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労災保険とは? 手続きの流れや必要書類、休業補償の適用条件についても徹底解説。

労災の申請手続きを徹底解説!流れ、必要書類、会社がすべき対応とは

監修者:岡 佳伸 社会保険労務士法人|岡佳伸事務所
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こんな疑問を解決します

  • 労災の申請手続きの流れ
  • 療養補償給付の受給に必要な様式5号と様式7号の違い
  • 労働災害発生時に事業主がすべき対応

労働災害が発生した際、全ての労働者の加入が義務付けられている「労災保険」から必要な給付を受けられます。

万が一の時に備えて、人事労務担当者は労災の申請の流れを正しく把握しておきましょう。

この記事では、労災の申請手続きの流れ・必要書類、労災事故によるケガ・病気などの治療のため使用することになる、様式5号と様式7号について解説していきます。

労災の申請手続きの流れ

労働災害が発生してしまった場合、事業主(使用者)は適切に対応・処理しなければなりません。

労災保険の申請手続きは、原則的に労災に遭った本人またはその家族がおこないます。しかし従業員の負担を避けるために、企業が手続きを代行することも可能です(多くの企業が手続きを代行しています)。

労災の申請手続きの流れは以下の4ステップです。

上記の流れに沿って労災手続きをおこないましょう。

1.労働者から会社に労働災害が発生した旨を報告

まず労働者は労働災害に遭った場合、会社にその旨を報告しなければなりません。スムーズに申請手続きをおこなうためにも、具体的にどのような状況で労働災害が発生したのかを教えてもらいましょう。

また病気やケガなどを早期に改善するためにも、できる限り早く病院で受診するように伝えることも重要です。

早期に診察を受けることは、労働者の治療だけでなく労災保険の給付を適切に受給することにもつながります。あらかじめ病気やケガなどを治療するための診察料・通院費などの費用は労災保険によって補填されることを伝えておきましょう。

2.労働災害の請求書を作成

次に労働災害の請求書を作成します。請求書は会社の所在地を管理する労働基準監督署や、厚生労働省のWebサイトからダウンロード可能です。

労災の請求書は原則被災者が作成する必要がありますが、会社には労災申請時の助力義務があるため、一連の請求書の作成を会社に任せることもできます。

また、各請求書には事業主証明欄があり、そちらの箇所は会社による記入が必須です。請求書に記載されている内容(労働災害の発生状況など)に問題がないかを必ず確認して署名しましょう。

詳しい記入例は以下の「労災事故の治療の際に必要な書類「様式5号」とは?」と「労災指定病院以外で治療する際に必要な書類「様式7号」とは?」をご覧ください。

3.労働基準監督署長に必要書類を提出

騒動災害の請求書を確認したあとは、必要書類とともに労働基準監督署長に提出します。労災の申請手続きにおける必要書類は、給付の種類によって異なります。具体的には以下のとおりです

給付の種類 書類 提出先
療養補償給付
(労働保険指定医療機関
で受診した場合)
療養補償給付たる
療養の費用請求書
(様式第5号)
受診した医療機関
療養補償給付
(労働保険指定医療機関以外
で受診した場合)1
療養補償給付たる
療養の費用請求書
(様式第7号)
管轄する
労働基準監督署長
休業補償 休業補償給付支給請求書
障害補償給付 障害補償給付支給請求書2
遺族補償給付 遺族補償年金支給請求書請求書
遺族補償一時金支給請求書
遺族補償年金前払一時金請求書
葬祭料請求 葬祭料請求書
傷病補償年金 傷病の状態等に関する届
介護補償給付 介護給付支給請求書
介護補償給付支給請求書

1 労働保険指定医療機関でない医療機関で受診した場合、一旦治療費を立て替え支払う必要があります
2 業務災害の場合は様式第10号、通勤災害の場合は様式第16号の7

4.労働基準監督署長の調査開始

必要書類を提出したあとは、労働基準監督署長によって調査が開始されます。労働災害として認められたときのみ、労働者に保険給付がおこなわれる仕組みです。

労働災害として認定されず、その内容に不服がある場合は再審査を請求することも可能です。再審査請求の期限は審査結果の通知書が送付された日の翌日から起算し、60以内となっているため注意しましょう。

