この記事でわかること
- 労働者に応じた休業手当の計算方法
- 休業手当が課税対象かどうか
- 派遣社員への休業手当の支払い義務など
企業は休業の事由が使用者の責に帰すべきものである場合、休業手当を支払わなければなりません。
休業手当の不払いがあった場合、使用者には罰則が発生します。
今回は休業手当の定義や種類、休業補償との違いなどを、労働基準法をもとに解説いたします。
この記事でわかること
休業手当とは、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合において、使用者が、休業期間中の労働者に、その平均賃金の60%以上の手当を支払わなければならない制度です。
休業とは、労働者が労働契約により、労働の用意をなし、しかも労働の意思をもっているにも関わらず、労働することができない状態をいいます。
休業は早退や午前休といった、1日の内の一部の休業にも該当しますが、以下の休業は休業手当の対象外となります。
休日とは、土日祝日等元々労働義務がない日(所定労働日ではない日)であり、休日と休業とは、本来労働日であるかどうかという点に違いがあります。
使用者の都合で労働者を休業させてしまった場合は、平均賃金の100分の60以上にあたる金額を休業手当として支払わなければなりません。
使用者の責に帰すべき事由とは、使用者の都合によって労働者が就業できなくなった事由(労働基準法第26条適用)を指します。一般的に機械の検査・経営悪化による業務の減少が該当します。
▼社員を早退させた場合
その日の賃金が平均賃金の100分の60に満たない場合には、1日の平均賃金の100分の60に相当する額と実際に働いた時間に対する賃金の差額を休業手当として支払います
ただし、台風などの天災により公共交通機関が利用できない場合は、休業手当の対象にはなりません。
自然災害は、使用者の責にはあたらない(不可抗力)とされます。
使用者の責に帰すべき事由による休業以外の休業には以下のようなものがあります。
上記の休業は、要件に該当した場合、労災保険法、雇用保険法、健康保険法に基づいて、給付や補償がおこなわれます。
休業手当の不払いは30万円以下の罰金(労働基準法違反)
休業手当の計算方法は、休業日ごとに「1日あたり平均賃金の6割以上」を支払うという原則に従って、計算をおこないます。
また、計算式は原則使用する計算式と、時給・日給者の特例に対応した計算式、1日の一部のみ休業させる場合の計算式が用意されています。
休業手当の計算方法 | |
対象者 | 計算式 |
---|---|
原則 | 休業日以前3カ月間の賃金総額 ÷ 3カ月の総歴日数 |
時給・日給の労働者 | 休業日以前3カ月間の賃金総額 ÷ 3カ月間の労働日数 × 60% |
1日の一部のみ休業 | 平均賃金の60%から一部労働の賃金を引いた額 |
時給・日給の労働者は原則の計算式ともに計算し、比較して、高い方を平均賃金として計算します。
雇用形態に関係なく、すべての労働者(契約社員、アルバイト・パートタイム含む)
使用者の責に帰すべき事由による休業を命じた場合、判断が難しい対象者を解説します。
▼判断が難しい対象者の判断基準
内定者 | 労働契約が成立している場合、休業手当の支払い義務が発生 |
---|---|
派遣社員 | 派遣元企業に休業手当の支払い義務が発生 |
派遣先の使用者の責に帰すべき事由により休業を余儀なくされた場合も同様
使用者の責に帰すべき事由かの判断は派遣元の使用者についてなされます
派遣基本契約書に補償を派遣先に求める条項がある場合、派遣先は休業手当に相当する額について損害の賠償をおこなうことが求められます
休業手当は労働基準法11条で定める賃金に該当するため、所定の賃金支払日に支払わなければなりません。
ノーワークノーペイの原則とは
ノーワークノーペイの原則は「労働者の責に帰すべき事由により労務の提供がおこなわれなかった場合、もしくは使用者・労働者双方の責に帰すべき事由によらずに労務の提供がおこなわれなかった場合には、賃金の支払義務は発生しない」という考え方です。
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休業手当と、休業補償や年次有給休暇には明確な違いがあります。
休業手当 | 休業補償給付 | |
額 | 平均賃金の60%以上 |
|
---|---|---|
課税 | 課税対象 | 課税対象外 |
従業員の申出・申請 | 不要 | 労働者が申請する建前になっているが、会社が代わりに申請してくれる場合も多い |
休業補償給付とは、労働者が業務上負傷し、疾病にかかり、療養のため休業した場合に、労災保険法に基づいて、休業中に給付基礎日額の100分の60の給付がされる制度です。
加えて、休業特別支給金として給付基礎日額の100分の20が支給されます。
休業補償給付は労働者災害補償保険法に基づく保険給付のため、所得税の課税対象になりません(休業手当は給与所得とみなし、所得税の課税対象)。また、休業補償給付は会社の所定休日であっても支払対象期間となります。
休業補償給付は、休業3日目までの期間を「待期期間」とし、使用者が平均賃金の60%を休業補償として支払わなければなりません。
雇用調整助成金は、経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図るための休業手当に要した費用を助成する制度です。
受給には「雇用保険の適用事業主であること」や「実施する雇用調整が一定の基準を満たす」などの要件をすべて満たす必要があります。
新型コロナウイルス感染症の影響に伴う雇用調整助成金の特例では、要件が変更になっています。
年次有給休暇とは、労働義務がある日について、労働者が使用者から労働義務を免除された日です。
そのため、年次有給休暇を利用しても給与の減額はできません。
年次有給休暇は、従業員が希望すれば、休業手当(使用者の責に帰すべき事由による休業による場合)を年次有給休暇に変更することも可能です。
計算方法は、労働基準法で定められるいずれかの方法を選択し、就業規則等に定めた方法で計算した金額を支給しなければなりません。
事業主には、すべての使用者に対して「年5日の年次有給休暇の確実な取得」が義務付けられています
休業手当は労働者の雇用を守り、事業を継続していくための重要な補償といえます。不確実性の高い世の中においても積極的に活用することが事業継続の鍵となります。