この記事でわかること・結論
- 協会けんぽ(全国健康保険協会)とは中小企業および労働者向けの医療保険者であり、加入者は約4,000万人と国内最大規模
- 健康保険は協会けんぽのほかにも、健康保険組合や国民健康保険などがある
- 協会けんぽの加入は適用事業所が手続きをする必要
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社会保険この記事でわかること・結論
協会けんぽ(全国健康保険協会)は国内最大規模の保険事業を運営する保険者のことであり、中小企業およびその事業所に雇用される労働者とその家族が加入者となります。
加入することで医療に関連する制度利用や各種給付金などの利用が可能です。また、協会けんぽの保険料率は都道府県ごとに異なる基準を使って算出するため計算式などは覚えておきたいポイントです。
本記事では協会けんぽについての概要および国民健康保険との違い、保険料率と計算方法そして加入者が受けられる制度などについて解説します。
目次
協会けんぽ(正式名称は全国健康保険協会)とは、健康保険法に基づき2008年に設立された公法人であり、健康保険事業を運営する国内最大級の医療保険者のことです。協会けんぽは、もともと国が運営していた健康保険事業(政府管掌健康保険)を引き継いで運営をしています。
協会けんぽは、主に中小企業で働く従業員やその家族など約4,000万人の加入者がいる国内最大の医療保険者です。基本使命は「協会は保険者として健康保険事業および船員保険事業をおこない、加入者の健康増進を図るとともに良質かつ効率的な医療が享受できるようにし、もって加入者および事業主の利益の実現を図る。」としています。
また、加入者4,000万人にくわえ約250万事業所が協会けんぽの保険に加入しています。国内の中小企業はほとんど加入していると言っても過言ではないでしょう。
協会けんぽの事業は大きいものに先述した「保険事業」がありますが、ほかにも以下のような取り組みをおこなっています。
具体的な内容は生活習慣病予防の健診や保健指導や病気、けが、出産に関わる各種給付金を支給などがあります。
協会けんぽは、主に中小企業の労働者とその家族が加入者となります。そのほかの健康保険については以下のように、業務形態によって異なります。
加入者区分 | |
---|---|
健康保険組合 | 大企業で働く方とその家族 |
協会けんぽ(全国健康保険協会) | 中小企業で働く方とその家族 |
共済組合 | 公務員などで働く方とその家族 |
国民健康保険 | 自営業者やフリーランスで働く方 |
上記のうち健康保険組合については、常時700人以上の従業員が働くような会社が該当します。
協会けんぽの被保険者となる方は、どのような保障制度・給付金などが受けられるのでしょうか。ここでは一部を紹介します。
主に病院にお世話になるタイミングなどで被保険者の恩恵を受けることが多いです。健康保険証を提示することで、一部負担金で診療および投薬などを受けることが可能です。
また、医療費が高額になる場合に一部払い戻しされる「高額療養費制度」や、病気やけがで仕事を休むことで給与が受けられないときに支給される「傷病手当金」などが利用できます。
ちなみに健康保険証については、2024年12月より発行終了することが予定されています。今後はマイナ保険証と呼ばれる、マイナンバーカードを健康保険証として利用する方針が進められています。
協会けんぽは、「都道府県単位保険料率」と呼ばれ都道府県ごとの保険料率を設定しています。都道府県ごとに異なる保険料率は、協会けんぽの公式Webサイトで最新年度版が確認できます。例として2023年時点の保険料率をいくつかまとめました。
都道府県 | 保険料率 |
---|---|
北海道 | 10.29% |
東京都 | 10.00% |
大阪府 | 10.29% |
福岡県 | 10.36% |
上記保険料率を参考に、以下の計算式で協会けんぽの健康保険料を算出しましょう。
被保険者の標準報酬月額と標準賞与額 × 保険料率(介護保険料がある場合は保険料率が加算)
標準報酬月額とは保険料算出の際に基準とする金額のことであり、報酬月額を1等級から50等級まで区分して当てはめます。こちらも都道府県ごとに基準が異なり、協会けんぽの公式Webサイトから確認できます。
介護保険料率は、令和5年3月分から全国一律で1.82%です。介護保険第2号被保険者である40歳から64歳までの方は、上記の健康保険料にプラスして1.82%分の介護保険料を負担します。
また、健康保険料や介護保険料については労使折半での負担です。事業所は、被保険者となる従業員の毎月給与から保険料をまず控除します。そして事業所の負担分を合計してのち年金事務所へ納付するという流れです。
協会けんぽは、健康保険の適用事業所となる事業所が加入手続きをします。適用事業所には強制適用事業所と任意適用事業所があり、該当条件はそれぞれ以下のとおりです。
強制適用事業所
・すべての法人事業所(従業員1名以上)
・常時5人以上となる個人事業所
任意適用事業所
・常時5人未満となる個人事業所で、半数以上の従業員が同意する場合
・非適用業種(農林水産業、サービス業、宗教など)
上記に該当する強制適用事業所は、事業主の意思に関係なく必ず加入手続きをしなければなりません。事実発生から5日以内に「新規適用届」を管轄する事務センター(年金事務所)に提出する必要があります。
また、常時雇用される従業員が5人未満である事業所や非適用業種などは任意適用事業所となるため、加入について被保険者の半数以上の同意をもらったうえで厚生労働大臣の認可を得なければなりません。任意適用事業所は「任意適用申請書」を、同意を得てから速やかに管轄する事務センター(年金事務所)へ提出しましょう。
強制適用事業所および任意適用事業所が、従業員を新たに採用した際には「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」を事務センター(年金事務所)に提出しなければなりません。
協会けんぽの加入者になれば、事業所当てに対象従業員の健康保険証(被保険者証)が届きます。加入者1人につき1枚のカードであるため、被扶養者がいる場合は人数分となります。届いたら従業員へ交付しましょう。
協会けんぽとは、国内最大の医療保険者であり加入者が全国4,000万人にもおよびます。中小企業に属している会社員であれば協会けんぽの健康保険証を持っている方も多いでしょう。
協会けんぽへ加入するには、まずは適用事業所に該当するような企業が加入手続きをする必要があります。従業員についても会社を通して加入することになるため、被保険者になれば会社から健康保険証などを受け取ります。
協会けんぽの保険料は、従業員の賃金や都道府県ごとに異なるため本記事の計算式を参考にしてみてください。中小企業側も協会けんぽについての理解を深めて、保険や給付金などにスムーズに対応できるように心がけましょう。
1984年生まれ。社会保険労務士。
都内医療機関において、約13年間人事労務部門において労働問題の相談(病院側・労働者側双方)や社会保険に関する相談を担ってきた。対応した医療従事者の数は1,000名以上。独立後は年金・医療保険に関する問題や労働法・働き方改革に関する実務相談を多く取り扱い、書籍や雑誌への寄稿を通して、多方面で講演・執筆活動中。
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