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【2024年施行】改正障害者総合支援法の6つのポイント|事業者への影響とは

【2024年施行】改正障害者総合支援法の6つのポイント|事業者への影響とは

監修者:労務SEARCH 編集部
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この記事でわかること・結論

  • 障害者総合支援法とは、障害者の日常生活や社会生活を総合的に支援するための法律
  • 障害者総合支援法の改正が2024年4月から施行され、大きく分けて6つの内容が追加される
  • 改正内容は障害者雇用率や納付金制度など、事業者が覚えておきたい大切な内容が含まれている

改正障害者総合支援法が2024年4月から施行され、障害者支援サービスに関連する内容が追加されました。

障害者支援サービスをおこなっている事業者や、障害者を雇用している企業などは今回の改正障害者総合支援法についてよく理解しておきたいところです。

そこで本記事では、改正障害者総合支援法で覚えておきたい6つのポイントや事業者への影響などを解説します。

障害者総合支援法とは

障害者総合支援法とは

障害者総合支援法とは、日本における福祉法のひとつであり障害者の日常生活や社会生活を総合的に支援するための法律です。正式名称を「障害者の日常生活および社会生活を総合的に支援するための法律」と言います。

障害の有無に関係なく、すべての国民が相互に人格および個性を尊重するような地域社会の実現に寄与することを目的としています。

POINT
障害者の福祉を増進するための法律

障害者総合支援法では、基本的人権を享有する障害者が日常生活および社会生活を問題なく営めるように、総合的な障害福祉サービスなどについてルールが定められています。同法をもって、障害者の福祉増進を図ると同時に、個人が尊重される地域社会の実現を目指しています。

障害福祉サービスとは、介護支援などの「自立支援給付」や市区町村や都道府県がおこなう「地域社会支援事業」があります。障害者は、障害者総合支援法に基づき上記のサービスを利用できます。

障害者総合支援法は、制定された当時は障害者自立支援法という名称でしたが、改正して2013年4月1日より障害者総合支援法になりました。2024年4月にも、最新の改正障害者総合支援法が施行されました。本記事で後述している改正内容をチェックしておきましょう。

障害者総合支援法の支援対象者

障害者総合支援法において、支援対象者となるのは「障害者や障害児」です。障害者総合支援法第4条では障害者や障害児について、以下のように定められています。

障害者や障害児の定義
  • 18歳以上の身体障害者、知的障害者、精神障害者
  • 18歳に満たない、身体障害者・知的障害者・精神障害者
  • 18歳以上の治療方法が確立していない疾病や特殊疾病をもち、かつ政令で定める障害の程度が主務大臣の定める程度である者(2024年4月からは369疾病が対象)

発達障害者支援法第2条に規定される「発達障害者」を含み、知的障害者福祉法に規定される「知的障害者」を除く。

それぞれの障害者は「身体障害者福祉法知的障害者福祉法精神保健福祉法児童福祉法」に規定されている定義に準ずるものとしています。

疾病は定期的に見直されている

障害者総合支援法が支援対象者とする疾病(難病など)については、厚生労働省が数年おきに見直しをおこなっています。最新情報は、厚生労働省が公表している「リーフレット」で確認ができます。

改正目的と公布日・施行日

障害者や障害児の地域生活や就労支援をより強化して、障害者などの希望する生活を実現することを目的として、障害者総合支援法は2022年に改正されました。改正障害者総合支援法の具体的な公布日と施行日は、以下のとおりです。

公布日 2022年12月16日
施行日 2024年4月1日(一部施行日が異なる)

2022年は、障害者総合支援法の改正と同時に関連する「障害者雇用促進法」や「精神保健福祉法」なども改正されています。2024年4月に施行された障害者総合支援法では、次で説明する内容が追加されました。

障害者総合支援法改正の6つのポイント

障害者総合支援法改正の6つのポイント

改正障害者総合支援法では、大きく分けて以下6つの内容が追加されました。それぞれ詳細な内容を解説します。

改正の6つのポイント
  • 障害者の地域生活の支援体制の充実
  • 障害者の就労支援や雇用の推進
  • 精神障害者への医療支援体制の整備
  • 難病患者などへの医療充実と療養生活支援の強化
  • 指定難病や小児慢性特定疾病のデータベースに関する規定整備
  • その他(仕組みの創設や居住地特例対象施設の追加)

