雇用調整助成金とは、一時的に休業や教育訓練、出向などを行い、労働者の雇用の維持を図る事業主に、労働者の失業の予防や雇用の安定を図ることを目的とした助成金です。
今回は雇用調整助成金の対象事業者や支給要件、支給金額、申請手続きを中心にご紹介します。
上場の建設会社にて情報システムの開発、運用、管理を経験した後、人事部に異動して給与計算、社会保険手続きから採用・退職など、人事労務管理に約12年従事。やまもと社会保険労務士事務所の所長、特定社会保険労務士。
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雇用調整助成金とは、景気の変動や消費動向の変化より事業の縮小を検討する企業が、余剰従業員に対して、休業・教育訓練・出向の3つの雇用調整を行う時に支給される助成金です。
雇用調整助成金の支給対象事業主は、以下の条件を満たす必要があります。
※その他、細かい条件や留意点があります。詳細は厚生労働省が発表している雇用調整助成金
をご確認ください。
雇用調整の実施は従業員の削減だけでは認められません。
雇用調整は「景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由」によって、「事業活動の縮小」を余儀なくされ、「労使間の協定」に基づいて行わなければいけません。
また、受給に必要な書類には、雇用調整の対象になった労働者の出勤状況や賃金、休業手当などの支払い状況を明らかにできる労働者名簿や賃金台帳、出勤簿などが該当します。
以下の条件に該当する事業主は、助成の対象外となります。
雇用調整助成金の支給には、以下の要件を満たす必要があります。
生産量、または売上高などの事業活動を示す指標の直近3カ月間の月平均値が、前年同期に比べて、減少していること
雇用保険被保険者数、および派遣労働者数の直近3カ月間の月平均値が、前年同期と比べて、増加していないこと
※中小企業と中小企業以外で減少比率が変わる
休業や出向の内容が、提出された労使協定に基づいていること
※後述の支給期間の条件を満たすことも必要です。
対象期間は1年間です。1年間が終了し、1年間の休止期間を経れば、再度申請を行えます。
【参考】厚生労働省 雇用調整助成金
雇用調整助成金の支給対象となる措置には「休業」、「教育訓練」、「出向」の3種類があり、それぞれ条件が異なります。
雇用調整助成金における「休業」は、低下した生産量が休業を通じて、短期間で回復が見込まれる場合の措置です。
休業の実施により、助成金を受けるためには以下の条件を満たす必要があります。
雇用調整助成金における「教育訓練」は、従業員に教育訓練を通じて、新たな技術の習得を促し、従業員の能力を向上させる措置です。
教育訓練措置の実施により、助成金を受けるためには以下の条件を満たす必要があります。
雇用調整助成金における「出向」は、従業員を他の企業に出向・従事を通じて、雇用維持を図る措置です。
出向の実施により、助成金を受けるためには以下の条件を満たす必要があります。
休業、教育訓練、出向の措置に支給される助成金は以下の算出方法で決定します。
休業手当に助成率(中小企業は3分の2 、大企業は2分の1)を乗じた額
教育訓練実施時の賃金に助成率(中小企業は3分の2 、大企業は2分の1)を乗じた額
出向元事業主の出向労働者の賃金に対する負担額に助成率(中小企業は3分の2 、大企業は2分の1)を乗じた額
なお、休業措置と教育訓練措置の場合、上限額は8,250円ですが、教育訓練措置には上限額とは別に訓練1日当たり1,200円が加算されます。
また、休業措置や教育訓練措置を実施している期間に対象となる労働者が所定外労働を行っていた場合、その労働時間分の額が助成額から差し引かれます(残業相殺)。
【参考】厚生労働省 雇用調整助成金
雇用調整助成金を受給するには、以下の手順で受給手続きを行います。
雇用調整計画書の策定は、休業措置の場合、どの部門で何人がどのくらいの期間休業するのか、休業する人の選定方法などを検討しなければいけません。
また、教育訓練措置の場合、訓練内容および訓練期間の決定や講師の選定を行います。
出向措置では、出向先の選定や出向に関する内容確認(氏名、職種、賃金、出向期間、出向先での労働条件など)が必要です。
雇用調整計画書を提出する際は雇用調整助成金専用の計画届が用意されており、必要事項を漏れなく記入します。インターネット上からダウンロードも可能です。また、添付する必要書類も準備しておきましょう。
雇用調整の措置を実施した後、雇用調整女性金の支給申請を行います。休業措置、教育訓練措置の支給申請は支給対象期間の末日の翌日から2カ月以内、出向措置の支給申請は、支給対象期の末日の翌日から2カ月以内です。
【参考】厚生労働省 雇用調整助成金