年末調整では社会保険料控除の対象は給与天引きされる社会保険料と同額である傾向にあります。しかし、給与天引きされた社会保険料以外にも、社会保険料控除として所得控除ができるケースは存在します。
そこで、社会保険料控除のアウトライン、所得控除が受けられるさまざまなケース、必要書類とそれを紛失した場合の対処方法について解説します。
目次
社会保険料控除は1月1日から12月31日までの間に「給与、公的年金から天引きされた」または「実際に支払った」社会保険料の全額が所得控除できる制度です。
たとえば、給与から年間80万円の社会保険料が天引きされれば、年末調整で同額(80万円)の社会保険料控除が受けられます。
所得控除ができる社会保険料の範囲は、おもに次の項目の自己負担額です。
社会保険料控除は自分の社会保険料のほかに、生計を一にする配偶者と親族の分を負担した場合も所得控除をすることができます。
「生計を一にする配偶者と親族」とは、必ずしも同居をしている場合に限られず、同じ家計であれば別居している人の分も含まれます。たとえば、勤務、修学、療養などのために別居している配偶者、親族で次の人が当てはまります。
また親族が同居している場合、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除いて「生計を一にする」として取り扱われます。
たとえば、生計を一にする両親の介護保険料が公的年金から天引きされたとします。生活費の面倒を見ているため、実質的に自分が介護保険料を負担していると捉えることも可能です。
しかし年末調整の社会保険料控除では、年金から天引きされる段階で年金受給者が介護保険料を負担しているとして取り扱われます。したがって、社会保険料控除の対象にはなりません。
ただし、両親などの後期高齢者医療制度の保険料を口座振替により支払った場合、
に限り、負担した人が社会保険料控除を受けることができます。
そもそも社会保険料控除の対象には、実際に支払った社会保険料も含まれます。そのため、過去に一括払いした分は社会保険料控除の対象となります。
しかし、給与天引きされる社会保険料と違い、具体的な金額を総務部で把握することは不可能です。よって、本人にヒアリングをする必要があります。特に中途入社の場合、国民健康保険に加入していた可能性があるため、必ず本人に確認を取りましょう。
万が一、年末調整の計算で一括払いをした国民健康保険を反映できなかった場合は、翌年から5年以内に本人が確定申告をすれば、税金の一部を取り戻せます。
社会保険料控除を受けるためには、基本的に本人から回収する必要書類はありません。給与天引きされている社会保険料は総務部が給与計算を通じて把握しているからです。
しかし本人が国民年金保険料を支払っている場合は、次の書類が必要です。
書類 | 概要 |
---|---|
給与所得者の 保険料控除申告書 |
国民年金と国民健康保険の支払額を本人に記入してもらいましょう。 |
社会保険料 (国民年金保険料) 控除証明書 |
国民年金を支払っている場合、本人から回収しましょう。なお、国民健康保険の支払いについては控除証明書が存在しません。そのため、支払額が分からない場合は本人に市区町村へ照会するよう促す必要があります。 |
国民年金の支払額について社会保険料控除を受けるためには、社会保険料(国民年金保険料)控除証明書が必要です。もし紛失してしまった場合には、本人に再発行の手続きをしてもらう必要があります。
再発行の手続きは、マイナンバーまたは基礎年金番号を用意したうえで、次の3つの方法のいずれかにより手続きを行います。
年末調整の計算における、社会保険料控除の所得控除額と給与天引きされた社会保険料が同額であるとは限りません。
たとえば、生計を一にする配偶者と親族の国民年金保険料を負担した場合には、本人の申告により社会保険料控除が受けられます。ただ、公的年金から天引きされた介護保険料は、たとえ生活の面倒を見ていても社会保険料控除の対象となりません。
このように社会保険料控除は細かいルールが存在するため、きちんと理解しましょう。
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