雇用契約書の締結をはじめ、入社手続きは同時に・複数人を・短期間でおこなう企業も、少なくないのではないでしょうか。だからこそ、フローや書類を定式化して効率よく、かつ遺漏なく進めたいものです。
しかしながら、入社する従業員の属性によってはイレギュラーな対応が法的に求められたり、契約書や手続きに法改正が反映されないままだったりと思わぬ落とし穴があります。ここであらためて見直してみましょう。
目次
新卒採用であっても、中途採用であっても日本の就職活動においては「内定」で内定通知書を交付してから、最終的に雇用契約書を取り交わすのが一般的です。
ただ単に内定を伝えても雇用契約を締結していないことから、雇用関係ではないのではないと勘違いしてしまうことが多いです。特に新卒採用においては、大学4年時の春以降などに内定や内々定を与えて、卒業後に雇用契約をするため、そのように感じてしまう方は少なくありません。
しかし内定通知書を発行する際に、学生側に入社に関して制約を設けることが多いため、法的性格としては「始期付・解約権留保付労働契約」とみるのが一般的とされています。
そのため雇用契約書を取り交わしてからではなく、内定が確定した時点で労働契約が成立しているとされているのです。
それでは、この「始期付・解約権留保付」というのはどのような意味を有しているのでしょうか。学生に対して内定を出す際には、卒業後に雇用契約書を取り交わします。
そのため、始期つまりは卒業後の4月から労働契約が成立するという条件があり、万が一卒業をすることができなかった場合等に、内定を取り消すことができるように「解約権留保」がついているのです。
中途採用については、基本的にはすぐに採用となるケースが少なくありません。しかし中途採用者によっては、まだほかの会社で雇用関係を継続している途中である可能性もあります。
その後、当該会社を退職して労働契約を結ぶ場合には、採用までに1カ月や1カ月半の期間が開くことも珍しくないでしょう。そのような場合には、新卒採用と同様に内定を出すことにより「始期付・解約権留保付労働契約」が成立することとなります。
また近年では、内定の前に「内々定」を提示することもあります。内々定の場合、企業によって内容が異なるため各事例を吟味する必要があります。
たとえば、口頭であったとしても、実質的に内定と同じ性質を有した内々定の場合は内定と同じであると判断され、労働契約が成立しているものとみなします。しかし採用内定というよりも、内定を締結するうえでの過程に過ぎないと判断される場合は、労働契約が成立しません。
ただし、後者の内々定であったとしても、雇用者側が一方的に内々定を取り消した場合等は損害賠償の対象となる恐れもありますので、内々定を出す際には安易な取り消しをしないように気をつけましょう。
労働契約とは、雇用契約書を締結して初めて契約が成立すると考えられがちですが、必ずしもそうとは言い切れません。一般的な契約と同様に、民法上は口頭であったとしても労働契約自体は成立します。
そのため、実質的には雇用契約書を締結していなかったとしても、労働者が使用者に対して一定の労務を提供し、使用者は労働者に対してその労務に対する対価、つまりは報酬を支払うことを約束していることについて合意している場合は、労働契約が成立します。
ただし労働基準法上では、使用者は労働者に対して労働条件等の書面による明示が必須と定められています。この労働条件通知書は、内容を満たしていれば書面の名称は問いません。多くの使用者は、必要な労働条件等を記載した雇用契約書として明示したうえで、労働者と契約を締結します。
このように雇用契約書自体は必須でないものの、労働条件の明示が必要であれば「ついでに契約書を交わしておこう」という考えのもとで行われることが多いです。
もちろん雇用契約書を書面で締結したとしても、必要な労働条件等が明示されていなければ、労働基準法違反となります。書面で雇用を締結したからといって、労働条件の明示が免除されるわけではないのでお気を付けください。
労働条件の明示に関して、書面によることが必要な内容、口頭でも構わない内容について、下表にまとめました。
※1~9に関しては、必ず明示しなければなりません。
10以降については、会社に制度がある場合に明示しなければならない事項となっています。
