たとえ会社員であっても、国民年金保険料を支払っているケースは多くあります。では、国民年金保険料を支払っている場合の控除はどうするのでしょうか。
必ず確定申告をしないといけないのかというと、そうではありません。実は、国民年金保険料は年末調整で控除を受けることが可能です。
この記事では従業員が国民年金保険料を支払っている場合に、年末調整で控除する方法について解説します。
目次
年金保険とは、毎月一定の掛金を支払うことで老後の生活のためや障害などが起きた場合に給付を受け、生活の保障を得るという性格のものです。この年金保険は、大きく分けて「厚生年金保険」と「国民年金保険」の2種類があります。
会社員の場合は原則、厚生年金保険に加入し、厚生年金保険料を支払います。支払い方法は、毎月給料から天引きです。
日本の年金制度は2階建てのため、厚生年金保険料を支払うことで厚生年金だけでなく、国民年金にも加入していることになります。
一方、個人事業主や就職する前の学生や無職の場合は、国民年金保険に加入し国民年金保険料を支払います。
そのため、会社員で厚生年金保険料以外に国民年金保険料も支払っているということは通常ありません。
会社員は、毎月の給料から給料の金額や扶養家族の数に応じた所得税を源泉徴収(天引き)されています。
しかし、実際には扶養家族の数に増減があったり、生命保険や地震保険などの保険料を支払ったりしているため、1年間の給料に対する正しい所得税の金額と源泉徴収した所得税の金額は異なることが多いです。
そこで、所得税の過不足額を調整するために年末調整をおこないます。所得税の金額の計算は次の計算式で求めます。
(1年間の給料の金額-給与所得控除額-所得控除)×所得税率
給与所得控除額は、1年間の給料の金額によって異なります。
配偶者控除や扶養控除、社会保険料控除、生命保険料控除などの各種控除です。国民年金保険料は所得控除のなかの社会保険料控除に該当するため、年末調整の対象になり、年末調整で控除することができます。
実は、会社員でも国民年金保険料を支払っているケースがあります。それは次のようなケースです。
学生や無職の人が年の途中で会社に就職した場合、学生や無職の間は国民年金保険料を、会社に就職してからは厚生年金保険料を支払っています。この場合は、国民年金保険料も厚生年金保険料も年末調整で控除できます。
個人事業主が事業を辞め、年の途中で会社に就職した場合は、個人事業主の間は国民年金保険料を、会社に就職してからは厚生年金保険料を支払っています。
この場合は、国民年金保険料も厚生年金保険料も年末調整で控除できます。
国民年金保険料や厚生年金保険料は未払いの場合は控除できず、支払った年に年末調整の控除の対象になります。
そのため、過去に滞納していたり免除をうけたりした国民年金保険料を会社員になってから支払った場合は、厚生年金保険料だけでなく国民年金保険料も年末調整で控除できます。
配偶者や扶養親族の国民年金を支払った場合は、支払った人の社会保険料控除になります。この場合も、厚生年金保険料だけでなく国民年金保険料も年末調整で控除できます。
では、国民年金保険料を年末調整で控除する方法について見ていきましょう。国民年金保険料を年末調整で控除するためには、次の3つのステップでおこないます。
国民年金保険料も厚生年金保険料も、支払額の全額が社会保険料控除となります。そのため、年末調整の計算では単純に支払金額(見込額)を合計すればよいだけです。
年末調整の際に従業員から提出を受ける給与所得者の保険料控除申告書では、社会保険料控除の欄に「社会保険の種類:国民年金保険料」と支払金額を記入します。
国民年金保険料を年末調整で控除するためには「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」の添付が必要です。
社会保険料(国民年金保険料)控除証明書は11月頃に日本年金機構から送付され、紛失した場合は再発行が可能です。従業員の方に日本年金機構に再発行を依頼してもらいましょう。
再発行には時間がかかることがあります。速やかに再発行の依頼をしたほうが良いでしょう。
通常、会社員は厚生年金保険に加入していますが、年の途中に入社した場合などいくつかのケースでは、国民年金保険料も支払っている場合があります。
そのため、年末調整で国民年金保険料の控除を受けたいという従業員の方がいるかもしれませんが、間違いではありません。厚生年金保険料と同じく社会保険料控除となるので、慌てず処理を行いましょう。
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