この記事でわかること
- 労災保険法改正での変更点
- 特別加入制度の対象と保険料について
- 特別加入制度を利用する際の注意点
この記事でわかること
従来、労災保険は事業主より雇用されている労働者を対象とした保険制度でしたが、法改正により、一定の条件を満たした事業主なども加入できるようになりました。この記事では、労災保険の特別加入制度について解説します。
目次
これまで労災保険は、労働者の業務または通勤による災害に対し、保険給付をおこなう制度として導入されていました。
しかし特別加入制度の導入により、労働者以外でも業務内容や災害の発生状況などから判断し、労働者に準じて保護することが適当であると認められた場合や、一定の条件を満たした人に対し、特別に任意加入が認められるようになりました。
つまり特別加入制度により、労働者以外でも一定の条件を満たした人は特別に加入が認められます。
一定の要件を満たした中小事業主や、事業主の事業にかかわる労働者以外の人は、労災保険の特別加入が認められます。労災保険の特別加入者として定められている「事業主など」とは、以下の要件に当てはまる場合をいいます。
▼中小事業主などと認められる企業規模
業種 | 労働者数 |
---|---|
金融業 保険業 不動産業 小売業 |
50人以下 |
卸売業 サービス |
100人以下 |
上記以外の業種 | 300人以下 |
中小事業主などが特別加入するためには、以下の要件を満たし、所轄の都道府県労働局長(以下「労働局長」)の承認を受ける必要があります。
年間保険料は、保険料算定基礎額(給付基礎日額×365)に、それぞれの事業に定められた保険料率を乗じて算出します。
年間保険料=保険料算定基礎額(給付基礎日額×365)×保険料率
たとえば給付基礎日額が25,000円の建設事業の場合「25,000×365×保険料率(0.018)」と計算し、年間保険料は164,250円になります。
特別加入では、業務または通勤による災害を被った場合のうち、一定要件を満たすときに労災保険から給付が行われます。特別加入の補償対象となる範囲は、大きく3つに分けられています。
就業中の災害であり、以下のいずれかの場合に該当する場合、保険給付が行われます。
事業主が同一でない二以上の事業における業務を要因とする傷病などが発生した場合であって、要件を満たしていれば、労働者と同様に保険給付がおこなわれます。
通勤災害については、一般の労働者の場合と同様に取り扱われます。
特別加入は、必ずしも受けられるものではなく、場合によっては制限されることや保険給付を受けられない場合もあるため注意しましょう。
「粉じん作業をおこなう業務」や「鉛業務」など、特殊な薬品や工具を取り扱うような業務内容の場合、加入時に健康診断を受ける必要があります。その際、健康診断の結果が以下のような場合には特別加入が制限されます。
特別加入前に疾病が発症、または加入前の原因により発症したと認められる場合には、特別加入者としての保険給付を受けられないことがあります。
特別加入の注意点
労災保険は、業務中や通勤時に発生した災害において、労働者を守るための制度です。事業主として、万が一に備えて労働者の身を守ることは当然ですが、自分自身と(労働者以外の)まわりの人を守るためにも、労災保険は備えておきましょう。
1984年生まれ。社会保険労務士。
都内医療機関において、約13年間人事労務部門において労働問題の相談(病院側・労働者側双方)や社会保険に関する相談を担ってきた。対応した医療従事者の数は1,000名以上。独立後は年金・医療保険に関する問題や労働法・働き方改革に関する実務相談を多く取り扱い、書籍や雑誌への寄稿を通して、多方面で講演・執筆活動中。
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