基本的には、労働者は使用者より力関係が弱いです。そんな労働者を守るために、労働基準法では、使用者から不当に虐げられないようにさまざまな規定が定められています。
たとえば、「賠償予定の禁止」もそのひとつです。発注ミスやオーダーミス、過失による機器の破損等、会社の損害として労働者に負担させる額を契約書上に記載することはできません。
労働者を雇用する際には、雇用時に健康診断を実施しなければなりません。健康診断の項目としては、下表のとおりであり、これらの項目は定期健診と違って省略して実施することができません。
しかし、雇用する労働者が雇用前3カ月以内に健康診断を受けている場合、それらの結果の書面を提出した場合に限っては、それらの項目については省略することができます。なお、これらの健康診断項目は、パートやアルバイトであっても、一定の要件を満たす場合は実施が必要なので注意しましょう。
健康診断項目 | 項目の詳細・留意事項等 |
---|---|
既往歴及び業務歴の調査 | 1.既往歴は、雇い入れ時までにかかった疾病について、経時的に調査する。 2.業務歴は、雇い入れ時までに従事していた主な業務経歴を調査する。 |
自覚症状及び 他覚症状の有無の検査 |
労働者が就業する業務の身体特性を把握するために、感覚器・呼吸器・消化器・神経系・皮膚・運動機能の検査を行う。これに労働者の性別や年齢、既往歴や問視診等の所見を総合的に勘案して、医師によって項目が決定される。 |
身長、体重、腹囲、 視力及び聴力の検査 |
1.腹囲は、立位で軽呼気時に臍レベルで測定を行う。しかし、脂肪蓄積が著しいうえに臍が下方に偏位している場合は、肋骨下縁と前上腸骨棘の中点の高さで測定する。ただし、プライバシー保護の観点から、着衣による測定や労働者による健診会場での測定も可能。 2.聴力検査は、オージオメーターを使用して、通常30dBの音圧の純音を用いて、1,000Hz及び4,000Hzの周波数で一定の音圧の音が聞こえているのかを検査する。なお、検査の際には検査場所の騒音も考慮して行う。 |
胸部エックス線検査 | 特になし |
血圧の測定 | 特になし |
貧血検査 | 血色素量及び赤血球数の検査 |
肝機能検査 | 血清グルタミックオキサロアセチックトランスアミナーゼ(GOT)、血清グルタミックピルビックトランスアミナーゼ(GPT)、ガンマ-グルタミルトランスペプチダーゼ(γ-GTP)の検査 |
血中脂質検査 | 1.低比重リポ蛋白コレステロール(LDLコレステロール)の量の検査 2.高比重リポ蛋白コレステロール(HDLコレステロール)の量の検査 3.血清トリグリセライドの量の検査(原則として、空腹時の実施が原則であるが、食事摂取後に実施する場合は、その影響を考慮して検査結果を評価する) |
血糖検査 | 空腹時の実施が原則であるが、食事摂取後に実施する場合は、その影響を考慮して検査結果を評価する。なお、一般的な血中グルコースの量の検査によるほか、糖化ヘモグロビンA1c(HbA1c)の検査でも可能。 |
尿検査 | 尿中の糖及び蛋白の有無の検査をする。 |
心電図検査 | 安静時の標準12誘導心電図を記録する。 |
なお、雇い入れようとする労働者の赴任先が海外である場合、上記の検査以外に定期健康診断の検査、腹部画像検査、血液中の尿酸量の検査、B型肝炎ウイルス抗体検査、ABO式及びRh式の血液型検査が必要となる場合があるので注意しましょう。
労働者を雇い入れる際に、身元保証書や誓約書の提出を求める会社は少なくありません。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
身元保証書とは、労働者が使用者に対して何らかの損害を与えた際に、身元保証人である第三者が労働者と連帯して損害に対して賠償をすることを目的とした書類です。民法や労働基準法上、使用者が身元保証書を求めることは、法律に反しているものではありませんが、身元保証法によって下記のような定めがあります。
身元保証書は、生涯効力が発生するのではなく、期間の定めがない場合は3年間、定めたとしても最長5年間が有効期間となります。
身元保証人が賠償する範囲としては、労働者の直接または間接的な業務上の行為によって使用者が損害を受けた場合に限られます。また、損害に対してすべて責務を負うのではなく、使用者の監督責任や安全配慮等の過失、身元保証の経緯、労働者の任務や身上の変化等を勘案したうえで、裁判所が賠償額を決定します。
