この記事でわかること
- 傷病手当金の支給条件・期間・金額
- 傷病手当金がもらえない3つのケース
- 傷病手当金の申請方法と必要書類
健康保険の被保険者が病気やケガにより仕事に就くことができず、会社から十分な報酬を得ることができない場合、傷病手当金を受給できます。
しかし傷病手当金を受給するには、条件を満たさなければいけません。この記事では傷病手当金の支給条件ともらえないケース、支給される場合の期間や金額など、人事・労務担当者が知っておくべき内容を中心に解説します。
労働者から傷病手当の受給希望があった際に適切な対応ができるよう、申請方法などを覚えていきましょう。
この記事でわかること
なんば社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士
https://www.namba-office.osaka.jp/
ワークスタイルコーディネーター。社会保険労務士
社会保険労務士の中でも10%に満たないと言われる助成金を専門に手掛けるの社会保険労務士。
目次
傷病手当金とは、病気やケガによって仕事に就くことができず、十分な報酬を得ることができない場合に被保険者とその家族の生活を保障する制度です。
会社を連続して休んだ3日間(待期期間)を経て、事業主から十分な報酬が受けられない場合に、傷病手当金が健康保険から支給されます。ただし、任意継続被保険者には支給されません。
傷病手当金は、支給開始日から最長1年6カ月の受給が可能です。
1年6カ月の期間中に復帰し再度欠勤した場合、復帰して給与支払がある期間も1年6カ月に含まれます。
傷病手当金をもらうためには、以下の条件をすべて満たさなければなりません。
傷病手当金の支給条件
なお、健康保険に加入している派遣社員やパート・アルバイトも傷病手当金の受給対象となります。支給条件をすべて満たし、3日間の待期期間を経たら、傷病手当金を受け取れます。
会社を退職をすると健康保険の被保険者資格を喪失してしまうため、原則として傷病手当金は支給されません。
しかし下記の条件を満たす方は、会社の退職後でも傷病手当金を受給できます。
退職後でも傷病手当金を受給できる条件
傷病手当金の受給金額は、以下の計算方法で算出されます。
被保険期間が12カ月に満たない労働者は、以下の平均額のいずれか低い額を算定します。
傷病手当金はその他の手当を受給している場合、支給が停止または調整される場合があります。
ただし、老齢(退職)年金・障害厚生年金それぞれ、年金額の360分の1が傷病手当金の日額よりも低い場合はその差額が支給されます。
休業補償給付や出産手当金も、支給日額が傷病手当基金よりも低い場合、その差額が支給されます。
傷病手当金の受給には、健康保険傷病手当金支給申請書(PDF)が必要です。
申請書は、被保険者記入用・事業主記入用・療養担当者(医師)記入用に分かれています。詳しい健康保険傷病手当金支給申請書の書き方については「傷病手当金支給申請書とは?」の記事をご参考ください。
前述した通り傷病手当金の申請には、計4枚の健康保険傷病手当金支給申請書の提出が必要です。
ただし、その他の書類も必要なケースがあります。下記の追加書類が必要なケースを確認し、書類の添付を忘れないようにしましょう。
支給開始日前の 12か月以内に転職した場合 |
前の勤務先の名称、所在地 および勤務先に使用されていた 期間がわかる書類 |
---|---|
障害厚生年金・ 障害手当金を受給している場合 |
年金給付額等がわかる書類 |
老齢退職年金を受給し、 資格喪失後に申請する場合 |
|
労災保険から休業補償給付を 受給している場合 |
休業補償給付支給決定通知書のコピー |
外傷の場合 | 負傷原因届 |
喧嘩や交通事故等、傷病が 第三者行為の場合 |
第三者の行為による傷病届 |
被保険者が死亡し、 相続人が傷病手当金を請求する場合 |
(除籍)戸籍謄本又は戸籍抄本 |
被保険者のマイナンバーを 記載した場合 |
本人確認書類(マイナンバーカード) マイナンバーカードを持っていない場合は、 住民票、住民票記載事項証明書、 運転免許証、パスポートのコピーなど |
傷病手当金の申請は、事業主がおこなうことが一般的です。そのため、傷病手当金の受給を希望する労働者に対して、事業主は適切に対応しなければなりません。
傷病手当金の申請には、以下のポイントに注意をしましょう。
組合健保への健康保険手続きにおいては、電子申請が利用できます。
特定の法人は、健康保険の一部手続きの電子申請が義務化されています。健保組合への電子申請は、APIに対応したソフトウェアの使用が不可欠でしょう。
傷病手当金の申請は、事業主がおこなうことが一般的です。被保険者が受給を希望した場合、傷病手当金支給申請書のダウンロードと事業主記入欄の記入をおこないます。
また、傷病手当金の申請は電子申請が可能です。
傷病手当金の申請は対象ではありませんが、特定の法人(大企業)は健康保険(けんぽ協会や健保組合) の一部手続きは電子申請が義務となっています。
今後、電子申請義務化は大企業に限らず、中小企業まで対象となる可能性があります。