この記事でわかること・結論
- 欠勤控除の正しい計算方法(4つの方式・具体的な計算例・端数処理のルール)
- 欠勤控除が違法になるケースと罰則(労働基準法違反のラインと就業規則の重要性)
- 「おかしい・休んでいないのに控除された」と感じたときの確認方法と対応フロー

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ニュースこの記事でわかること・結論
欠勤した月の給与明細を見て「こんなに引かれるの?」と驚いた経験がある方も多いのではないでしょうか。また、人事担当者の立場から「この計算で合っているか不安」と感じたことはありませんか。
欠勤控除は、正しく計算・運用しないと労働基準法違反になる可能性もある、実務上のリスクが高いテーマです。計算方法は法律で一律に定められておらず、就業規則への明記と正確な端数処理が求められます。また、「おかしい・違法ではないか」と感じた従業員と、申し出を受けた人事担当者のそれぞれが何をすべきかも、現場では判断が難しいポイントです。
本記事では、欠勤控除の基本定義から計算方法4種・端数処理のルール・違法になるケースと罰則・給与明細の読み方まで、人事担当者と従業員の双方が読んでもわかるよう、実務に即した内容で解説します。「休んでいないのに控除されている」というパターン別の原因と対処法も掲載していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
欠勤控除とはどのような制度なのか、まずは基本的な定義と法的根拠を押さえましょう。似た用語との違いも整理しておくと、給与明細の読み方が格段にわかりやすくなります。
労働しなかった日・時間の分の賃金を給与から差し引くことです。「ノーワーク・ノーペイの原則」とも呼ばれ、民法第624条第1項(労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求できない)を法的根拠とします。つまり「働いた分だけ賃金が発生する」という考え方が、欠勤控除の根本にあります。
労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。
月給制の場合、あらかじめ1カ月分の賃金が決まっていますが、欠勤した日・時間に相当する分は「働いていない」ため、その分を差し引くのが欠勤控除です。法律上、欠勤控除自体は適法な行為ですが、計算方法や端数処理を誤ると違法になる可能性があります。
「欠勤控除」「勤怠控除」「遅刻早退控除」という呼称は、企業によって使われ方が異なるため混乱しやすい用語です。一般的には以下のように整理できます。
| 用語 | 対象となる不就労 |
|---|---|
| 欠勤控除 | 1日単位の欠勤(終日の不就労) |
| 遅刻早退控除 | 始業・終業時刻のずれによる時間単位の不就労 |
| 勤怠控除 | 欠勤・遅刻・早退・中抜けなど不就労全般の総称 |
給与明細の控除欄に「勤怠控除」と記載されていれば、欠勤分・遅刻分・早退分がまとめて控除されているケースが多いです。自社の就業規則でどの呼称を使っているか確認しておきましょう。人事労務担当者も上記の違いや、給与明細の書き方をしっかりと理解しておくことが大切です。

「どんな欠勤でも控除されるの?」という疑問はよくあります。欠勤控除の対象になるかどうかは、休んだ理由や就業規則の定めによって異なります。ここでは代表的なケースを整理します。
自然災害での欠勤については、会社側に「天候による通勤困難」をあらかじめ特別休暇として定めているかどうかで判断が変わります。就業規則の確認が重要です。
年次有給休暇を取得した日に欠勤控除が発生することはありません。年次有給休暇について付与ルールや取得条件をおさらいしたい場合は、別記事もぜひ参考にしてください!