そのため、労働者の不注意や軽過失によって生じた損害については、賠償責任が認められることは少ないです。
使用者は身元保証人に対して、その責務を負うような状態を生ずる恐れがあることを知ったときや、労働者の任務や任地を変更したことで身元保証人の責任が加重となる、もしくは監督が困難となった場合は、通知する義務が生じます。
また身元保証人は、この通知を受けて身元保証契約を解除することも可能です。
誓約書とは、労働契約の内容を労働者が契約上の義務として遵守しなければならないことを再確認させることを目的としているものです。なお、採用後の服務上の非違行為についての処分に関する根拠は、就業規則に記載しなければなりません。
会社として、労働者を雇い入れることを本人に対して通知した場合は、その時点で労働契約が成立したものとみなされます。そのため、身元保証書や誓約書等の提出を労働者が拒んだからといって、採用の取り消しをした場合、不当解雇として解雇が認められないこともあります。
解雇が認められるケースとしては、業務遂行や諸手続きに必要不可欠であり「客観的に合理的かつ社会通念上相当の理由」がある場合に認められます。
たとえば、誓約書は身元保証を兼ねていたり、身元保証書自体が採用の条件とされていたりする場合においては、これらの書類の提出拒否による解雇が認められることがあるとされています。
労働者の入社の際に、給与振込依頼書の提出を求める企業は非常に多いです。しかし、いかなる場合でも給与を振り込みで支払うことができるわけではありません。労働基準法第24条において、使用者は原則として、労働者の給与を通貨で直接支払わなければならず、さらに毎月1回以上一定の期日で支払わなければならないと定められています。
ただし、通貨払いについては一部例外が設けられており、法令や労働協約に定めがある場合、厚生労働省令で定める賃金について確実な方法として認められた場合については、現金支払いでなくてもかまわないとされています。この例外の一般的な事例としては、退職金の自己宛て小切手による支払いや、指定された銀行口座や一定の証券口座への振込による支払いが挙げられます。
ただし、会社の都合で自由に行うことができるのではなく、あくまでも労働者の同意を得ていることが前提となるので注意しましょう。また、行政解釈になりますが、給与の支払い日に引き出すことができること、労働者の過半数で組織される労働組合又は過半数の代表者と労使協定を締結することが必要とされています。
また、労働者の賃金債権については、第三者に譲渡すること自体は労働基準法に違反しないのですが、使用者としてはあくまでも労働者に支払う必要があるとされています。同様に代理人への支払いも制限があります。
ただし、労働者本人と同一視できる使者に限っては、使用者は代理人に支払いをすることができるとされています。このように、社内で労使協定を結んだうえで、雇用する労働者が希望する場合に限って銀行口座への振り込みをすることができるようになります。
なお、労働基準法上では、賃金を口座振り込みする際には、細かな取り決めがあります。
このように、口座振り込みについては、全額ではなく労働者の希望によって金額を指定することが可能となっています。ただし、実態としては源泉徴収額や社会保険料等の控除分を差し引いた全額が振り込まれるのが一般的となっています。
ここ数年で必要となった作業のひとつとして、雇用する労働者のマイナンバーの把握があります。2013年にマイナンバー法が成立し、2016年1月から社会保障・税番号制度が開始されたため、企業は労働者のマイナンバーを収集しなければならなくなりました。
マイナンバーは、重要な個人情報の側面もありますので、収集と管理に関してはしっかり行わなければなりません。企業のマイナンバーへの対応としては次の3ステップが考えられます。
マイナンバーに関する事務については、原則としてそのマイナンバーが必要になった時点で、労働者から提供を受ける必要があります。ただし、業務上将来的に必要となることが分かっているのであれば、事前に提供を受けてもよいこととなっています。
そのため、労働者やその扶養親族のマイナンバーについては、入社時に提供を受けておくようにすると漏れなく収集できるため、このタイミングで収集する企業が多いです。
