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労災の申請手続きを徹底解説!流れ、必要書類、会社がすべき対応とは

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労働災害が発生した際、全ての労働者の加入が義務付けられている「労災保険」から必要な給付を受けられます。

万が一の時に備えて、人事労務担当者は労災の申請の流れを正しく把握しておきましょう。

この記事では、労災の申請手続きの流れ・必要書類、労災事故によるケガ・病気などの治療のため使用することになる、様式5号と様式7号について解説していきます。

こんな疑問を解決します

  • 労災の申請手続きの流れ
  • 療養補償給付の受給に必要な様式5号と様式7号の違い
  • 労働災害発生時に事業主がすべき対応
監修者
岡 佳伸

社会保険労務士法人岡佳伸事務所 代表 特定社会保険労務士
https://oka-sr.jp/

開業社会保険労務士として活躍。各種講演会(東京商工会議所練馬支部、中央支部、公益社団法人東京ビルメンテナンス協会)講師及び各種WEB記事執筆、日経新聞、女性セブン等に取材記事掲載、NHKあさイチ2020年12月21日、2021年3月10日にTVスタジオ出演。
特定社会保険労務士、キャリアコンサルタント、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。

労災の申請手続き

労災の申請手続きの流れ

労災保険の手続き

労働災害が発生してしまった場合、事業主(使用者)は適切に対応・処理しなければなりません。

労災保険の申請手続きは、原則的に労災に遭った本人またはその家族がおこないます。しかし従業員の負担を避けるために、企業が手続きを代行することも可能です(多くの企業が手続きを代行しています)。

労災の申請手続きは、一般的に以下の流れでおこなわれます。

労災の申請手続きの流れ

  1. 労働者から会社に労働災害が発生した旨を報告
  2. 労働基準監督署長宛に必要書類の提出
  3. 労働基準監督署の調査への対応
  4. 保険金の給付

労災の申請手続きに必要な書類

労災の申請手続きに必要な書類は、複数あります。申請する給付金に応じて書類を準備・記入の上、各機関へ提出しましょう。

給付の種類 書類 提出先
療養補償給付
(労働保険指定医療機関
で受診した場合)
療養補償給付たる
療養の費用請求書
(様式第5号)
受診した医療機関
療養補償給付
(労働保険指定医療機関以外
で受診した場合)1
療養補償給付たる
療養の費用請求書
(様式第7号)
管轄する
労働基準監督署長
休業補償 休業補償給付支給請求書
障害補償給付 障害補償給付支給請求書2
遺族補償給付 遺族補償年金支給請求書請求書
遺族補償一時金支給請求書
遺族補償年金前払一時金請求書
葬祭料請求 葬祭料請求書
傷病補償年金 傷病の状態等に関する届
介護補償給付 介護給付支給請求書
介護補償給付支給請求書

1 労働保険指定医療機関でない医療機関で受診した場合、一旦治療費を立て替え支払う必要があります
2 業務災害の場合は様式第10号、通勤災害の場合は様式第16号の7

労災事故の治療の際に必要な書類「様式5号」とは?

労働者が勤務中に事故に遭い、治療を受ける場合「療養補償たる療養の給付請求(様式第5号)」の提出が必要です。

様式第5号は労災保険を使った治療において、基本の書類となります。必要事項を記入し労災指定の医療機関の窓口へ提出すれば療養補償給付を受けられ、費用の負担なしに診察・治療を受けることができます

記入例に従って、必要項目を記入しましょう。

治療の際に必要な様式5号とは

様式5号の記入項目

  1. 労働保険番号
  2. 労働者の性別・生年月日・負傷または発病年月日
  3. 労働者の氏名・住所・年齢・職種
  4. 負傷または発病の時刻・災害発生事実を確認した人の職名と氏名
  5. 事故の詳細
  6. 事業所の名称・所在地・事業主・押印(事業主の証明)
  7. 管轄する労働基準監督署名を記入
  8. 申請者および事業主(使用者)の押印(署名でも可)

「療養補償たる療養の給付請求(様式第5号)」は労働基準監督署で入手できるほか、厚生労働省のホームページからダウンロード・印刷した用紙も使用できます。

なお医療機関については、労働災害保険指定医療機関以外での治療は手続きが煩雑になる恐れがあるため、指定医療機関で治療を受けてもらいましょう。

受診の際は、申請書内にある「医療機関記入欄」に必要情報(指定病院の名称・所在地、傷病の部位および状態)を記入してもらいます。

治療の際に必要な様式5号とは

労災指定病院以外で治療する際に必要な書類「様式7号」とは?

立替払いの際に必要な7号様式とは?

従業員に労働災害指定医療機関以外の場所で治療を受けさせる場合、療養補償給付を受けるためにも「療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号)」が必要です。

様式7号と様式5号の大きな違いは、下記の2点があります。

様式7号の特徴

  • 医療機関の窓口において労働者は一度治療費を立て替えなければならない
  • 治療後に様式7号を労働基準監督署に提出する必要がある

「療養補償給付たる療養の費用請求書(様式7号)」に必要事項を記入し、治療の際に医療機関の窓口へと提出します。

所定欄に医療機関の押印と必要事項の記入を確認したら、会計を済ませてもらいます。会計の際には、必ず領収書を受け取るようにしてもらいましょう。

その後、労働基準監督署の窓口に様式7号と領収書を提出してもらえば、従業員の口座へ負担した治療費(療養補償給付)が振り込まれます。

ただし窓口で一度立て替える治療費は、健康保険が適用されず全額負担となります。支出する治療費が高額になることも伝えておきましょう。

労災事故なのに健康保険証を使ってしまった!対処法は?

