この記事でわかること
- 労災保険の加入条件
- 雇用保険の被保険者を雇ったときの手続き
- 法人の場合の社会保険手続き
この記事でわかること
事業主のみなさま、労災保険の手続きはお済ですか?
「うちは忙しいときのアルバイトしかいない・・・」と言っても、労働者を一人以上雇用した場合は、原則労災保険の手続きが必要になります。また、週20時間以上雇用する従業員がいる場合は、あわせて雇用保険の手続きも必要です。
この労災保険と雇用保険の手続きは、あわせて「労働保険の設立手続き」と言います。この記事ではそんな労働保険の設立手続きについて、ポイントを詳しく解説していきます。
目次
雇用形態にかかわらず、すべての労働者が労災保険の適用対象です。事業主には労災保険への加入が義務づけられています。
労働者災害補償保険法 第3条「この法律においては、労働者を使用する事業を適用事業とする」と規定。
【参考】労働者災害補償保険法(◆昭和22年04月07日法律第50号)
労災保険と雇用保険をまとめて「労働保険」と呼ばれています。労働保険である労災保険と雇用保険の加入条件の違いは、以下の通りです。
保険名称 | 加入条件 |
---|---|
労災保険 | 雇用形態に関わらず、パート・アルバイト含むすべての労働者は加入義務がある |
雇用保険 | 1週間の所定労働時間が20時間以上かつ、31日以上の雇用見込みがある労働者(一部、学生でない) |
しかし中には、下記のとおり労災保険の適用外・また加入は任意適用となる事業もあります。
適応外事業 | 国が直接おこなう直営事業で、国有林野・印刷・造幣の3つの事業に関しては別の国家公務員(地方公務員)災害補償法などの適用を受けることになるため、労災保険への加入はできません。 |
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暫定任意適用事業 | 個人経営で一定の条件にあてはまる農林水産業となります。 暫定任意適用事業も厚生労働大臣からの認可を受ければ、労災保険への加入が可能(保険料はすべて事業主負担) |
労働基準法では、労働災害が起こった場合には、事業主が療養の費用などを負担しなければならないこととされています。しかし、これでは事業主の経済的負担が大きくなりすぎます。
そこで、本来事業主が負担すべき療養の費用などを労災保険から被災した従業員に給付がおこなわれることによって、事業主の負担を軽減する役割があります。
労働保険制度は、企業の持続可能な発展や労働者が安心して働ける職場環境の維持に欠かせない制度といえます。こうした労働トラブルは社会的信用の低下、ひいては企業価値の低下のきっかけとなるため、安全管理はしっかりとおこなわなければなりません。
労災保険は労働者を対象とした保険制度で、事業主・自営業者は原則労災保険に加入できません。
しかし、事業主や自営業者でも一定の条件を満たすことで「特別加入制度」を利用でき、労災保険に任意で加入できます。特別加入制度の対象者は、大きく以下4つに大別されます。
それぞれが対象者として認められる詳しい条件は、下記の表にまとめました。
対象者 | 対象者として認められる条件 |
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中小事業主など |
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一人親方など | 次の1〜11の事業を、常態として労働者を使用しないでおこなう者。
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特定作業従事者 | 次のいずれかに当てはまるもの。
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海外派遣者 | 次のいずれかに当てはまるもの。
|
事業主は、31日以上の雇用見込みがあり、週の労働時間が20時間を超える労働者に対し、雇用保険に加入させる義務があります。
事業所が初めて”雇用保険の適用事業所”になる場合には、以下の書類を労働者を雇入れた日から10日以内に、公共職業安定所に提出する必要があります。
2回目以降の雇入れで雇用保険に該当する労働者を雇入れた場合には「雇用保険被保険者資格取得届」を、雇入れ日の翌月10日までに提出する義務があります。
雇用保険被保険者資格取得届を提出すると、
が送られてきます。
雇用保険被保険者証は労働者が失業し、雇用保険の手続きを行う場合に必要になってくるので大切に保管するように説明してください。
公的年金制度である厚生年金保険と、公的医療保険制度である健康保険をまとめたものを一般的に「社会保険」と呼んでいます。
この社会保険は正社員だけでなく、パートやアルバイトの方でもフルタイム労働者と比べ、1日の労働時間がおおむね4分の3以上かつ月の労働日数が4分の3以上の場合、加入しなければなりません。
社会保険は、事業主と被保険者(労働者)が保険料をそれぞれ2分の1ずつ負担し、年金をもらえる時期、または保険証を使った医療の支払い等に給付が受けられる公的措置です。この手続きは年金事務所で行います。
「労働保険・社会保険の手続きを自分でやる時間がない」、「知識がなく難しい」などの理由で社会保険労務士に一任し、報酬を支払って手続きしてもらう方も少なくありません。
開業した際の手続きは多く、人事労務関連の手続きは忘れがちになります。しかし、労災保険の設立手続きを怠ると、遡って労働保険料を徴収される他に、併せて追徴金を徴収されることもあります。
また、事業主が故意又は重大な過失により労災保険に係る保険関係成立届を提出していない期間中と認定されると、労働災害が起きて労災保険給付された場合には給付に要した費用の全部または一部を徴収されることもあります。
忘れずに手続きをしましょう!
社会保険労務士法人|岡佳伸事務所の代表、開業社会保険労務士として活躍。各種講演会の講師および各種WEB記事執筆。日本経済新聞、女性セブン等に取材記事掲載。2020年12月21日、2021年3月10日にあさイチ(NHK)にも出演。
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