悪天候時の在宅勤務ルール整備 人事が取るべき3ステップ
- 判断基準の明文化(台風・大雪・猛暑日の定義、発令警報の種類・レベルを具体的に規定する)
- 就業規則・テレワーク規程への追記(既存の在宅勤務規程に悪天候対応の条項を追加し、所轄の労働基準監督署へ届け出る)
- 全社周知と管理職への説明(ルールの周知徹底とともに、上司が裁量で判断しなくて済む体制を構築する)

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アンケート台風の日も、猛暑日も、大雪の日も「とにかく出社」それって、本当に正しい判断ですか?
正社員300名への調査で、93%の社員が悪天候時の在宅勤務を望んでいる一方、専用ルールがある企業はわずか7%という現実が明らかになりました。
コロナ禍以降、出社回帰の流れが強まる一方で、在宅勤務を「今より増やしたい」社員は45%に上り、現状と本音のギャップは広がっています。悪天候時に限れば希望者は93.3%に達するにもかかわらず、専用ルールを持つ企業はわずか7%。この「希望93%・整備7%」という乖離は、社員の安全と会社の信頼の両面から見過ごせない課題です。
本記事では調査データをもとに在宅勤務の実態を分析し、人事・労務担当者が今すぐ取り組むべき悪天候時のルール整備について、安全配慮義務の観点も交えながら実務的な示唆をお伝えします。
目次
テレワークが一般に定着してから数年が経ちますが、現場の実態はどのように変化しているのでしょうか。まず、正社員300名の現在の勤務スタイルを見てみましょう。

最多は「完全出社」(27.0%)で、「ほぼ出社(週1日未満の在宅)」(21.0%)と合わせた出社系スタイルは計48%を占めています。依然として出社が主流であることがわかります。
一方、「完全在宅(フルリモート)」(22.7%)、「週3日以上在宅」(15.0%)、「週1〜2日在宅」(14.3%)を合計した在宅系スタイルは計52%と過半数を超えており、社員の勤務スタイルは出社系・在宅系に二極化・多様化していることが浮き彫りになっています。
「完全出社+ほぼ出社」が計48%、「在宅系(完全在宅・週3日以上・週1〜2日)」が計52%と、職場の勤務スタイルは大きく二分されています。一社内においても多様なスタイルが混在する実態が明らかになりました。

最多は「変わらない」(43.7%)でしたが、注目すべきは「減った(会社の方針で)」が19.0%に上っている点です。この割合は「増えた」(15.7%)を上回っており、自らの意志によらず在宅機会が縮小した社員が一定数いることを示しています。コロナ禍以降の出社回帰傾向が数値にも表れている結果といえるでしょう。
また、「在宅勤務をしたことがない」層が19.7%(約2割)いることも見逃せません。在宅勤務の普及が語られる一方で、いまだ在宅勤務を経験していない社員も一定数存在しており、在宅勤務の浸透度には職場や業種によって大きな差があることがわかります。
実際に在宅勤務を経験している社員は、どのようなメリットやデメリットを感じているのでしょうか。社員の本音を見ていきます。

「通勤時間・コストの削減」が57.3%と圧倒的1位となりました。2位(16.3%)に20ポイント以上の差をつけており、在宅勤務の最大の恩恵として通勤からの解放を挙げる社員が突出していることがわかります。
注目したいのは4位にランクインした「猛暑・悪天候時の移動負担がない」(9.7%)です。通勤そのものへのリスク意識が高まっており、安全に関わる問題として在宅勤務の価値を捉えている社員が一定数いることが示されています。この意識は、後半で詳しく解説する悪天候時の在宅勤務希望(93.3%)とも深く関連する重要なシグナルといえます。

1位「コミュニケーションが取りにくい」(30.7%)と2位「仕事とプライベートの切り替えが難しい」(28.7%)が拮抗しており、この2つで全回答の約6割を占めています。在宅勤務における”つながりの難しさ”と”境界線の引きにくさ”が、多くの社員にとって共通の課題となっていることが明確に示されました。
一方、「特にデメリットを感じない」と答えた社員も13.7%存在しています。すでに在宅勤務の環境・ツール・習慣が整い、デメリットをほとんど意識しなくなった”在宅慣れ”した層も一定数いることがわかります。
コミュニケーション不足やオン・オフの切り替えといった課題に対応するには、テレワークの運用ルールを整備することが第一歩です。評価方法や勤怠管理のルールをあわせて見直すことで、在宅勤務の課題の多くは軽減できます。
現在の勤務スタイルに対し、社員は今後どのような働き方を望んでいるのでしょうか。そして、会社に対してどのような改善を求めているのかを見ていきます。

「今より増やしたい」と「現状のまま在宅勤務を希望」がともに45.0%と同率で並ぶ結果となりました。「今より減らしたい(出社を増やしたい)」(3.0%)と「在宅勤務はなくてよい」(7.0%)の合計はわずか10%にとどまっており、社員の9割が現行以上の在宅勤務を望んでいるという実態が明確になりました。
「増やしたい」45%+「現状のまま在宅勤務を希望」45%で合計90%。在宅勤務に否定的な社員は全体の10%に過ぎず、大多数の社員が在宅勤務の継続・拡充を望んでいます。出社回帰を進める企業は、この社員側の意識とのギャップを認識しておく必要があります。