欠勤控除の計算方法は、法律で一律に定められているわけではありません。就業規則・給与規程に定めた方式を使うことになりますが、代表的な4つの方式を具体的な数値とともに解説します。どの方式を採用しているか、自社の規程を確認しておきましょう。
年間を通じた所定労働日数の平均で計算するため、月ごとの控除額が安定しやすく、実務上採用されることの多い方式の一つです
計算式:月給 ÷(年間所定労働日数 ÷ 12)× 欠勤日数
具体例:月給25万円・年間所定労働日数240日(月平均20日)・2日欠勤の場合
250,000円 ÷ 20日 × 2日 = 25,000円の控除
控除を計算する対象月の実際の所定労働日数を使う方式です。連休が多くGW・年末などで所定労働日数が少ない月は1日あたり単価が高くなるため、控除額が大きくなりやすい方式です。
計算式:月給 ÷ 当月所定労働日数 × 欠勤日数
具体例:月給25万円・当月所定労働日数18日(GW月など)・1日欠勤の場合
250,000円 ÷ 18日 × 1日 ≒ 13,888円の控除(端数は切り捨て→13,888円)
その月のカレンダー上の日数(28〜31日)で月給を割る方式です。月によって28〜31日と変わるため計算が煩雑になりがちです。「暦日数方式」は給与規程で明示しないとトラブルになりやすいです。
計算式:月給 ÷ 暦日数 × 欠勤日数
具体例:月給25万円・2月(28日)・1日欠勤の場合
250,000円 ÷ 28日 × 1日 ≒ 8,928円の控除(端数切り捨て)
遅刻・早退・中抜けなど時間単位の不就労は、時間単位で控除計算するのが一般的です。端数処理は就業規則や賃金規程に基づいておこない、従業員に一方的に不利益となる方法は避ける必要があります。
計算式:月給 ÷ 月の所定労働時間 × 不足時間
具体例:月給25万円・月の所定労働時間160時間・1時間遅刻の場合
250,000円 ÷ 160時間 × 1時間 = 1,562.5円 → 端数切り捨てで1,562円の控除
4つの計算方式を毎月手作業で処理する場合、計算ミスや方式の適用誤りが起こりやすくなります。特に端数処理のルールを正確に守り続けるのは、手計算では負担が大きいのが実情です。
給与計算ソフトを導入することで、採用している計算方式を設定すれば自動的に正しい控除額が算出されます。Excelテンプレートを活用する場合も、計算式を一度正確に設定しておけば毎月の工数を大幅に削減できます。複数の方式を月ごとに切り替えることは人的ミスのリスクが高まるため、1つの方式に統一し、就業規則に明記しておくことが重要です。
欠勤控除の計算でもっとも見落とされがちなのが端数処理のルールです。「切り上げた方が計算が楽」という理由で誤った処理をすると、労基法違反になる可能性があります。正しい基準を確認しましょう。
労働基準法第24条は「賃金の全額払いの原則」を定めており、使用者は実際に労働した分の賃金を全額支払わなければなりません。欠勤控除で端数を切り上げると、実際に不就労だった時間を超えた控除になってしまい、「就労した時間の賃金まで差し引いた」ことになる可能性があります。これが全額払い原則に違反するリスクのある行為です。
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。
| 処理方法 | 可否 | 理由 |
|---|---|---|
| 切り捨て | ✅ OK | 実際の不就労時間以内 に収まるため適法 |
| 四捨五入 | ❌ NG | 過剰控除になるケースがある |
| 切り上げ | ❌ NG | 就労分まで差し引く恐れがある |
「15分単位で切り上げ処理している」という企業も見受けられますが、切り上げ処理は労基法違反のリスクがあります。必ず1分単位で切り捨て処理をおこないましょう。
欠勤控除をめぐるトラブルの多くは、計算ミスよりも「ルールの不明確さ」と「情報共有不足」から生まれます。「自分は休んでいないのに控除されている」「こんなに引かれるはずがない」と感じたとき、従業員と人事担当者それぞれがとるべき行動を整理しました。
窓口に申し出る前に、自分でできる確認を先におこなうと話がスムーズです。
欠勤控除の計算方式・対象となるケースが就業規則や給与規程に記載されているか確認します。記載がない場合は、控除の根拠自体が曖昧という可能性があります。
就業規則に記載されている計算方式をもとに、自分でも計算してみましょう。月給・所定日数・欠勤日数を確認すれば検算できます。
有給休暇の申請が正しく処理されているか、残日数と申請記録を確認します。申請したのに処理漏れになっているケースもあります。
