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ついつい忘れがち!人事異動にともなう諸手続とは?~社会保険編~

人事異動は対象者の選定と辞令の発令で終わりではありません。グループ内での会社間をまたぐ異動であれば、形式的には入退社をともなうため気づきやすいのですが、実は社会保険の被保険者が異動するに当たって必要な手続きというものがあります。年度末から年度初めにかけて多忙を極めるこの時期だからこそ、忘れず落ち着いて処理できるように備えましょう。

転居をともなう場合の住所変更の手続きとは

人事異動によって労働者が転居することになった場合、その住所変更の届け出を事業主から年金事務所へ提出する必要があります。提出するのは「健康保険・厚生年金被保険者住所変更届」という書類で、2枚セットになっているのが特徴です。

1枚目は主に健康保険・厚生年金に関しての、2枚目は国民年金に関しての届け出となっています。労働者が独身、あるいは単身赴任をする場合は1枚目だけの提出でよいのですが、被扶養配偶者と一緒に転居するという場合は2枚とも提出が必要です。

また、健康保険と厚生年金保険の両方に加入しているときと健康保険のみに加入している場合で、提出枚数や記入項目も変わってくるので注意してください。下記で詳しく見ていきましょう。

以下健康保険は全国健康保険協会の例による

ケースごとに変わる!住所変更届の提出枚数

健康保険・厚生年金被保険者住所変更届は、健康保険と厚生年金保険の両方に加入している場合と健康保険のみに加入している場合で、提出枚数や必要記入事項が変わってきます。

健康保険と厚生年金保険の両方に加入しているとき

健康保険と厚生年金保険の両方に加入している場合、被保険者と被扶養者が両方とも転居する際は2枚の書類をそろえて提出するようにしましょう。ただし、被保険者のみ転居するのであれば1枚目のみ、被扶養配偶者のみが転居するのであれば2枚目のみの提出でかまいません。

健康保険のみに加入しているとき

健康保険のみに加入しているケースでは、被保険者と被扶養者の両方が転居する場合でも1枚目のみの提出で大丈夫です。さらに1枚目の書類にある被扶養配偶者の住所変更欄の記入も不要となっています。被保険者のみの転居であれば1枚目だけ、さらに被扶養配偶者のみが転居する場合はどちらの書類も提出は必要ありません。

国家間の社会保障協定とはどのような仕組みなのか

近年では企業が労働者を海外に派遣するというケースも増えてきたのですが、実は海外で就労させる場合、原則としてその国の社会保障制度に加入しなければなりません。しかし、海外で働いている場合でも日本の社会保障制度は引き続き適用されています。つまり、そのままでは日本とその国の社会保障制度の二重加入の状態が起きてしまうのです。

また、年金もその国に支払うのですが、就労者がその年金を受け取るためには一定の加入期間が必要になるため、滞在期間によってはせっかく保険料を払ったのに年金が受け取れないという事態になってしまうこともあります。

海外就労者のこのような不利益を防ぐためにも、様々な国と社会保障協定を締結しています。短期滞在の場合、渡航前にこの手続きを行っておけばその国の社会保障制度に加入せず、日本の社会保障制度を適用したまま就労させることも可能となります。長期滞在の場合は、日本の社会保障制度の解消手続きを行ってから、その国の社会保障制度に加入することになります。

また、年金の場合は日本での加入期間がその国の年金の加入期間と合算されるため、年金を受け取ることができないという事態も起こりません。協定発効済みの国は以下の通りです。

イギリス / ドイツ / フランス / スペイン/ ベルギー/ オランダ / チェコ / スイス / アイルランド
ハンガリー / アメリカ / カナダ / オーストラリア / 韓国 / ブラジル / インド

チェコは協定の一部改正のために準備中
イギリスと韓国は制度の二重加入防止のみ

海外への転勤、または海外からの転勤で必要な年金保険の手続きとは

もし労働者を海外へ派遣する場合、渡航先別の「適用証明書」を渡航前に年金事務所へ提出してください。これを提出すれば、その国の社会保障制度に加入せず働くことが可能です(日本の社会保障制度がそのまま適用される)。

上述の通り、もしも労働者の滞在が長期になる場合は、その国の社会保障に加入することもあります。その場合は年金事務所へ行き、健康保険および厚生年金保険の「資格喪失届」を提出するようにしましょう。

このとき、協定相手国の社会保障制度に加入している旨を証明する書類も同時に必要になります。また、最初は短期の予定だったが、長期になってしまいそうだという場合は、「適用証明書期間継続・延長申請書」を、同じく年金事務所へ提出してください。

なお、海外からの派遣労働者も日本で同様の手続きをすることになっていますが、この場合は健康保険および厚生年金保険の「資格取得届」を年金事務所へ提出することになります。

海外への転勤、または海外からの転勤で必要な介護保険の手続きとは

実は健康保険や厚生年金保険は、住所が国外にある方にも適用されます。しかし、介護保険が適用されるのは国内に住所がある方のみです。そのため、海外で働く場合にはこの介護保険の適用を一度外してもらう必要が出てきます。

渡航前に「介護保険適用除外等該当届」を年金事務所へ提出してください。そして、帰国した際には再び介護保険を適用してもらうため「介護保険適用除外等非該当届」を提出します。

まとめ

このように、一口で人事異動と行っても労働者だけが転居したり、家族ごと転居したり、あるいは海外へと異動になったりなど、様々なケースがあります。そして、そのケースごとに提出してもらう書類も変わってくるので注意しなければなりません。

この時期は何かと手続きが多くなってしまうこともあるかと思いますが、きちんと確認してトラブルが起きないようにしましょう。

社会保険労務士事務所そやま保育経営パートナー

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