障害者の地域生活の支援体制の充実

障害者の地域生活を支援する体制の内容です。具体的には以下3つが追加されました。

地域生活の支援体制における改正内容
  • 共同生活援助(グループホーム)で、一人暮らし希望者への支援や退去後の相談について法律上明確化する
  • 基幹相談支援センターや地域生活支援拠点の整備を市町村の努力義務とする
  • 精神保健に関する相談支援の対象者を見直し、適切な支援の包括的な確保を明確化する

共同生活援助(グループホーム)において、障害者で一人暮らしを希望される方もいます。そのため今回の改正では、一人暮らし希望者に対しての支援についても障害者総合支援法で明確化することになりました。

また、基幹相談支援センターの設置状況や地域生活支援拠点の整備状況があまり良くないことから、今回の改正にて上記措置における市町村の努力義務などを定めました。

精神保健の相談支援については、精神障害者にくわえて精神保健に課題を抱える者も対象とします。付随して、精神保健福祉士の業務に「精神保健に関する相談支援」が追加されます。

障害者の就労支援や雇用の推進

障害者の就労支援や雇用については、以下3つが追加されました。

就労支援や雇用における改正内容
  • 就労アセスメントを活用した「就労選択支援」を新設する
  • 短時間労働者の障害者について就労拡大する、従来の特例給付金を廃止する
  • 障害者雇用調整金などの支給方法を見直し、助成措置を強化する

このうち「就労選択支援」は、公布後3年以内の政令で定める日に施行されるものとされています。改正障害者総合支援法の公布は2022年であるため、就労選択支援は2025年までに開始される予定です。

また、これまで障害者雇用促進法などで事業者に雇用義務があったのは「所定労働時間が週20時間以上の労働者」でした。ですが今回の改正で、短時間労働(10時間以上20時間未満)の障害者を雇用した場合でも、実雇用率における算定ができるようになりました。そして従来の特例給付金は廃止されます。
精神障害者、重度身体障害者および重度知的障害者が該当

さらに、事業主が一定数を超えて障害者を雇用する場合の、超過人数分の障害者雇用調整金や報奨金の支給額を見直します。あわせて事業者の取り組み支援として助成金が新設されました。

精神障害者への医療支援体制の整備

精神障害者に対する医療関連の支援体制については、以下3つが追加されました。

精神障害者の医療支援における改正内容
  • 家族などの同意がない場合でも、市町村長の同意により医療保護入院を可能とする
  • 「入院者訪問支援事業」を創設する
  • 精神科病院において、従事者への研修や普及啓発などをする

障害者本人が自ら同意できる状態にない場合に、家族などの同意がなくとも市町村長の同意があれば医療保護入院させることが可能になりました。

また、精神科病院において患者の孤独感を防ぐためにも外部との面会交流は重要です。そこで、市町村長同意の医療保護入院者を対象に、入院者訪問支援員が障害者本人の話を聞くなどする「入院者訪問支援事業」が創設されました。

ほかにも、精神科病院における虐待防止対策を組織全体で対応するために、従事者などへの研修や普及啓発をおこなうことも追加されました。

難病患者などへの医療充実と療養生活支援の強化

難病患者や小児慢性特定疾病児童に対しての支援については、以下2つが追加されました。

難病患者などへの支援における改正内容
  • 難病患者などへの医療費助成について、開始時期を前倒しする
  • 療養生活支援の利用とデータ登録の促進のため「登録者証」を発行する

難病患者や小児慢性特定疾病児童に対する医療費助成においては、その助成開始時期がこれまでは申請日でしたが、今回の改正で「重症化したと診断された日」になりました。

また、各種療養生活支援をより認知・利用してもらうために、原則マイナンバー連携を活用した「登録者証」の発行をおこないます。これにより、難病患者であることの証明や障害福祉サービスの利用促進を図ります。

ほかにも、小児慢性特定疾病児童における課題の分析などをおこなう「実態把握事業」を、都道府県などの努力義務として追加するなどがあります。

指定難病や小児慢性特定疾病のデータベースに関する規定整備

障害福祉や難病対策の分野では、データベースについての整備を進めていく必要があるとされています。そのため今回の改正では、「障害者・障害児・難病・小慢」のデータベースについて法的根拠を新設しました。さらに、ほかの公的データベースとの連携解析も可能となります。