しかし、マイナンバーは、特定個人情報に該当するため、労働者から収集する際には、マイナンバーの利用目的を通知、もしくは公表する必要があります。さらに、提出を受けたマイナンバーが本人のものであることをしっかりと確認するために、次のいずれかの本人確認が必要となります。
また、扶養親族のマイナンバーを提供してもらう際には、代理人から提供を受けることになります。そのため、下記のすべての確認をする必要があります。
基本的には、会社オリジナルの個人番号届出書と併せてこれらの書類を受けるようにしましょう。
労働者のなかには、マイナンバーの提供を拒否する方もいらっしゃるでしょう。個人としては必ずしもマイナンバーカードを提供するという義務はなく、提供を拒んでも罰則はありません。
しかし、会社側としては、法定調書等にマイナンバーを記載する義務があります。そのため、もしマイナンバーの提供が拒否された場合には、当該労働者に対して、個人番号を記載することが義務であるため、マイナンバーの提供は重要であることを周知したうえで、周知を行った記録を残しておくようにしましょう。
会社としてここまでしてもマイナンバーの提出を拒否された場合は、書類の提出先である行政機関等に指示を受けるようにしましょう。
就職活動者と使用者の間には、時として内定を巡って紛争が起こることがあります。特に、内定取り消しや採用の延期等を行う場合には、使用者側は十分に注意する必要があります。
最初に解説したように、内定を出した段階で内定者と使用者の間では労働契約が成立するものと認められます。
そのため、内定取り消しを行った場合、客観的な合理性と社会的相当性が認められない場合は、解雇権濫用法理によって内定取り消しが無効となってしまう可能性があります。実際にあった判例としては、内定者の性格が会社の求めるものではなかったことから内定取り消しを行った場合に、その取り消しが無効とされています。
一方で、内定者が公安条例違反により逮捕され起訴猶予処分を受けたことを理由として内定の取り消しを行った場合については、有効であると判断されています。このような判例を受けて、下記のような状態になった場合については、内定取り消しが認められる可能性があります。
もちろんこれらの状態になった場合でも、常に内定取り消しを認められるとは限りませんので注意してください。また、内定取り消しが無効になった場合、内定者が雇用を求める場合は当初の予定通り雇用契約を結ぶ必要があります。
一方で、内定取り消しによって精神的な損害を受けた場合は、損害賠償請求を受ける恐れがあるので気をつけるようにしましょう。
会社の都合によって、使用者側が内定後に採用時期の延期をして、自宅待機をさせる場合は、「労働義務の免除」もしくは「労務の受領拒否」とみなされます。つまり、会社側は内定者を当初の入社予定日に入社させていなかったとしても、労働基準法上は雇用したうえで会社都合によって仕事をさせなかったということになります。
つまりは、新入社員を「休業」させたことになります。そのため、使用者側としては、採用予定の内定者に対して、当初支給予定としていた平均賃金の100分の60以上の休業手当を内定者に対して支給する必要があるのです。
ただ、これはあくまでも労働基準法上の最低保障であり、当初の入社予定日以降、内定者は当該会社の従業員としての地位を有することとなります。そのため、場合によっては当該内定者から、民法に基づいて賃金の全額を請求する訴えを起こされる可能性がありますので、気を付けるようにしましょう。
最近では、外国人労働者や高齢者を雇用する機会が増えています。また、一定の基準では障害者を雇用することを必要とされることもあるでしょう。
外国人労働者を雇用した場合、その外国人労働者が日本国籍を有しておらず、在留資格が「外交」や「公用」以外の場合は、雇用対策法に則って雇い入れの際にハローワークに対して外国人労働者の氏名、在留資格、在留期間その他厚生労働省令の定める事項について確認をして届出をしなければなりません。
ただし、在日韓国人や朝鮮人等の特別永住者については、届出の必要がありません。外国人雇用状況の届出は、対象となる外国人労働者が雇用保険の被保険者となっているか否かによって異なります。
健康診断項目 | 項目の詳細・留意事項等 |
---|---|
