この記事でわかること・結論
- ブラック企業とは、不当な長時間労働やハラスメント行為のある酷い環境で従業員を働かせる企業のこと
- 求人情報などからもブラック企業を見極めるポイントがあるためよく覚えておきたいところ
- 企業はブラック企業にならないためにも、従業員を尊重して労働環境を作ってあげることが大切
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人材・組織この記事でわかること・結論
ブラック企業とは、従業員を劣悪または違法は労働環境で働かせている企業のことを言います。パワハラなどと一緒にニュースで耳にする言葉であるため、知っている方はかなり多いでしょう。
労働者はブラック企業の定義や特徴などをよく理解しておくことで、自身が被害者となる可能性を下げることができます。また、企業はブラック企業および各種法令について再確認する必要があります。
そこで本記事では、ブラック企業について定義や厚生労働省が公表する特徴や見極め方、ブラック企業にならないためのポイントなどを解説します。
目次
ブラック企業とは、過剰な長時間労働や不適切な労働環境、または従業員の権利を無視するなど従業員に対して不適切な扱いをおこなう企業の俗称を指します。
インターネットやニュースなどで長い間たびたび話題となるため、言葉の認知度はもはや言うまでもないでしょう。就職・転職時に「ブラック企業には気をつけよう」と思ったことある方も多いのではないでしょうか。
日本の低賃金などと関連して議論に挙げられるブラック企業は、主に長時間労働やハードなノルマ、有休取得の困難さやハラスメント行為など多くの要因から呼ばれることがあります。過労死や離職率などにも影響しているため、社会問題として扱われることもあります。
ブラック企業は社員の健康や福祉を軽視している傾向にあり、過度な業務負担や低賃金など、労働基準に反する行為が見られることが問題視されています。
ホワイト企業とはブラック企業とは対になる言葉であり、従業員への待遇が良い企業のことを言います。
ブラック企業との違いとしては、福利厚生が充実していることや労働時間が適切であること、働く人にとって居心地の良い企業でもあるため離職率が低い傾向にあることなどです。
ブラック企業について、厚生労働省では明確な定義づけはしていませんが、その特徴を公式Webサイトで挙げています。
厚生労働省においては、「ブラック企業」について定義していませんが、一般的な特徴として、① 労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す、② 賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い、③ このような状況下で労働者に対し過度の選別を行う、などと言われています。
また、「労働基準関係法令違反に係る公表事案」という企業リストを厚生労働省は公表しています。これは労働基準関係法令に違反している企業の名前が集約されており、いわゆる「ブラック企業リスト」とも呼ばれています。
各企業がどの法律に違反しているか詳細に記載がされています。これから就職や転職を控えている方は、チェックしておいても良いでしょう。
「実際に働いてみないとブラック企業かどうか判断できない」と思っている方も多いでしょう。しかし、一度入社したら退職しにくい環境である可能性もあるうえに、早期退職はキャリア的にもおすすめできません。
そのため以下のようなポイントを求人や募集の段階からチェックして、ブラック企業の可能性がある会社を避けることが大切です。
ブラック企業に入社してしまわないためにも、上記は必ず見ておきたいポイントです。会社のアピール文言には「やりがい」「やる気のある方募集」などが使われることが多いです。
また、面談など「求人情報と実環境の差異」を確認できる場があれば、気になる点を積極的に質問しておきましょう。
ブラック企業は従業員の健康や権利を軽視し、過酷な労働環境を強いる企業を指します。各個人のキャリアにも大きく影響するなど、ブラック企業の存在は労働市場に深刻な問題を引き起こしています。
そのため労働者ひとりひとりが、ブラック企業の特徴を理解して見極めることも大切です。ここでは、ブラック企業の典型的な特徴について詳しく説明します。
ブラック企業では、法定労働時間を大幅に超える残業が常態化しています。労働基準法第32条において、法定労働時間は原則として1日8時間、1週間40時間という上限を定めています。
使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。2. 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。
上記の法定労働時間を超える場合は、36協定を労使間で締結しなければなりません。36協定(特別条項付きを含む)にも労働時間の上限があるため、企業が守れているかを見ておきたいところです。
ブラック企業における長期労働時間は、従業員を過労死のリスクに晒し、仕事以外の私生活の時間がほぼない状態に追い込んでしまいます。事前に残業などの実態を知ることは難しいかもしれませんが、自身のためにも面接など社員と会話する機会があれば聞いておくことをおすすめします。
