現在、日本は少子高齢化が進んでおり、65歳以上の高齢者の比率が約4分の1近くに達しています。
今後、総人口が減少するなかで高齢化がさらに進展し、2060年には約5人に2人が65歳以上の高齢者になると予測されています。
日本の少子高齢化社会の原因を確認するとともに、国が行う高齢者雇用対策や企業が対策を立てるための支援策について解説していきます。
目次
日本では戦後の1950年~70年にかけて、平均寿命が大きく伸びました。
医療技術の進歩や生活環境の改善などもあって、50年当時は男性58.00歳・女性61.50歳だった平均寿命が、70年にはそれぞれ69.31歳・74.66歳と10歳以上も伸びたのです。
その後、平均寿命の上昇率は穏やかになりますが、2015年時点では男性80.79歳、女性87.05歳と、また10歳ほど伸びています。
生活環境が改善されることによって、出生率も大きく伸びました。多くの子供が成人し、仕事に就くようになります。しかし、これが少子化の第1歩になりました。
ここからさらに社会や経済が発展したことによって、今度は国民全体の生活水準が向上します。生活するために、より多くのお金をかける時代がやってきました。
ここからさらに、
などさまざまな要因が複雑に絡み合い、少子化が進行していきました。高齢化と少子化が同時に進行した日本は、現在では他国に例を見ないほどの少子高齢化国となっています。
少子高齢化が進んでいくと、65歳以上の「非生産年齢人口」の割合が増加します。老齢年金・健康保険・介護保険など、この年代を支えるためには多くに費用が必要となりました。
一方で15~64歳の生産年齢人口は減少しているため「支える側」と「支えられる側」のバランスが悪くなり、支える側の負担が増え続けていくばかりという問題が発生しています。
そのため近年は高齢者雇用を推進し、支える側の割合を増やしていくような政策がとられています。高齢者雇用政策の大きな特徴としては、3つの柱が挙げられます。
65歳までは従来どおり、それまで働いていた企業・企業グループがその労働者の雇用の確保に努めます。
そして、65歳以降は企業だけでなく地域とも協力し、就労の場を確保していきます。以前より高齢者の就労機会確保を担当していたシルバー人材センターの事業をさらに拡大、ハローワークや産業雇用安定センターなどでの再就職支援にも力を入れるようになりました。
さまざまな視点から、高齢者の雇用確保に向けたサポートを行います。
平成24年度に高齢者雇用安定法が改正され、平成25年度より施行されました。
平成25年に厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢が引き上げられたことにより、60歳で定年退職した場合、数年間の無収入期間が発生してしまう可能性が出てきたためです。
今回の改正で大きく変わるのは、主に「継続雇用制度」です。もともと平成16年度の改正で、
の3つの高齢者雇用確保措置のうち、いずれか1つを導入することはすでに義務付けられていました。
ただし、定年を引き上げるにしても廃止にするにしても、継続雇用制度を導入するにしても、65歳までの定年引上げが義務付けられたというわけではありません。
また、継続雇用制度の適用範囲も広がっています。従来であれば、親会社で決めた制度は、親会社で雇用される労働者のみに適用されていましたが、今回から子会社や関連会社の労働者も適用されることとなっています。
さらに高年齢者雇用確保措置の実施・運用にあたって、その指針の策定が義務付けられています。
違反すると是正勧告を受け、それでも改善が見られない場合は企業名が公表されるペナルティがありますので注意してください。
高年齢雇用拡大の推進に当たって、高齢・障害者・求職者支援機構では、高年齢雇用アドバイザーを各都道府県の支部に設置しています。
高年齢労働者の雇用にあたり、何か問題が起きそうな場合は、アドバイザーの利用を検討してみてください。
また、この相談や企業診断システムの利用は基本的には無料なので、積極的に利用すると良いでしょう。
さらに、企画立案サービスも利用することができます。実際にアドバイスをもらい、行うべき取り組みや改善すべき課題が見えてきたとき、そのための企画立案をアドバイザーの方で行ってくれるサービスです。
こちらは費用がかかりますが、その経費の半分を機構が負担してくれますので、気軽に利用することができます。
現在の日本は、少子高齢化社会の進行に歯止めが効いていない状況ですが、その分医療技術のさらなる進歩によって、65歳を過ぎてもまだまだ元気という高齢者の方も増えてきました。
また、年金制度が不透明であるという事情もあり、雇用の継続を望む方は今後いっそう増えていくでしょう。彼らが持つ経験や知識は、きっと事業所にとっても大きな財産となってくれるはずです。
今のうちに、高齢者雇用制度についてしっかりと確認し、環境や条件について整備しておきましょう。
社会保険労務士法人|岡佳伸事務所の代表、開業社会保険労務士として活躍。各種講演会の講師および各種WEB記事執筆。日本経済新聞、女性セブン等に取材記事掲載。2020年12月21日、2021年3月10日にあさイチ(NHK)にも出演。
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