手続きを取りましょう。また必要であれば、再度人員募集の準備をおこないましょう。
内定後にいわゆる経歴詐称が発覚した場合、その程度によって処分など対応方法を検討する必要があります。経歴詐称にも軽度から重大なものまであり、「懲戒解雇」が可能な基準は、重要な経歴を詐称した場合のみとなります。通常は学歴、犯罪歴、職歴などがこれに該当します。
中途採用の入社手続きについて、事前の準備から必要書類、具体的な手続きまで紹介しました。入社日から気持ちよく業務に取り組んでもらうためにも、抜け漏れなく手続きをおこなっていきましょう。
従業員がストレスなく業務に取り組むためには、人事・労務担当者のサポートが不可欠です。今回は中途採用での入社に関する話でしたが、多くのシーンで必要になります。
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