労災における保険給付・年金の種類

労災における保険給付・年金の種類は以下があります。

療養(補償)等給付

労災による傷病で療養を必要とする場合の給付です。医療費や薬剤費などの現物給付と、入院食費や交通費などの現金支給があります。

休業(補償)等給付

労災によって病気やケガを負い、働き続けることが困難となった場合の給付です。休業期間中は賃金の一部が補償され、賃金が受け取れなくなった日の第4日以降から支給が開始されます。

傷病(補償)等年金

労災が原因で療養を開始し、1年6カ月を経過しても治癒が完了しない場合に年金として支給されるものです。傷病等級表に定める傷病等級(第1〜第3級)に該当している必要があります。

障害(補償)等年金・一時金

労災によって一定以上の障害が残った場合の年金・一時金です。

障害等級 支給額
1級~7級 給付基礎日額の313日~131日分の金額が年金として支給
8級~14級 給付基礎日額の503日~56日分の金額が一時金として一回のみ支給

障害等級1級~7級に該当する場合は給付基礎日額の313日~131日分の金額が年金として支給され、8~14級までの場合は給付基礎日額の503日~56日分の金額が一時金として一回のみ支給されます。

遺族(補償)等年金・一時金

労災が原因で亡くなった場合に遺族に対して支給される年金・一時金です。遺族(補償)年金の受給が決まった遺族は、給付基礎日額の1,000日分の一時金を受給できます。

葬祭料等(葬祭給付)

労災によって亡くなった場合にお葬式などにかかる葬祭料を補償するものです。葬儀を執りおこなった者に対し、315,000円+給付基礎日額の30日分、または給付基礎日額60日分でどちらか高い方が支給されます。

介護(補償)等給付

労災によって労働者が介護を受ける状態となった場合に支給されるものです。障害(補償)年金または傷病(補償)年金を受ける権利があると支給対象となる可能性があります。

二次健康診断等給付

職場の定期的な健康診断などにおいて健康状態に異常がみられた場合、一年度に一回のみ無料で二次健康診断・特定保健指導を受けられる制度です。脳血管・心臓の状態の把握や、脳・心臓疾患の発症のために請求できます。

労災事故の治療の際に必要な書類「様式5号」とは?

労働者が勤務中に事故に遭い、治療を受ける場合「療養補償たる療養の給付請求(様式第5号)」の提出が必要です。

様式第5号は労災保険を使った治療において、基本の書類となります。必要事項を記入し労災指定の医療機関の窓口へ提出すれば療養補償給付を受けられ、費用の負担なしに診察・治療を受けることができます

記入例に従って、必要項目を記入しましょう。

治療の際に必要な様式5号とは

様式5号の記入項目

  1. 労働保険番号
  2. 労働者の性別・生年月日・負傷または発病年月日
  3. 労働者の氏名・住所・年齢・職種
  4. 負傷または発病の時刻・災害発生事実を確認した人の職名と氏名
  5. 事故の詳細
  6. 事業所の名称・所在地・事業主・押印(事業主の証明)
  7. 管轄する労働基準監督署名を記入
  8. 申請者および事業主(使用者)の押印(署名でも可)

「療養補償たる療養の給付請求(様式第5号)」は労働基準監督署で入手できるほか、厚生労働省のホームページからダウンロード・印刷した用紙も使用できます。

なお医療機関については、労働災害保険指定医療機関以外での治療は手続きが煩雑になる恐れがあるため、指定医療機関で治療を受けてもらいましょう。

受診の際は、申請書内にある「医療機関記入欄」に必要情報(指定病院の名称・所在地、傷病の部位および状態)を記入してもらいます。

治療の際に必要な様式5号とは

労災指定病院以外で治療する際に必要な書類「様式7号」とは?

