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労働災害補償保険法(労災保険)の基礎知識!誰のための制度?

労働災害補償保険法(労災保険)の基礎知識!誰のための制度?

労災保険とは、正式には労働者災害補償保険という制度のことです。業務中のケガ、通勤中のケガ、はては長時間労働による過労死の問題など、日頃耳にすることも多くなっている労災保険。これは、誰のためにある制度なのでしょうか?いまさら聞けないという方は少なくありません。

今回は人事担当者として知っておきたい、労災保険の基礎知識を解説します。

そもそも労災保険制度とは何のためにあるの?

労働者災害補償保険(労災保険)は、業務上の事由や通勤の際に生じた、労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して補償するための保険です。治療にかかる費用や仕事ができない間の補償、そして遺族への補償などがあります。

もし、労災保険という制度がないと、労働者が業務災害にあった場合、労働基準法の第75~83条の規定に基づき、事業主が自身の財産をもって補償をしなければなりません。そうなると次のようなリスクが生じるでしょう。

  1. 多額の補償金による倒産
  2. 労働者のリスク回避による中小企業での労働者離れ
  3. 万が一のリスクを避けるために雇用できなくなる
  4. 労働災害によって稼得能力を失った場合の貧困リスク

こうなると、企業の発展はもちろんのこと、労働者が安心して働くことができなくなってしまいます。これでは、社会全体の損失になりかねません。これらのリスクを避けるために、労災保険という制度が存在するのです。
ただ、制度があるからといって、労働者への安全配慮義務がなくなるわけではありませんし、万が一、労働災害を引き起こすと、労働者から労災保険の保険給付では填補できない部分について、民事損害賠償請求を受ける恐れがあります。また、社会的信用を失う要因にもなりますので、安全管理はしっかりと行う必要があるでしょう。

労災保険に入っていない事業所ってあるの!?

労働者災害補償保険法の第3条では「この法律においては、労働者を使用する事業を適用事業とする」と定められており、原則として労働者を使用している日本のほとんどすべての事業場は労災の適用を受けます。

また、万が一事業主が保険料を支払っていない状態であっても、労働者は労災の保護を受けることができます。そのため、払っていない場合でも労働者は労災保険の給付が行われ、後日国から事業主に対して求償権に基づき保険給付の一部または全部を請求される場合があります。

ちなみに、国家公務員と地方公務員については、別途「国家公務員災害補償法」「地方公務員災害補償法」という手厚い制度があることから、労災は適用されません。

また、常時5人未満の労働者を使用する個人の農林水産業は暫定任意適用事業となります。暫定任意適用事業においても、事業主に対して厚生労働大臣からの認可が下りれば、労災保険への加入が可能です。その際の労災保険料はすべて事業主による負担です。

労働者の同意も不要となっています。事業主は申請をする義務は「労働者の過半数が希望した場合のみあります。

労災保険の対象となる業務災害・通勤災害の事例

それでは、実際に労災認定を受けた事例をいくつかご紹介します。

例1)食中毒による労災

6名の漁船乗務員が、作業を終えた帰港途中に、船内にて夕食のフグ汁を食べて中毒症状を引き起こしました。船酔いで食べなかった1名は無事でしたが、残り5名が発症したものの、海上のため手当てできず、帰港後直ちに医師の手当てを受けました。しかし、重傷の1名が死亡したのです。船中での食事は、給食として慣習的に行われていました。フグの給食が社内での慣習になっていたことにより、この食事は給食として認められ、事業主の支配・管理の下で食べたと判断し、労災と判断されました。

例2)イレギュラーな出勤経路による労災

上司の命により、無届欠勤をしている従業員の事情を調査するため、通常より約30分早く「自宅公用外出」として自宅を出発しました。そして、自転車で欠勤者宅に向かう途中で電車にはねられ死亡した災害がありましたが、業務上として労災認定されています。
一般的に、通勤途上は事業主の支配下にはなく、業務遂行性は認められません。しかし、当事例では事業主の支配下にあり、業務遂行性が認められるため、通勤災害ではなく「業務上」災害と認定されました。

労災保険で良くある間違いをご紹介

事業主がやってしまいがちな間違い事例をご紹介します。

例1)「うちは、労災加入してないから労災にならないよ」

労災は、労働者を雇えば保険関係は成立します。届出は報告であるため、加入非加入を申請するものではありません。届出や納付を怠った場合は、保険給付費用の一部を国に納付しなくてはならないケースもありますが、労働者保護とは別問題です。

例2)「この程度のケガだと労災と認められないから申請しない」

認定は労基署長の権限であるため、会社が判断する問題ではありません。労災隠しは犯罪です。

例3)「会社に届け出ている通勤経路と異なるため通勤災害ではない」

届出の経路以外でも合理的な経路及び方法で通勤すれば通勤経路となりえます。例えば通勤経路に公共交通機関を利用する届け出をしているにもかかわらず自転車通勤をしており、交通費を詐取されていたことがわかった場合は、通勤災害の申請を出しつつ、別問題として社内での懲戒処分、詐取された交通費の返還請求、詐欺罪での刑事告発などを検討することとなります。

例4)「現場の工場長が業務中に事故にあったけど、取締役の肩書を持っているから労災ではないよね?」

労災の保険給付は肩書に左右されるものではありません。実質的に労働者とされれば保険給付を受ける権利があります。

まとめ

労災保険は、万が一の労働災害の場合に労働者やその家族を守るために存在する制度ですが、最初に述べたとおり、事業主の損害賠償責任を軽減させる役割をも担っている、社会全体のための公的保険制度です。

労働者が労災事故にあった場合には、たとえ事業主が保険料の納付を怠っていても補償を受けることができるでしょう。また、原則として労働者を雇用していれば、届出義務及び保険料納付義務が生じますので、万が一届出していない場合や保険料の納付をしていない場合は、早めに届出・納付をするようにしましょう。

発生した災害に関して、手続きや対応方法などがわからない場合は、専門家である社会保険労務士に相談をしてみてはいかがでしょうか。

佐藤 安弘|ワイエス社会保険労務士事務所

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