届出事項 | 氏名、在留資格、在留期間、生年月日、性別、国籍・地域、資格外活動許可の有無、雇い入れに係る事業所名及び所在地等。 |
届出方法 | 雇用保険被保険者資格取得届の「17」~「22」の欄に必要事項を記入する。 |
届出先 | 雇用保険の適用を受けている事業所を管轄するハローワーク。 |
届出期限 | 雇用保険被保険者資格取得届と同じ。 |
健康診断項目 | 項目の詳細・留意事項等 |
---|---|
届出事項 | 氏名、在留資格、在留期間、生年月日、性別、国籍・地域、資格外活動許可の有無、雇い入れ日、雇い入れに係る事業所名及び所在地等。 |
届出方法 | 外国人雇用状況届出書(様式第3号)に必要事項を記載する。 |
届出先 | 当該外国人労働者が勤務する事業所の所在地を管轄するハローワーク。 |
届出期限 | 雇い入れ日の翌月末まで。 |
一定規模以上の会社の場合、毎年6月1日現在における身体障害者や知的障害者及び精神障害者の労働者の雇用状況を7月18日までに所轄のハローワークに報告しなければなりません。一定規模というのは、常時雇用する労働者数が50人以上である会社が対象となります。そのため、障害者の採用をする場合については、採用の都度労働者の障害の有無や程度を把握しておく必要があります。
障害というのは、非常に重要なプライバシーにあたるため、厚生労働省が提示しているガイドラインに準拠しなければなりません。収集する際には、その情報を何のために利用するのかをしっかり明示し、障害の状態に変更がない限り、毎年利用することについて本人の同意を得ておくようにしましょう。
あくまでも、労働者の同意を得て報告するものなので、必要のない情報の取得や労働者の意思に反して取得を強要する、拒んだことによって解雇や不利益な取り扱いをする、本人の同意を得ずに情報の提供をするなどしないようにしましょう。
高齢者を雇用した場合も、毎年6月1日現在の定年及び継続雇用制度の状況やその他高年齢者の雇用に関する状況を、7月18日までにハローワークへ報告する必要があります。報告すべき内容としては、以下のとおりです。
労働者を採用する際には、その段階から公正を期しているかどうかも法的制約の対象となります。たとえば、男女雇用機会均等や年齢制限が代表的な例です。応募者の基本的人権の尊重、応募者の適性や能力を基準とした選考、応募者の門戸を広く開くことなどを心がけるようにしましょう。
また、内定者等の個人情報に関しては、特別な職業上の必要性がない場合は、人種や民族、社会的身分や、本籍、出生地、思想及び信条、労働組合への加入状況等を収集してはなりません。さらに、これらの事由によって労働者に不利益な状況を負わせるのはもってのほかです。
収集した個人情報はしっかりと管理しなければならず、使用者には次の義務が生じます。
これらの措置については、対象者から求めに応じて措置の内容について説明することが義務付けられています。ただし、労働者から同意を与えられた場合については、情報の目的外利用が認められます。
また、企業によっては採用調査を行う企業もあるかもしれませんが、原則として調査しないことが勧められています。特にセンシティブ情報については、特別な職業上の必要性があり、収集目的を本人に明示して本人から収集する場合のみ認められます。
ただし、三菱樹脂事件等の判決でもあるように、思想や信条等によって採用を拒否することは望ましくないといわれていても、実際にそれを理由に拒否したとしても不当ではないと判決が出ている事例があります。
とはいえ、トラブルのもとになる以上、不当な情報収集を行ったり、思想や信条等で採用を拒否したりすることは、できる限り避けるほうがよいでしょう。
採用選考から入社手続きまでに、使用者と内定者の間には、さまざまな法的制約が生じます。提出を求める書類や内定者への対応等、取り扱いや対応を間違えると、法的罰則を受ける場合や内定者との紛争に至ってしまう原因にもなります。
今回ご紹介したポイントを振り返ってみて、改めて自社に足りていないものはないか、不要なものはないかをしっかりと確認しておくようにしましょう。
社会保険労務士事務所 そやま保育経営パートナー 代表社会保険労務士:
楚山 和司(そやま かずし) 千葉県出身
株式会社日本保育サービス 入社・転籍
株式会社JPホールディングス<東証一部上場> 退職
詳しいプロフィールはこちら