皆勤手当など出勤日数に連動する手当が正しく処理されているかも確認します。1日欠勤で不支給になる旨が就業規則に定められているか照合しましょう。
欠勤が多い月は控除後の給与が大幅に減少することがあります。勤務した時間分の給与が最低賃金(時給換算)を下回っていないか確認しましょう。

従業員から「欠勤控除がおかしい」と申し出を受けた場合、感情的にならず、事実確認から丁寧に対応することが信頼維持の鍵です。
申し出受領時の対応フロー
「欠勤控除 休んでない」という検索が多いことからも、このパターンで悩む方が多いことがわかります。原因は大きく4つに分類できます。
| 原因パターン | 具体的な状況 | 対処法 |
|---|---|---|
| ①打刻ミス・未打刻 | ICカードや指紋認証の失敗、打刻し忘れによって欠勤扱いになっている | 勤怠システムの打刻ログを確認し、修正申請をおこなう |
| ②有給申請の処理漏れ | 有給申請をしたが、上長の承認漏れや人事の入力ミスで欠勤扱いになっている | 申請履歴・承認記録を照合し、有給として再処理する |
| ③シフト変更・振替休日の処理ミス | シフト変更が反映されていない、または振替休日が欠勤として計上されている | シフト変更の記録・振替休日の書類を確認し、正しく修正する |
| ④集計誤り | 遅刻・早退分の控除を1日欠勤として誤計上している | 勤怠記録と控除額を照合し、時間単位の控除に修正する |
いずれのパターンも、早期に申し出て事実確認することが解決の近道です。「気づいたら証拠が残っていなかった」というケースを防ぐため、給与明細は毎月保管しておくことをおすすめします。

欠勤控除自体は適法な行為ですが、運用を誤ると労基法違反になる可能性があります。人事担当者は違法ラインを正確に把握しておく必要があります。
労働基準法第24条(全額払いの原則)は、賃金を全額支払うことを義務づけています。「半日遅刻なのに1日分控除した」「1時間の遅刻に対して2時間分控除した」といったケースは、実際に就労した時間分の賃金まで差し引いたことになり、同条に抵触する恐れがあります。
労働基準法第24条(賃金の全額払い原則)に違反した場合、30万円以下の罰金が科される可能性があります。「知らなかった」では済まされないため、計算方法と端数処理の正確な理解が必須です。
欠勤が多い月に減額方式(月給から欠勤分を引く方式)を適用し続けると、控除後の給与が最低賃金を下回る恐れがあります。この場合、最低賃金法違反となります。
対策としては、欠勤日数が多い月に「加算方式(最低賃金を基本として出勤日数分を積み上げる計算)」に切り替えるルールを就業規則に定めておく方法が有効です。加算方式・減額方式のどちらを採用するかも就業規則に明記しておく必要があります。
労働基準法第89条は、賃金に関する事項(控除の方法を含む)を就業規則に記載することを義務づけています。「うちは口頭で伝えている」「慣例でやっている」という状態では、法的根拠が弱く、控除が無効とされる可能性があります。欠勤控除の計算方式・対象となるケース・端数処理の方法・手当の取り扱いは、必ず就業規則または給与規程に明記しておきましょう。
給与明細を見ても「欠勤控除の欄が何を意味するのかわからない」という方は少なくありません。ここでは控除欄の読み方と、控除後の税・社会保険料計算の正しい順序を解説します。
給与明細の「控除」欄には、税や社会保険料のほか、欠勤・遅刻・早退分の控除額が記載されています。企業によって表記が異なるため、どの欄が欠勤控除に当たるかがわかりにくいことがあります。
| よく見られる表記 | 意味 |
|---|---|
| 欠勤控除 | 1日以上の欠勤に対する控除額 |
| 勤怠控除 | 欠勤・遅刻・早退・中抜け すべての不就労控除をまとめた表記 |
| 遅刻早退控除 | 時間単位の遅刻・早退に対する控除額 (欠勤控除と分けて表記している企業) |
| 不就労控除 | 勤怠控除と同義で使われることが多い |
明細に記載されている表記の意味が不明な場合は、人事担当者に確認することで根拠となる計算式を教えてもらうことができます。
欠勤控除が発生した月の社会保険料・所得税の計算順序を誤ると、実際よりも多い税額になる可能性があります。正しい順序は以下のとおりです。
欠勤控除を先に処理してから、税・社会保険料を計算します。逆の順番にならないよう注意が必要です。
月給から欠勤・遅刻・早退分の控除額を計算します。
月給から欠勤控除額を差し引いた金額が、その月の実際の支給額の基準になります。
