心が壊れる前兆・症状(例)
- 何もしていないのに気分が落ち込んでしまう
- 何をするにも気力が出てこない
- いつもなら何でもないことに対してもイライラしてしまう
- 気持ちが落ち着かない
- 胸がドキドキして息苦しい
- 周りに誰もいないのに人の声が聞こえてくる
- 食欲不振または食事がおいしく感じない
- 熟睡できず夜中に何度も目が覚めてしまう
近年、メンタルブレイク(メンタルダウン)という言葉を耳にする機会が増えました。うつ病患者が増えているうえに、最近よく耳にするブラック企業の影響もあって、日本人のメンタル状況はますます悪化していると言ってもおかしくないでしょう。
事業主は、従業員のメンタルブレイク(メンタルダウン)の兆候になるべく早く気づき適切に対処する、または原因を知って予防することが大切です。
今回は、心が壊れる前兆やメンタルブレイクの症状、周囲の人が気付くべき異変について解説します。
目次
うつ病などの心の病気について、認知度はここ数年で大きく上がってきたものの、まだまだきちんと理解している方は少ないと思います。
心の病気・メンタルブレイク(メンタルダウン)というのは、誰にでもかかりうるものです。従業員はもちろんのこと、極端にいえば事業主自身にも起こりうることだと言えます。
心の病気にも、体の病気と同じように「前兆」が見られます。心が壊れる前兆として自覚できるものとしては、次のようなことが挙げられます。
心が壊れる前兆・症状(例)
しかし、これらの兆候が業務上のストレスで引き起こされているとは限りません。風邪やほかの体調不良から引き起こされているとも考えられ、ストレスと症状との因果関係が非常に分かりにくいのです。
メンタルブレイク(メンタルダウン)してしまう原因は、心が弱いからというわけではなく、いくつもの精神的な負担が積み重なって起きてしまいます。
精神的な負担というのは「ストレス」と言い換えてもいいでしょう。激務やそれに伴う疲労・睡眠不足、さらには人間関係など、労働するうえでその原因になりうるものはたくさん考えられます。
こういったストレスの感じ方や、どういったことが心の負担になってしまうかということはそれぞれ違ってきます。つまり、あなた自身が全く平気なことでも、人によっては大きな負担になってしまうこともあるのです。
メンタルブレイク(メンタルダウン)は1つのことが原因になるというよりも、さまざまなことが重なり合って起きてしまうことが多いため、「これくらいなら大丈夫だろう」といった安易な考えを絶対にしてはなりません。
また「職場でのハラスメント」「ブラック企業」「やりがい搾取」「安全配慮義務を欠いた職場」などの環境要因もメンタルブレイクにつながる可能性があるため要注意です。
何か自分の心境に異変があったとしても、それがメンタルブレイク(メンタルダウン)の兆候であることを認めるのは、実は勇気がいることです。
従業員のなかには、心のどこかで「自分はうつ病になんてならないだろう」と考える方も多く、症状がかなり進行するまで気が付かないということもめずらしくありません。本人が、
という気持ちを抱いてしまうこともあるのが心の病気の厄介な点だということを、事業主は認識しておく必要があるでしょう。
前述のとおり、心の病気は自分では気が付きにくいものです。そのため周囲の人が、しっかりとサポートしてあげなければなりません。
事業主としても、以下のような異変が起きている従業員がいないかチェックすることを心掛けましょう。
事業主がチェックすべきポイント(例)
このように心の病気にかかると、日頃の行動や見た目が以前とは明らかに違うことが多く見られることがあります。
また、環境が変わったばかりの時期は特に気をつけましょう。就職・転職・異動など、環境や立場が全く変わってしまうと、それに慣れるまではいつも以上のストレスがかかってしまいます。
新しく事業所に来た従業員がいる場合は、より注意しなければなりません。
メンタルブレイク(メンタルダウン)は治療すれば回復していくものです。そのため、早めに対処することが非常に重要となります。
事業主としては、できることをしっかりと行ってください。事業所に相談窓口を設置することも大切ですが、公的な機関でも相談できるということも事業所内で周知しておくべきでしょう。
上記のように身近なところに相談できる場所は多く、電話などで気軽に相談が可能なところもあります。
そして何より、従業員にメンタルブレイク(メンタルダウン)の兆候が表れてから動くのではなく、普段から予防のための対策を取っておくことが大切です。
なかには、心が不安定になってから直接アドバイスされても、より気分が滅入ってしまうという方もいるかもしれません。
こういった面を考慮し、普段から社内メールで注意喚起を行ったり、パンフレットや掲示物などを活用しメンタルブレイク(メンタルダウン)についての案内を行っても良いでしょう。
具体的なアクションとしては、産業カウンセラーの活用・ストレスチェックの実施・メンタルヘルスツールの導入、などが挙げられます。
また、すでに事業所で治療のため休業している従業員がいる場合、復帰までのサポートも欠かせません。休業中の生活費はどうなるのか、きちんと復帰できるのかなど、そういった不安を抱える方は非常に多いと思われます。
国が実施している医療費の助成制度や税金の免除などの経済的な支援について把握し、該当する従業員へ勧めることができるようにしておくと良いでしょう。
国が実施する支援や制度については、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターの「こころの情報サイト」で紹介されています。
従業員がメンタルブレイクしてしまった場合は、休職させることも検討しましょう。
メンタルブレイクした原因が仕事以外にあれば、傷病手当金を受け取れる可能性があります。もし職場が原因でメンタルブレイクした場合は休業補償の対象です。
従業員としては経済的なリスクを抑えながら休養を取れる可能性があるので、休むという選択も視野に入れましょう。
従業員のメンタルブレイク(メンタルダウン)を予防することは、会社の生産性を落とさないためにも重要です。ですが、それ以上に自社の従業員を守るという意味でも、事業主として適切に対応しなければならないことでもあります。
メンタルブレイク(メンタルダウン)を防ぐためには、まず事業主自身がメンタルブレイク(メンタルダウン)についてよく理解すること、従業員1人1人としっかり向き合っていくことが大切です。
上場の建設会社にて情報システムの開発、運用、管理を経験した後、人事部に異動して給与計算、社会保険手続きから採用・退職など、人事労務管理に約12年従事。やまもと社会保険労務士事務所の所長、特定社会保険労務士。
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