従業員に労働災害指定医療機関以外の場所で治療を受けさせる場合、療養補償給付を受けるためにも「療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号)」が必要です。

様式7号と様式5号の大きな違いは、下記の2点があります。

様式7号の特徴

  • 医療機関の窓口において労働者は一度治療費を立て替えなければならない
  • 治療後に様式7号を労働基準監督署に提出する必要がある

「療養補償給付たる療養の費用請求書(様式7号)」に必要事項を記入し、治療の際に医療機関の窓口へと提出します。

所定欄に医療機関の押印と必要事項の記入を確認したら、会計を済ませてもらいます。会計の際には、必ず領収書を受け取るようにしてもらいましょう。

その後、労働基準監督署の窓口に様式7号と領収書を提出してもらえば、従業員の口座へ負担した治療費(療養補償給付)が振り込まれます。ただし窓口で一度立て替える治療費は、健康保険が適用されず全額負担となります。支出する治療費が高額になることも伝えておきましょう。

労災申請にまつわるよくあるトラブルと対処法

労災申請にまつわるよくあるトラブルと対処法は以下のとおりです。

会社が労災保険へ加入していない

労災保険へは「あとから」加入することが可能です。会社が労災保険に加入していなかった場合、労働者が自ら労働基準監督署に対して手続きをおこなってください。

個人で労災保険加入の手続きをおこなった場合でも、労災が認定されると会社が申請した場合と同様に給付を受け取れます。また労災保険に未加入だった場合、会社側はあとからの加入手続きが必要です。

労働者と保険関係が成立した日までさかのぼって加入する場合は、必要書類の提出時に過去に労働災害が発生していないか労働基準監督署から確認される可能性があります。

手続きの期限を過ぎてしまう

労災保険の給付の種類によっては、2~5年の申請期限があります。各給付の種類と期限は以下のとおりです。

労災保険給付 申請期限
療養(補償)等給付 費用を支出した翌日から2年
休業(補償)等給付 賃金を受け取れなかった日から2年
傷病(補償)等年金 期限なし
障害(補償)等年金・
一時金
治療が終了(症状固定)した日の翌日から5年
遺族(補償)等年金・
一時金
労働者が亡くなった日の翌日から5年
葬祭料等(葬祭給付) 労働者が亡くなった日の翌日から5年
介護(補償)等給付 介護を受け始めた月の翌月の1日から2年(月単位の支給となるためほかの給付と起算日が異なる)
二次健康診断等給付 定期健康診断の受診日から3カ月

手続きの期限が過ぎてしまうと、あとから請求することはできません。労働者が労災保険の給付を受け取れるよう期限を厳守しましょう。

給付の金額が合わない

労災保険の給付金額が合わない場合、労働者から不足分を請求できます。使用者責任や安全配慮義務違反を問われるリスクがあるため、労災の保険料は入念に確認しておきましょう。

退職後に労災請求がおこなわれる

労災の保険給付は申請手続きの期限が超過していない限り、労働者が退職したあとでも請求できる場合があります。

労働災害補償保険法第12条の5には保険給付の権利が退職によって変更されないことが記載されています。そのため過去に勤めていた労働者が請求をおこなった場合でも必ず対応しましょう。

労災事故なのに健康保険証を使ってしまった

労災事故によるケガや病気などの治療を受け、誤って健康保険証を使って会計を済ませてしまった場合は、診察後すぐに医療機関へ連絡しましょう

医療機関によっては、労災保険扱いに切り替えてくれる場合があるので、まずは治療した医療機関への連絡を促しましょう。労災保険扱いに切り替えられたら、必要な書類を提出します。

様式5号では治療費を返還してもらえますが、様式7号の場合は健康保険で免除された費用(治療費の7割)を一旦支払う必要があり、後日返還してもらう流れとなります。

また、診察から時間が空いてしまうと、医療機関での切り替えができなくなってしまいます。その場合は全国健康保険協会や各健康保険組合へ連絡し、健康保険ではなく労災保険扱いである旨を伝えるように指示しましょう。

その後、免除された費用を還付するための書類が届きます。書類を提出すれば、従業員の口座へ治療費が全額返還されます。

しかし、手続きから治療費の返還まで約2~3カ月かかってしまうため、間違いに気付いたらすぐに医療機関に連絡してもらいましょう。

労働災害発生時の会社がおこなう対応・報告義務とは

労働災害に関わる補償は、企業が全額負担することが義務付けられていますが、従業員が1人でもいる事業所は労災保険の加入が義務のため、補償に関わる費用負担は免除されます。