雇用保険料や所得税は、欠勤控除後の支給額をもとに計算します。控除前の月給に対して計算するのは誤りです。
社会保険料(健康保険・厚生年金)は定時決定に基づく標準報酬月額により決定され、随時改定などの事情がなければ、1年を通して変動しない仕組みです。そのため、欠勤控除があった月でも社会保険料額に変更はありません。また、欠勤により給与がゼロになった月でも保険料は発生します。
欠勤が長期化したり月の大半を欠勤した場合、控除額が月給を超えてしまうことがあります。「給与がゼロになる」または「マイナスになる」事態は、人事担当者にとっても対応が難しいケースです。
理論上、欠勤控除額が月給を超えた場合、支給額はゼロになります。さらに社会保険料・所得税の控除分が加わると、会社側が従業員に対して請求権を持つ状態、いわゆる「給与のマイナス」が発生する可能性があります。ただし、給与から一方的に差し引くことには法的な制約があるため、適切な対応が必要です。
給与がゼロ以下になった場合の不足分(社保料等の本人負担分)を翌月給与から相殺する場合、労働基準法第24条との関係で注意が必要です。
賃金の全額払い原則(労基法第24条)の例外として、「法令に別段の定めがある場合」または「労使協定(書面)を締結している場合」は賃金からの控除が認められます。社会保険料・税金の控除は法令上認められていますが、それ以外の不足分を翌月給与から相殺する場合は、あらかじめ労使協定を締結しておくことが必要です。
給与がゼロになった月でも、社会保険料(健康保険・厚生年金・介護保険)は発生します。従業員負担分の保険料をどのように徴収するかは、事前に就業規則や労使協定で定めておく必要があります。
社会保険料の加入条件や計算方法については、社会保険の解説記事もあわせてご確認ください。
欠勤控除トラブルを防ぐには、計算を正確におこなうことと同時に、就業規則への明記と社内周知が欠かせません。人事担当者が整備しておくべき運用ルールをまとめます。
以下の5項目が就業規則または給与規程に記載されているか確認しましょう。
欠勤した場合、基本給以外の手当がどのように扱われるかは企業によって異なります。一般的な傾向を以下の表で整理します。
| 手当の種類 | 一般的な扱い | 備考 |
|---|---|---|
| 基本給 | 対象(控除あり) | 欠勤日数分を控除 |
| 皆勤手当 | 対象(不支給になることが多い) | 1日でも欠勤で不支給とする企業が多い。就業規則の定め次第 |
| 通勤手当 | 対象(欠勤日数分) | 実費支給の場合は欠勤日分を不支給とすることが多い |
| 住宅手当 | 非対象が多い | 出勤日数に直接関係しないため、控除しない企業が多い |
| 扶養手当 | 非対象が多い | 就業規則の定めによる |
| 固定残業代(みなし残業) | 就業規則次第 | 欠勤日数分を比例控除するケースと全額支給するケースがある。控除する場合は計算が複雑になるため規程への明記が重要 |
いずれの手当も、就業規則に「欠勤した場合の取り扱い」を明記しておかないとトラブルの原因になります。
欠勤控除は労働者の権利と企業の適法な賃金管理が交わるテーマです。計算の正確さと就業規則の整備、双方が揃って初めて適切な運用といえます。労務SEARCHでは、給与計算・人事労務の実務に役立つ情報を継続的に発信しています。
人事担当者・従業員の双方にとって、欠勤控除のトラブルを防ぐポイントは共通しています。
計算方式・端数処理・手当の取り扱いを就業規則または給与規程に明記し、全従業員に周知することがトラブル防止の基本です。「口頭で伝えていた」「慣例でやっていた」では法的根拠が弱く、控除が無効になる可能性があります。
給与明細・勤怠記録・就業規則の3点を照合することが確認の第一歩です。それでも解消しない場合は人事担当者への申し出、または労働基準監督署への相談という手順で対処しましょう。
手計算では端数処理ミスや方式の適用誤りが起こりやすくなります。給与計算システムを活用することで、計算ミスのリスクを大幅に削減でき、人事担当者の工数削減にもつながります。

平成26年より神奈川県で社会保険労務士として開業登録を行い、以後地域における企業の人事労務や給与計算のアドバイザーとして活動を行う。
退職時におけるトラブル相談や、転職時のアドバイスなど、労働者側からの相談にも対応し、労使双方が円滑に働ける環境作りに努めている。
また、近時は活動の場をWeb上にも広げ、記事執筆や監修などを通し、精力的に情報発信を行っている。
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