この記事でわかること
- 労災保険法改正での変更点
- 特別加入制度の対象と保険料について
- 特別加入制度を利用する際の注意点
従来、労災保険は事業主より雇用されている労働者を対象とした保険制度でしたが、法改正により、一定の条件を満たした事業主などが加入できるようになりました。
労災保険の特別加入制度について解説します。
この記事でわかること
みのだ社会保険労務士事務所 社会保険労務士
https://www.minodashahorou.com/
大学卒業後、鉄鋼関連の企業に総合職として就職し、その後医療機関人事労務部門に転職。 約13年間人事労務部門で従業員約800名、新規採用者1,000名、退職者600名の労務、社会保険の相談対応にあたる。 社労士資格取得後にみのだ社会保険労務士事務所を開設し、独立。
目次
これまで労災保険は、労働者の業務または通勤による災害に対し、保険給付をおこなう制度として導入されていました。
特別加入制度の導入により、労働者以外でも、業務内容や災害の発生状況などから判断し、労働者に準じて保護することが適当であると認められた場合や、一定の条件を満たした人に対し、特別に任意加入が認められるようになりました。
一定の要件を満たした中小事業主や、事業主の事業にかかわる労働者以外の人は、労災保険の特別加入が認められます。
特別加入者として定められている「事業主など」とは、以下の要件に当てはまる場合をいいます。
▼「中小事業主などと認められる企業規模」
業種 | 労働者数 |
---|---|
金融業 保険業 不動産業 小売業 |
50人以下 |
卸売業 サービス |
100人以下 |
上記以外の業種 | 300人以下 |
中小事業主などが特別加入するためには、以下の要件を満たし、所轄の都道府県労働局長(以下「労働局長」)の承認を受ける必要があります。
年間保険料は、保険料算定基礎額(給付基礎日額×365)に、それぞれの事業に定められた保険料率を乗じて算出します。
例:給付基礎日額が、25,000円の建設事業の場合
25,000×365×保険料率(0.018)=164,250円
特別加入では、業務または通勤による災害を被った場合のうち、一定要件を満たすときに労災保険から給付が行われます。
特別加入の補償対象となる範囲は大きく3つに分けられています。
就業中の災害であり、以下のいずれかの場合に該当する場合、保険給付が行われます。
① 申請者の「業務内容」欄に記載された労働者の休憩時間を含む所定労働時間内に、特別加入申請した事業のためにする行為、および直接付帯する行為をおこなう場合(事業主の立場で行われる業務を除く)
② 労働者の時間外労働または休日労働に応じて就業する場合
③ ①または②に前後して行われる、準備や後始末行為業務を中小事業主などのみでおこなう場合
④ ①、②、③の就業時間内における事業場施設の利用中および事業場施設内で行動中の場合
⑤ 事業主の立場でおこなわれる業務を除く、事業の運営に直接必要な業務のために出張する場合
⑥ 通勤途上で、以下に該当する場合
・労働者の通勤用に事業主が提供する交通機関の利用中
・台風や火災など、突発的な事故による予定外の緊急の出勤途上
⑦ 事業の運営に直接必要な運動競技会、その他の行事について労働者を伴って出席する場合
事業主が同一でない二以上の事業における業務を要因とする傷病などが発生した場合であって、要件を満たしていれば、労働者と同様に保険給付がおこなわれます。
通勤災害については、一般の労働者の場合と同様に取り扱われます。
特別加入は、必ずしも受けられるものではなく、場合によっては制限されることや、保険給付を受けられない場合もあるため注意しましょう。
「粉じん作業をおこなう業務」や「鉛業務」など、特殊な薬品や工具を取り扱うような業務内容の場合、加入時に健康診断を受ける必要があります。
その際、健康診断の結果が以下のような場合には、特別加入が制限されます。
特別加入前に疾病が発症、または加入前の原因により発症したと認められる場合には、特別加入者としての保険給付を受けられないことがあります。
特別加入の注意点
労災保険は、業務中や通勤時に発生した災害において、労働者を守るための制度です。
事業主として、万が一に備えて労働者の身を守ることは当然ですが、自分自身と(労働者以外の)まわりの人を守るためにも、労災保険は備えておきましょう。