従業員が年末調整で住宅ローン控除を申請するためにはルールが設けられており、それを知っているのと知らないとでは、年末調整業務の効率性に差が出る可能性があります。
たとえば住宅ローン控除を対象外の人に対して年末調整で計算しても、余計な手間がかかるだけです。
そこでこの記事では、年末調整で住宅ローン控除を計算するときのルール、従業員から回収すべき必要書類、記入方法、紛失した場合の対処方法について説明します。
従業員の住宅ローン控除を年末調整で計算するためには、次の条件を満たす必要があります。
たとえば住宅を購入した年など初回の住宅ローン控除は、確定申告をすることが必須となります。確定申告をすることにより、2年目以降に年末調整で住宅ローン控除の計算をするのに必要な書類が税務署から送付されます。
そもそも住宅ローン控除は、ローンで住宅を購入さえすれば無条件で受けられるわけではなく、合計所得金額という仕事での儲けが年3,000万円以下の人に限られます。
従業員の場合、給与所得者であるため合計所得金額の計算方法は次のとおりです。
給与所得者の合計所得金額3,000万円の場合、年収を逆算すると「合計所得金額3,000万円+給与所得控除額220万円=3,220万円」となります。
住宅ローン控除を受けるためには、12月31日時点で対象となる住宅に自ら住んでいることが条件となっています。たとえば配偶者と別居して賃貸アパートに住んでいる場合は、住宅ローン控除を受けることができません。
年末調整で住宅ローン控除申請に必要な書類は次の2種類であり、従業員から提出してもらう必要があります。
住宅借入金等特別控除申告書と住宅借入金等特別控除証明書を兼ねた1枚の書類が、税務署から送付されます。必要事項を従業員に記入してもらった上で回収します。
▼「住宅借入金等特別控除申告書」兼「住宅借入金等特別控除証明書」の記載例
「住宅借入金等特別控除申告書」兼「住宅借入金等特別控除証明書」の記載例をダウンロードする>>
住宅ローン控除はローン残高を参照して、税額控除額を計算します。そのローン残高を証明する書類が住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書です。金融機関から従業員の自宅に送付されます。
▼住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書をダウンロードする>>
住宅ローン控除の計算プロセスを示すために、従業員は住宅借入金等特別控除申告書を作成します。ここでは、その記入方法について解説します。
会社名と会社の住所を記入します。
自分の氏名、世帯主との続柄(本人、配偶者など)、住所を記入します。
年末時点での住宅ローン残高を記入します。
住宅借入金等特別控除申請書の下段にある住宅借入金等特別控除証明書を参照して、家屋又は土地等の取得対価の額から転記し、合計額を記入します。
住宅借入金等特別控除証明書を参照して居住割合を転記しますが、従業員の場合は100%のケースが多いでしょう。
上記(3)と(4)のうち、少ない金額を記入します。
上記(6)に(5)の居住割合を掛けた金額を記入します。
上記(7)の金額を転記します。
住宅ローン控除による税額控除額の金額を指します。上記(8)に1%を掛けた金額(100円未満切捨て)を記入します。
年末調整で住宅ローン控除関係の書類を紛失した場合、以下2つの方法で対処しましょう。
「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」兼「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」を紛失した場合、本人が税務署に「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除関係書類の交付申請書」を提出し、再発行の申請を行います。
申請した年以降の書類が自宅に送付されます。
住宅ローン残高証明書(住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書)を紛失した場合、速やかに金融機関に再発行の依頼をします。手続きの方法は金融機関によって異なるため、事前確認は必須です。
年末調整で住宅ローン控除の計算ができる従業員は、初回に確定申告をした人などに限られています。また、従業員から回収する書類は2種類であり、そのうち住宅借入金等特別控除申告書は本人に記入してもらったほうが経理、総務部門の手間が省けます。
しかし、住宅ローン控除の必要書類を従業員が紛失してしまった場合などにより、年末調整業務に支障をきたすケースはあり得ます。そのため必要書類については、再発行も含めて従業員に対し事前周知することが大切です。
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