会社への改善要望で最多となったのは「悪天候・災害時の在宅勤務ルールを整備してほしい」(21.8%)でした。2位の「通信費・光熱費などの手当を充実させてほしい」(21.2%)とほぼ同率であることを踏まえると、コスト面の充実と並んで、安全に関わるルール整備が社員の最大関心事のひとつであることがわかります。
また、6位にランクインした「在宅勤務時の評価基準を明確にしてほしい」(7.5%)も、人事実務上は重要なテーマです。在宅勤務が普及しても評価への不透明感が残る限り、社員の心理的安全性は高まりにくく、パフォーマンスや定着率にも影響しかねません。
今回の調査で、最も人事・労務担当者に直視してほしい結果が、悪天候時の在宅勤務に関するデータです。アンケートの数字をもとに、法的リスクと実務的対応の観点から問題提起をおこないます。

悪天候時の在宅勤務専用のルールや制度を設けている企業は、わずか7.0%にとどまっています。「上司の裁量で対応」(27.7%)、「特に対応していない」(24.0%)、「そもそも在宅勤務制度がない」(15.7%)を合わせると、制度的な手当てなしに運用している企業は合計67%以上に上ります。
社員の93.3%が悪天候時の在宅を望んでいるにもかかわらず、専用ルールが存在する企業は7%のみ。この86ポイント以上の落差は、単なる制度の未整備にとどまらず、社員の安全への意識と企業の対応の間に生じている深刻なギャップを示しています。

「強くそう思う」が73.3%と7割を超え、「ややそう思う」(20.0%)と合わせると、悪天候時に在宅勤務を希望する社員の割合は93.3%に達しました。これは単なる「できれば便利」という希望ではなく、安全への強い要求として受け止めるべき数値です。
メリットについての回答で「猛暑・悪天候時の移動負担がない」を挙げた社員が9.7%いたことを思い出してください。その数倍の93.3%が悪天候時の在宅を「強く」または「やや」望んでいるという事実は、通勤リスクへの意識が社員全体に広がっていることを示しています。
とくに猛暑日における通勤リスクは、2025年6月(令和7年6月)に職場の熱中症対策が罰則付きで義務化されたことからも、企業が真剣に向き合うべき問題として位置づけられています。「職場に着いてからの対策」だけでなく、「そもそも猛暑日に通勤させること自体のリスク」を考慮する視点が、人事・労務担当者にも求められる時代になっています。
悪天候時の在宅勤務をめぐるこのギャップは、「社員のわがまま」として片付けられる問題ではありません。人事・労務担当者が今すぐ制度整備に動くべき、法的・組織的・採用面の3つの理由があります。
猛暑日や暴風警報が発令された状況下での出社強要は、労働契約法第5条が定める「安全配慮義務」の観点でリスクになりうるという考え方が広がっています。2025年6月(令和7年6月)に職場の熱中症対策が罰則付きで義務化された流れを踏まえると、通勤中を含めた労働者の安全確保に対する企業責任の範囲は、今後さらに広がる可能性があります。「会社に着いてからが職場」という旧来の発想から、「通勤中のリスクも企業として考慮すべき」という認識への転換が求められています。
ルールや制度に関する設問では27.7%の企業が「上司の裁量で対応」していると回答しています。担当者によって判断基準が異なるこの運用は、同じ悪天候であっても部署や上司によって在宅の可否が変わるという不公平感を生みます。その結果、心理的安全性の低下や、許可しなかった上司へのハラスメント申告リスクに発展するケースも考えられます。ルールの明文化は、社員を守るだけでなく、管理職を守ることにもつながります。こうした上司依存の運用が続くと、業務時間外にも判断を求められる管理職の負担も増大します。つながらない権利の整備とあわせて、管理職が個人の裁量で抱え込まない仕組みづくりが求められます。
悪天候時の在宅ルールが整備されていない企業は、求職者・在籍社員双方に「社員の安全を軽視している」という印象を与えかねません。実際、先行企業のなかには「暴風警報・特別警報発令時は原則在宅勤務」を就業規則に明記し、採用ブランディングにも積極的に活用しているケースも出てきています。人材確保が経営課題となる時代において、制度の有無は競争力に直結します。制度への不満は表面化しにくいものの、GW明けや年度の節目に退職として表れることも少なくありません。日頃から社員が「この会社は自分の安全を考えてくれている」と感じられる環境づくりが、定着率の向上につながります。
悪天候時の在宅勤務ルール整備 人事が取るべき3ステップ
「社員が希望すればいつでもできる」「何かあれば上司が判断する」という属人的な運用から脱し、悪天候時の在宅勤務基準を就業規則に明文化することは、社員の安全を守るだけでなく、企業への信頼を高める取り組みでもあります。
制度整備はゼロから始める必要はありません。既存のテレワーク規程への一項追加から始められます。人事・労務担当者がその一歩を踏み出すことが、社員の安心と会社の信頼の両方につながります。
労務・人事・総務管理者の課題を解決するメディア「労務SEARCH(サーチ)」の編集部です。労働保険(労災保険/雇用保険)、社会保険、人事労務管理、マイナンバーなど皆様へ価値ある情報を発信続けてまいります。
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