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休業補償とは?休業手当との違いや計算方法、手続きについても徹底解説!

休業補償とは?休業手当との違いや計算方法、手続きについても徹底解説!

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業務上のケガや病気で出勤できなくなった場合、従業員は休業補償を受けることができます。この記事では、給付の要件や手続きの流れなど、休業補償に関する基礎知識を解説します。

この記事でわかること

  • 休業手当・傷病手当・傷病手当金との違い
  • 休業補償給付制度の支給要件・支給額・期間、手続きについて
ソビア社会保険労務士事務所 監修者五味田 匡功

ソビア社会保険労務士事務所の創業者兼顧問。税理士事務所勤務時代に社労士事務所を立ち上げ、人事労務設計の改善サポートに取り組む。開業4年で顧問先300社以上、売上2億円超達成。近年では企業の人を軸とした経営改善や働き方改革に取り組んでいる。
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休業補償とは

休業補償とは労災保険の給付制度であり、業務または通勤による負傷・疾病の療養のため、仕事に就くことができなくなった従業員に対して支払われる補償全般を指します。企業は、労働契約を保ったまま従業員を休業させることが可能です。

「労働災害補償保険(以下、労災保険)法」の保険給付制度では、正社員や契約社員、パートタイム・アルバイトを含むすべての労働者が補償対象です。ただし派遣社員の場合、派遣元事業主が加入する労災保険法の適用対象となります。

休業とは、従業員がなんらかの理由で業務を休むことを指します。業務または通勤による休業についての補償を含めて、以下の4つに分類できます。

休業の種類
労働災害による休業 勤務中の事故、または通勤中の事故などの療養により、
業務をおこなうことができないことによる休業
自己都合による休業 上記以外の事故や病気による療養、
産前産後の休暇や出産による育児休業
家族に要介護者が発生したことによる介護休業など
会社都合による休業 経営難による自宅待機や操業停止、設備不良など、
会社側からの申し立てによる休業
天災事変による休業 地震や火事、水害、台風の影響など、
会社を休まざるを得ない状況に陥ることによる休業

休業補償とは上記のなかでも、一番上の労働災害による内容が該当します。つまり、業務上で負ったけがや病気などによって労働者が働くことのできない休業の場合に、労災保険の休業補償が適用されます。

具体的には、業務中によるものを「業務災害」と呼び、通勤中における事故などは「通勤災害」と呼ばれます。正確には、このうち通勤災害を対象とした給付に関しては「休業給付」という名前の別の保険給付が適用されます。

また、労働災害に遭ったとしても要件を満たさない場合は休業補償を受けることができません。詳しい受給要件を見ていきましょう。

実際に労働災害に遭ってから休業最初の3日間については、労災保険からの給付はありません。代わりに事業主側が「1日につき平均賃金の60%」を補償するという決まりがあります。詳細は労災保険法の第14条に記載されています。

休業補償給付は、労働者が業務上の負傷又は疾病による療養のため労働することができないために賃金を受けない日の第四日目から支給するものとし、その額は、一日につき給付基礎日額の百分の六十に相当する額とする。

また、労働災害のなかでも「業務災害」の場合については事業主側の義務が規定されていますが、通勤災害については労災保険法のみに規定されており会社によって支給の有無が異なる場合があります。

休業手当・傷病手当・傷病手当金との違い

業務や通勤とは関係性がないけがや病気による休業の場合、従業員は各社会保険による補償や手当を受けることができます。休業補償と似ている制度には、

  • 休業手当
  • 傷病手当
  • 傷病手当金

などがあります。休業手当、傷病手当、傷病手当金と休業補償との違いをまとめました。それぞれ異なるポイントを理解しておきましょう。

休業補償 休業手当 傷病手当 傷病手当金
社会保険 労災保険(賃金としての扱い) 雇用保険 健康保険
受給額 給付基礎日額の80%
(うち休業特別支援金部分20%)
平均賃金の60%以上 賃金日額の45~80% 標準報酬日額の3分の2
受給期間 休業の4日目から休業が続く間 休業期間中 本来基本手当を受けられる日数 支給開始日から最長1年6カ月
従業員側の申請 必要 不要 必要 必要
所得税 対象外 対象 対象外 対象外

