健康保険の被保険者が病気やケガにより仕事に就くことができず、会社から十分な報酬を得ることができない場合、傷病手当金を受給できます。
しかし傷病手当金を受給するには、条件を満たさなければいけません。この記事では傷病手当金の支給条件ともらえないケース、支給される場合の期間や金額など、人事・労務担当者が知っておくべき内容を中心に解説します。
労働者から傷病手当の受給希望があった際に適切な対応ができるよう、申請方法などを覚えていきましょう。
目次
傷病手当金とは、病気やケガによって仕事に就くことができず、十分な報酬を得ることができない場合に被保険者とその家族の生活を保障する制度です。会社を連続して休んだ3日間(待期期間)を経て、事業主から十分な報酬が受けられない場合に健康保険から支給されます。
つまり、受給対象となるのは社会保険の加入者です。ただし、任意継続被保険者には支給されません。社会保険の加入対象者となる条件については、以下の記事で解説しています。
傷病手当金をもらうためには、社会保険の加入者が以下の条件をすべて満たさなければなりません。
なお、健康保険(社会保険)に加入している派遣社員やパートタイマー・アルバイトも傷病手当金の受給対象となります。支給条件をすべて満たし、3日間の待期期間を経たら傷病手当金を受け取れます。
病気やケガには、メンタルブレイク・うつ病などの精神疾患も含まれます。
傷病手当金はその他の手当を受給している場合、支給が停止または調整される場合があります。
ただし、老齢(退職)年金・障害厚生年金それぞれ、年金額の360分の1が傷病手当金の日額よりも低い場合は、その差額が支給されます。休業補償給付や出産手当金も支給日額が傷病手当基金よりも低い場合、その差額が支給されます。
会社を退職をすると健康保険の被保険者資格を喪失してしまうため、原則として傷病手当金は支給されません。しかし下記の条件を満たす方は、会社の退職後でも傷病手当金を受給できます。
では支給条件を満たしており傷病手当金がもらえる場合、いくら支給されるのでしょうか。ここからは、傷病手当金の支給額の計算方法や支給期間について解説します。
傷病手当金は、支給開始日から最長1年6カ月の受給が可能です。1年6カ月の期間中に復帰し再度欠勤した場合、復帰して給与支払がある期間も1年6カ月に含まれます。
傷病手当金の受給金額は、以下の計算方法で算出されます。
1日あたりの金額=直近12カ月の標準報酬月額を平均した額÷30日×3分の2(休業した日単位で支給)
被保険期間が12カ月に満たない労働者は、以下の平均額のいずれか低い額を算定します。
傷病手当金の受給には、健康保険 傷病手当金 支給申請書(PDF)が必要です。申請書は、被保険者記入用・事業主記入用・療養担当者(医師)記入用に分かれています。そのため傷病手当金の申請には、計4枚の健康保険傷病手当金支給申請書の提出が必要です。
ただし、その他の書類も必要なケースがあります。下記の追加書類が必要なケースを確認し、書類の添付を忘れないようにしましょう。
必要添付書類 | |
支給開始日前の 12か月以内に 転職した場合 |
前の勤務先の名称、所在地および勤務先に使用されていた期間がわかる書類 |
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障害厚生年金・ 障害手当金を 受給している場合 |
年金給付額等がわかる書類 |
老齢退職年金を受給し、 資格喪失後に 申請する場合 |
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労災保険から休業補償 給付を受給している場合 |
休業補償給付支給決定通知書のコピー |
外傷の場合 | 負傷原因届 |
喧嘩や交通事故等、傷病 が第三者行為の場合 |
第三者の行為による傷病届 |
被保険者が死亡し、 相続人が傷病手当金を請求する場合 |
(除籍)戸籍謄本又は戸籍抄本 |
被保険者のマイナンバー を記載した場合 |
本人確認書類(マイナンバーカード) マイナンバーカードを持っていない場合は、住民票/住民票記載事項証明書/運転免許証/パスポートのコピーなど |
また、詳しい健康保険傷病手当金支給申請書の書き方や記入例については、下記の記事をご参考ください。
傷病手当金の申請は、事業主がおこなうことが一般的です。そのため、傷病手当金の受給を希望する労働者に対して、事業主は適切に対応しなければなりません。傷病手当金の申請には、以下のポイントに注意をしましょう。
組合健保への健康保険手続きにおいては、電子申請が利用できます。特定の法人は、健康保険の一部手続きの電子申請が義務化されています。健保組合への電子申請は、APIに対応したソフトウェアの使用が不可欠でしょう。
傷病手当金の申請は、事業主がおこなうことが一般的です。被保険者が受給を希望した場合、傷病手当金支給申請書のダウンロードと事業主記入欄の記入をおこないます。
また、傷病手当金の申請は電子申請が可能です。傷病手当金の申請は対象ではありませんが、特定の法人(大企業)は健康保険(協会けんぽや健保組合)の一部手続きは電子申請が義務となっています。今後、電子申請義務化は大企業に限らず、中小企業まで対象となる可能性があります。
社会保険労務士の中でも、10%に満たないと言われる助成金を専門に手掛ける特定社会保険労務士/ワークスタイルコーディネーター。なんば社会保険労務士事務所の所長。
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