残業代が支払われない、または不適切に計算されるケースが頻繁に見られます。残業代および賃金の支払いをしない行為は、労働基準法第24条に違反するものであり、従業員の権利を侵害する行為です。
しかしブラック企業では、平然と賃金の未払いが起こっていることがあります。特にみなし残業制度(固定残業制)を掲げている企業で、具体的な労働時間や残業代を決めていないブラック企業もあります。
みなし残業制度であれば、募集要項などで月給と一緒に固定残業代と金額が記載されていることが一般的です。残業について具体的な数字が明確になっていない企業は、ブラック企業である可能性が高いでしょう。
ブラック企業の特徴としてよく挙げられるものの一つに、休日が少ないことがあります。厚生労働省とその外部企業が実施した調査では、年間休日の平均日数は1労働者あたり115.3日ほどですが、極端に少ない場合はブラック企業の可能性があるかもしれません。
年次有給休暇が取得させてもらないという特徴も、ブラック企業に当てはまるものです。また、企業は10日以上付与される労働者について、年間5日の年次有給休暇を取得させなければならないという決まりが労働基準法に明記されています。
そのため、明らかに上記日数を年間で取得させないような企業は、ブラック企業であるうえに法令違反をしている企業にも該当します。
労働基準法に定めのあるとおり、企業は最低賃金以上を労働者に対して支払う義務があります。しかし、ブラック企業ではその最低賃金水準すらも下回っていることがあります。
先述した残業代の未払いもしくは不当な金額で支給しているといったケースでは、時給換算したときに最低賃金以下となっていることがあります。その場合は労働基準法違反となります。
また、勤続年数や成績に応じてポジションが変わったのにもかかわらず、役職手当や給与アップなどが発生しない企業も、ブラック企業として認識されることが多いです。
しかし従業員側は、賃金よりも業務のやりがいを重視していることがあります。その事実を逆手に、最低賃金以下で長期間雇用するような「やりがい搾取」も特徴のひとつです。
企業のような組織の在り方では、上層部が絶対的権限をもつ「トップダウン型(上意下達)」と、従業員などの意見を尊重するような「ボトムアップ型(下意上達)」が存在します。
必ずしもどちらかを決めなければいけないということもなく、時期や規模感に合わせて運用することが理想です。しかし、ブラック企業は長年にわたってトップダウン型であることが多いです。
トップダウン型は「独裁的リーダーシップ」とも呼ばれることがあり、社長や上司の意見だけですべてが決定していきます。経営に関してなら問題ないかもしれませんが、ブラック企業では従業員が一方的に被害を受ける決定もされる可能性があります。
業務に対して、明らかに過剰なノルマなどが設定されているという点もブラック企業の特徴です。企業は従業員のパフォーマンスやスキルに合った業務を課すことが理想ですが、休日にまでもち込ませてしまうほどの仕事を与えるなどもブラック企業では見受けられます。
セクハラやパワハラなどの各種ハラスメント行為が見受けられるようなところは、ブラック企業と言えるでしょう。一般的なブラック企業の印象はこの特徴からくる部分が大きいと思います。
上記のような各種ハラスメント行為は、上司からの不適切な圧力や言動が日常的に見られるため精神的ストレスを引き起こします。そして職場の人間関係の悪化および従業員のモチベーション低下、離職率アップなどにも繋がってきます。
離職者および離職率が高い企業も、ブラック企業である可能性が高いです。企業の離職関連を知りたい場合は、下記の方法で調べることができます。
離職率に関して、入社して3年以内に退職している者の割合が25%〜30%ほどある企業は注意しておきたいところです。
企業は従業員を尊重して、ブラック企業にならないため努めることが大切です。具体的には以下のポイントをおさえて、より健康的な労働環境を目指しましょう。
特に労働時間については、法定労働時間や36協定などしっかり守るかつ「勤怠管理システム」などを導入して手動ではないような時間管理をすることがおすすめです。
また、定期的な健康診断の実施やメンタルブレイク防止策・メンタルヘルスケアの強化をおこない、従業員の健康を第一に考える社風を築くことも大切です。
内部通報制度や相談窓口を整備して、従業員からの意見や苦情を受け入れることも効果的でしょう。
ブラック企業は、従業員を劣悪な環境で働かせている企業のことです。たとえば、不当な長時間労働で酷使することや、休日を取得させない、ハラスメント行為をしている、賃金設定や支払いが曖昧であるなどの特徴があります。
ブラック企業のなかには、労働基準法を違反しているような企業が当たり前に存在していることもあります。募集要項などをよくチェックして、法律や四季報などの情報と照らし合わせながら見ていくと良いでしょう。
また、ブラック企業にならないためにまず法律に遵守した労働環境を最優先としてください。そのうえで従業員にとって不利益のないような組織体制や社内制度を整えることが重要です。
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