休業手当とは

休業手当とは、経営悪化やストライキなど、使用者の責任により休業が発生した場合に、使用者から労働者へ支給される手当です。

使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

近年、頻発している自然災害などによる従業員への自宅待機命令や帰宅命令も同様に、会社命令で休業させた場合は手当の支給が必要です。事業者側は休業手当として「平均賃金の60%以上」を支払います。

ただし事由のなかでも以下のようなケースでは休業手当の対象外となるため覚えておきましょう。

休業補償との違いには、休業の事由や労災保険から支払われるか会社から支給されるかなどがあります。

傷病手当とは

傷病手当とは、離職後ハローワークへ求職の申し込みをした後、けがや病気のために15日以上続いて職業に就くことができないときに支給される手当です。

傷病手当の支給額

賃金日額の45~80%
原則、離職した日の直前6カ月に毎月決まって支払われていた賃金の合計÷180

傷病手当金とは

傷病手当金とは、業務外の傷病のため仕事ができず、収入が減少したときに支給される手当です。

傷病手当金の支給額

支給額は1日につき、標準報酬日額の3分の2に相当する金額です。

標準報酬日額とは、4〜6月の3カ月間に支払われた給与の平均額を等級区分にあてはめた「標準報酬月額表」という金額を30分の1に日割りしたものです。

標準報酬月額は、従業員の保険料を決定する基礎となる等級区分でありさまざまな計算で利用されます。

傷病手当金の支給期間

休業開始後4日目から休業が終了するまで

休業補償と同様に、休業開始1〜3日目は「待機期間」といい傷病手当金は支払われません。待機期間は継続した3日間である必要があり、休日もカウントされます。

また、傷病手当金の支給を開始した日から最長で1年6カ月支給されますが、1年6カ月の時点で障害が残っている場合、国民年金や厚生年金の障害年金を申請できることがあります。

休業補償の受給要件や支給期間

勤務時間中のけがや病気による休業に対する補償としての休業補償給付制度を解説します。

休業補償の給付制度

  • 休業補償給付:業務中に起こった災害が原因の場合に給付
  • 休業給付:通勤中に起こった災害が原因の場合に給付

今回は従業員が業務上の負傷・疾病による療養で、業務に携わることができない場合、生活保障として一定額が支給される休業補償給付について詳しく解説します。

休業補償の受給要件

冒頭でも触れましたが、あらためて休業補償を受けるための要件を解説します。

休業補償は、労働災害に遭ったのち上記の要件をすべて満たした場合にのみ支給されます。

休業補償は、療養のために休業をしている期間を補償する制度です。
そのため、療養中は支給対象ですが、負傷や疾病が治った後、外科後処置のために休む期間は補償期間に含まれません。

また、休業補償は働くことができない状態に陥っている期間に適用されます。
休業前の業務ができなくても、軽易な作業が可能で出社できる場合は、給付を受けることができません。

さらに休業中の従業員に対して、企業が賃金を支払っていない状況でなければなりません。
賃金支払いがまったくない期間に加え、全部労働不能の期間(平均賃金の60%未満の金額を支払った期間)も含む

休業補償給付の支給期間

休業補償給付の支給期間は、休業開始後4日目から休業が終了するまで
傷病補償年金の受給に切り替わった場合、傷病補償年金の支給がおこなわれるため、休業補償給付は支給されません。

休業開始1〜3日目は「待機期間」といい、休業補償および休業特別支援金は支払われません。
待機期間は継続した3日間である必要はなく、休日はカウントされません。
待機期間中、企業は従業員に対し、給付基礎日額の60%を支払う必要があると労働基準法第76条で定められています。

休業補償における支給額の計算方法

休業補償の支給金額は、休業1日につき給付基礎日額の80%が支給されます。さらに休業補償とは別に、休業特別支給金というのも支給されます。こちらは、休業1日につき給付基礎日額の20%が支給されます。