労災事故によるケガや病気などの治療を受け、誤って健康保険証を使って会計を済ませてしまった場合は、診察後すぐに医療機関へ連絡しましょう

医療機関によっては、労災保険扱いに切り替えてくれる場合があるので、まずは治療した医療機関への連絡を促しましょう。労災保険扱いに切り替えられたら、必要な書類を提出します。

様式5号では治療費を返還してもらえますが、様式7号の場合は健康保険で免除された費用(治療費の7割)を一旦支払う必要があり、後日返還してもらう流れとなります。

また、診察から時間が空いてしまうと、医療機関での切り替えができなくなってしまいます。その場合は全国健康保険協会や各健康保険組合へ連絡し、健康保険ではなく労災保険扱いである旨を伝えるように指示しましょう。

その後、免除された費用を還付するための書類が届きます。書類を提出すれば、従業員の口座へ治療費が全額返還されます。

しかし、手続きから治療費の返還まで約2~3カ月かかってしまうため、間違いに気付いたらすぐに医療機関に連絡してもらいましょう。

労働災害発生時の会社がおこなう対応・報告義務とは

労働災害に関わる補償は、企業が全額負担することが義務付けられていますが、従業員が1人でもいる事業所は労災保険の加入が義務のため、補償に関わる費用負担は免除されます。

しかし労働災害が発生した際、企業は以下の3つの対応をおこなわなければなりません。

1. 待期期間の賃金支払い

休業補償給付を申請する際の待期期間である3日間の賃金は、企業が補償しなければなりません。

休業補償給付金制度では平均賃金の60%を支払うこととなっていますが、従業員の心理的負担を減らすために全額支給する企業も少なくありません。

2. 労働者死傷病報告書の提出

労働災害により従業員の死亡または休業が発生した場合、速やかに労働者死傷病報告書の提出が求められます。管轄する労働基準監督署に報告・提出しましょう。

3. 安全衛生管理

事業主(使用者)には労働者の安全を確保する義務があり、労働安全衛生法に基づく安全衛生管理責任を果たさなければなりません。

労災の有無にかかわらず、不備がある場合は刑事責任にも問われるため、いま一度確認しておきましょう。

労働災害の種類

労働災害には

  1. 業務災害
  2. 通勤災害
  3. 第三者行為災害

の3種類があり、それぞれ認定要件が異なります。

業務災害(業務中の負傷、病気、死亡などの業務災害)

業務災害は、業務との因果関係が認められた際に認定されます。

通勤災害(通勤時に起きた災害)

通勤災害は、会社に報告している正しい経路と方法をとっていることが認定要件です。

通勤災害では、ふさわしくない経路では認定されません。
電車通勤と申告しているに関わらず、自転車通勤で事故に遭うなど

また会社が緊急と認める経路の場合、通勤災害として認定されます(緊急を要する案件のため、タクシーでの移動中に事故に遭うなど)。

第三者行為災害(業務や通勤以外で、第三者の行為によって生じた災害)

第三者行為災害とは、通勤中・業務中などの事故において、事故の相手方に加害者が存在する災害を指します。

そのため、第三者行為災害は労災保険の対象ではない第三者(事故を起こした相手側)に、損害賠償責任が発生した際に認定されます。

【第三者行為災害の事例】
交通事故や業務遂行中に受ける暴行被害(業務スタッフが安全上の注意喚起をおこなったところ、逆上した顧客から暴力を振るわれるなど)など業務に起因して、意図せず発生した災害が対象となります。

第三者行為災害が発生した際、被害者(社員)には「加害者となる第三者に対する損害賠償請求権」と「労災保険の給付請求権」の両方を取得できる状況になります。

しかし、労働者災害補償保険法によって、労災保険給付と民事損害賠償との支払いが重複しないように「求償」と「控除」というルールを設定しています。

求償とは、政府が被災者の損害賠償請求権を取得し、第三者(保険会社など)に行使する措置 (本来、加害者が支払うべき損害賠償を政府が肩代わりし、被害者に労災保険給付として支払う)。

控除とは、労災保険給付よりも先に第三者による損害賠償が先におこなわれた際に、その価額の限度で労災保険給付が控除する措置。

まとめ

最後に改めて、労災の申請手続きをまとめます。

労災の申請手続きの流れ

  1. 労働者から会社へ労働災害の発生報告
  2. 労働基準監督署署長宛に必要書類を提出
  3. 労働基準監督署の調査への対応
  4. 保険金の給付

労働災害には「業務災害」「通勤災害」「第三者行為災害」の3つがあり、事業主は労働災害が発生した際、待期期間の賃金補償、労働者死傷病報告の提出が義務です。

また、安全衛生管理責任を果たさなければならない。

労災認定がされた場合、休業3日目までは事業者から平均賃金の60%が支払われ、4日目以降は1日につき、給付基礎日額の60%が休業補償給付として支給される。また、社会復帰支援のための「休業特別支援金(給付基礎日額の20%)」も受け取れる。

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