その他(仕組みの創設や居住地特例対象施設の追加)

ほかにも以下2つの事項が追加されました。

その他の改正内容
  • 障害福祉サービス事業者指定に、市町村が意見を申し出る仕組みを創設する
  • 居住地特例対象施設に介護保険施設を追加する

事業者指定をおこなう都道府県に対して、地域のニーズを把握している市町村から意見を申し出ることが可能になりました。また、障害者が入所する施設所在市町村にかかる財政的負担を分散させるために、居住地特例の対象に介護保険施設なども追加されました。

障害者総合支援法改正による事業者への影響

障害者総合支援法改正による事業者への影響

改正障害者総合支援法が施行されたことによる事業者への影響を解説します。また、障害者総合支援法にくわえて、障害者雇用促進法に関連する内容にも注目です。2024年4月以降は、改正障害者総合支援法に関連する以下のポイントに注意しましょう。

事業者が注意したいポイント
  • 短時間労働者の雇用算定率が変わる
  • 障害者雇用調整金などが見直しされる

短時間労働者の雇用算定率

障害者雇用促進法にて、事業者は障害者を雇用する義務が定められています。これまでは、所定労働時間が週20時間以上の労働者を対象としていました。

ですが、2024年4月からは「10時間以上20時間未満の精神障害者・重度身体障害者・重度知的障害者」についても雇用率上0.5カウントとして算出できるようになります。

2024年4月からの雇用率制度における算定方法

また、所定労働時間が週10時間以上20時間未満の障害者を雇用する場合に支給されていた従来の「特例給付金」が廃止されました。さらに、2024年4月から障害者の法定雇用率が2.5%へと引き上げとなっていることもポイントです。詳細は以下の記事でチェックしましょう。

障害者雇用調整金などが見直しされる

障害者を雇用する事業者への助成として、事業者の共同拠出による「障害者雇用納付金制度」があります。2024年4月からは、障害者の雇用が一定数を超える場合の調整金や報奨金の支給額が見直しされ、超過人数分の単価が引き下げられました。

また、新しい助成金が導入されます。事業者は障害者雇用を促進するためにも、改めて障害者雇用納付金制度を確認しておきましょう。

障害者総合支援法改正に関するよくある質問

障害者総合支援法改正に関するよくある質問

障害者総合支援法とは?
障害者総合支援法とは、障害者が問題なく日常生活と社会生活を送れるように、総合的な支援をおこなうための法律です。具体的な障害支援サービス(自立支援給付や地域社会支援事業)などの内容が定められています。
障害者総合支援法の改正ポイントはなんですか?
2022年改正、2024年4月1日施行の改正障害者総合支援法では、地域生活や就労関連の支援について大きく6つの事項が追加されました。これまでの現状と課題を解決するために、6つの事項にはさらに詳細に措置などが定められています。
障害者総合支援法改正で事業者への影響はありますか?
事業者は、今回の障害者総合支援法改正で「障害者の就労支援」や「障害者雇用」関連について見直す必要があります。具体的には、短時間労働者の実雇用率算定が追加されたことや、障害者の特例給付金が廃止になること、障害者雇用調整金の見直しされたことなどがあります。

まとめ

障害者総合支援法とは、障害者への総合的な支援について定められた法律です。障害の有無に関係なく、すべての国民が相互に尊重する共生社会を実現するという目的があります。

2022年に改正された障害者総合支援法は、2024年4月1日より施行されました。障害福祉サービスに関連する内容が追加されたため、事業者や行政機関は必ず確認しておきたいところです。

また、事業者は障害者総合支援法や障害者雇用促進法について、雇用率算定や給付金などの変更点もよく理解しておく必要があります。本記事を参考に、障害者総合支援法の改正内容を覚えておきましょう。

監修者労務SEARCH 編集部

労務・人事・総務管理者の課題を解決するメディア「労務SEARCH(サーチ)」の編集部です。労働保険(労災保険/雇用保険)、社会保険、人事労務管理、マイナンバーなど皆様へ価値ある情報を発信続けてまいります。
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