給付基礎日額とは平均賃金(直前3カ月間の賃金÷3カ月間の歴日数)に相当する金額のことを指します。

休業日数は、先述した待機日数である3日を経過したあとからの日数となります。また、「全部労働不能」と「一部労働不能」とで異なります。

休業補償の支給額について
全部労働不能の場合 所定労働時間のすべての業務に就労できない場合、
一日あたり給付基礎日額の60%が支払われます。
一部労働不能の場合 病院への通院など所定労働時間の一部分に就労できない場合
給付基礎日額から労働した部分に支払われる賃金額を
引いた金額の60%が支払われます

給付基礎日額を算出する際の平均賃金(直前3カ月間の賃金÷3カ月間の歴日数)には、

  • 基本給
  • 賞与(3カ月以内の期間ごとに支払われるもの)
  • 残業代
  • 通勤手当や家賃補助
  • 扶養手当

などが該当します。万が一、労働災害に遭ってしまい休業補償を受けるという場合に、どのくらい支給されるのか気になる方は上記の方法で計算しておくと良いでしょう。

休業補償の手続き

休業補償給付を受けるまでの手続きには1~2カ月程度かかります。休業補償の手続きには、事業者側が提出書類の作成することはもちろん対象の労働者にも対応してもらう必要があるため確認しておきましょう。

会社側から対象従業員へ必要書類を送り、対象従業員が医療機関の証明証などと一緒に労働基準監督署へ送付します。しかし労働災害によっては、従業員が入院などしていて対応が難しいケースもあります。

そのような場合は、病院から会社に必要書類を送って代わりに会社に提出してもらう方法もあります。もし、電子申請などで対応する場合は上記のような心配もないでしょう。

休業補償給付支給請求書(兼休業特別支給金支給申請書)は厚生労働省の公式Webサイトよりダウンロードができるため、活用して作成しましょう。

休業補償の注意点

休業補償は、受給資格者が指定された以下条件に該当する場合、支給の制限または支給額が減額されます。

そのほかにも、休業補償と有給休暇による賃金の併用はできません。有給休暇を取得した場合、休業補償は支給されないため頭に入れておきましょう。

休業補償の受任者払い制度とは

休業補償における受任者払い制度とは、会社側が休業補償を立て替えて、本来の休業補償が振り込まれるよりも前に労働者へ支給してあげる制度です。その場合、本来厚生労働省から本人口座へ振り込まれる分は、会社があとから受け取ります。

休業補償は申請した労働者の口座に直接振り込まれますが、労災認定がなされて振り込まれるまでは時間がかかります。そのため休業中の生活をサポートするために、企業側が早めに立て替えてあげられる制度として受任者払い制度があります。

休業期間中で収入がない労働者にとっては、保険料支払いや生活費など経済的に苦しくなってしまいます。会社にとっても、保険や年金の未払いを防ぐことができるためメリットがあります。

この受任者払い制度の手続きは以下のフローでおこないます。

会社側は注意する点は、労働者への立替払いをしたあとに労働基準監督署へ提出するというところです。対象の従業員が用意するものおよび、会社が作成する必要書類には、

の3つがあります。「受任者払いに係る届」は厚生労働省の公式Webサイトにあるため利用しましょう。

雇用調整助成金の活用について

会社都合や天平事変などやむを得ない事情による休業補償は、雇用調整助成金を活用することも可能です。

雇用調整助成金とは、景気の変動や消費動向の変化より事業の縮小を検討する企業が、余剰従業員に対して休業・教育訓練・出向の3つの雇用調整をおこなうときに支給される助成金です。

雇用調整助成金は、上記のような受給要件があります。会社の経済状況などについて、細かく決まりがあります。

また、雇用調整助成金は2024年1月より受給金額の計算方法が変更されます。

これまで平均賃金方式で計算していた雇用調整助成金は、実際に支払った各種手当などの金額で計算する算定方法(実費方式)を採用します。

詳しくは厚生労働省のパンフレットで確認ができます。会社によっても大切な内容であるため担当者は必ず把握しておきましょう。

まとめ

休業補償給付は労働災害だけでなく、会社都合や天変地異など休業を余儀なくされる場合に活用できる、労働者の雇用保護を目的とした給付制度です。

事由などにより、日本政府が特例措置を実施することもあります。休業補償だけでなく、労働者の休業事由に応じて、適切な補償制度を活用しましょう。

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