しかし労働災害が発生した際、企業は以下の3つの対応をおこなわなければなりません。

1. 待期期間の賃金支払い

休業補償給付を申請する際の待期期間である3日間の賃金は、企業が補償しなければなりません。

休業補償給付金制度では平均賃金の60%を支払うこととなっていますが、従業員の心理的負担を減らすために全額支給する企業も少なくありません。

2. 労働者死傷病報告書の提出

労働災害により従業員の死亡または休業が発生した場合、速やかに労働者死傷病報告書の提出が求められます。管轄する労働基準監督署に報告・提出しましょう。

3. 安全衛生管理

事業主(使用者)には労働者の安全を確保する義務があり、労働安全衛生法に基づく安全衛生管理責任を果たさなければなりません。

労災の有無にかかわらず、不備がある場合は刑事責任にも問われるため、いま一度確認しておきましょう。

労働災害の種類

労働災害には

  1. 業務災害
  2. 通勤災害
  3. 第三者行為災害

の3種類があり、それぞれ認定要件が異なります。

業務災害(業務中の負傷、病気、死亡などの業務災害)

業務災害は、業務との因果関係が認められた際に認定されます。

通勤災害(通勤時に起きた災害)

通勤災害は、会社に報告している正しい経路と方法をとっていることが認定要件です。

通勤災害では、ふさわしくない経路では認定されません。
電車通勤と申告しているに関わらず、自転車通勤で事故に遭うなど

また会社が緊急と認める経路の場合、通勤災害として認定されます(緊急を要する案件のため、タクシーでの移動中に事故に遭うなど)。

第三者行為災害(業務や通勤以外で、第三者の行為によって生じた災害)

第三者行為災害とは、通勤中・業務中などの事故において、事故の相手方に加害者が存在する災害を指します。

そのため、第三者行為災害は労災保険の対象ではない第三者(事故を起こした相手側)に、損害賠償責任が発生した際に認定されます。

第三者行為災害の事例

交通事故や業務遂行中に受ける暴行被害(業務スタッフが安全上の注意喚起をおこなったところ、逆上した顧客から暴力を振るわれるなど)など業務に起因して、意図せず発生した災害が対象となります。

第三者行為災害が発生した際、被害者(社員)には「加害者となる第三者に対する損害賠償請求権」と「労災保険の給付請求権」の両方を取得できる状況になります。

しかし、労働者災害補償保険法によって、労災保険給付と民事損害賠償との支払いが重複しないように「求償」と「控除」というルールを設定しています。

求償とは、政府が被災者の損害賠償請求権を取得し、第三者(保険会社など)に行使する措置 (本来、加害者が支払うべき損害賠償を政府が肩代わりし、被害者に労災保険給付として支払う)。

控除とは、労災保険給付よりも先に第三者による損害賠償が先におこなわれた際に、その価額の限度で労災保険給付が控除する措置。


まとめ

最後に改めて、労災の申請手続きをまとめます。

労災の申請手続きの流れ

  1. 労働者から会社へ労働災害の発生報告
  2. 労働基準監督署署長宛に必要書類を提出
  3. 労働基準監督署の調査への対応
  4. 保険金の給付

労働災害には「業務災害」「通勤災害」「第三者行為災害」の3つがあり、事業主は労働災害が発生した際、待期期間の賃金補償、労働者死傷病報告の提出が義務です。

また、安全衛生管理責任を果たさなければならない。

労災認定がされた場合、休業3日目までは事業者から平均賃金の60%が支払われ、4日目以降は1日につき、給付基礎日額の60%が休業補償給付として支給される。また、社会復帰支援のための「休業特別支援金(給付基礎日額の20%)」も受け取れる。

社会保険労務士法人|岡佳伸事務所 監修者岡 佳伸

社会保険労務士法人|岡佳伸事務所の代表、開業社会保険労務士として活躍。各種講演会の講師および各種WEB記事執筆。日本経済新聞女性セブン等に取材記事掲載。2020年12月21日、2021年3月10日にあさイチ(NHK)にも出演。
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