この記事でわかること・結論
- 雇い入れ時健康診断の費用と実施時期
- 雇い入れ時健康診断の対象者と省略可能なケース
- 雇い入れ時健康診断の検査項目
この記事でわかること・結論
労働者を雇い入れている事業者は、労働安全衛生法などにより「雇い入れ時健康診断」を実施することが義務付けられています。
他にも義務付けられている健康診断として定期健康診断などがありますが、それぞれの健康診断は実施頻度・対象者・検査項目などが異なっています。
そこで今回は、新しく従業員を雇用する前後に実施しなければいけない「雇い入れ時健康診断」について説明します。何をいつまでにするのか、省略していいケースもご紹介するのでぜひ参考にしてください。
目次
企業は対象となる従業員を新しく雇い入れる際、雇い入れの直前または直後に、医師による健康診断(雇い入れ時健康診断)を実施することが義務付けられています。
雇い入れ時健康診断の費用相場はおおよそ1万円程度で、費用は基本雇い入れる企業側が支払います。
このことから、雇い入れ時健康診断を省略しない場合は、入社の3か月前後には健康診断を受けるようにしましょう。なお、この健康診断はあくまでも採用後の適正な配置や健康管理のために行うものであり、採用選考を目的として行うものではありません。
一人でも労働者を雇っている事業主は一年以内ごとに一度、医師による定期健康診断を実施する法的義務があります。
以上のとおり、従業員に対して行う健康診断には主に
の2つがあります。事業者は両者を混同しないよう気をつけましょう。
雇い入れ時健康診断の対象となる人は「常時使用する労働者」と定められています。常時労働者とは、次の2つの条件をいずれも満たす者を指します。
上記1の条件の”以下の者”とは、下記の方を指します。
1,2 深夜業などの特定業務に常時従事する「特定業務従事者」は6カ月以上
また「常時使用する労働者の条件」である2の条件に満たない短時間労働者であっても、1の条件に該当し1週間の所定労働時間が通常の労働者の約2分の1以上の場合は、常時使用する労働者とみなし、雇い入れ時健康診断を行うことが望ましいとされています。
次は、雇い入れ時の健康診断の検査項目について説明します。雇い入れ時健康診断では、以下の検査項目をすべて受ける必要があります。
定期健康診断は上記に加えて「喀痰検査」を行います。しかし労働者の年齢等により、医師の判断で省略できる項目があります。
省略できる検査項目 | 対象年齢 | その他の条件 |
身長 | 20歳以上 | 特になし |
---|---|---|
貧血検査 肝機能検査 血中脂質検査 血糖検査 心電図検査 |
35歳を除く40歳未満 | 特になし |
胸部X線検査 | 25歳、30歳、35歳、35歳 | 結核定期検診対象者 3年ごとのじん肺定期健診対象者は医師の判断による |
腹囲 | 35歳を除く40歳未満 | 妊婦 BMI20未満 BMI22未満で腹囲計測済みの場合は医師の判断による |
喀痰検査 | 特になし | 胸部X線検査で病変等の恐れがない者 |
以上のとおり「省略可能な検査があるか否か」が、雇い入れ時健康診断と定期健康診断の大きな違いとなります。
最後に雇い入れ時健康診断を含む、健康診断実施後に事業者が取り組むべきことについて説明します。
健康診断実施後の取組事項
雇い入れ時健康診断の結果を所轄労働基準監督署長に提出する義務はないため、上記(6)については省略できます。
しかし(1)~(5)については定期の健康診断と同様に行う必要があるため、結果を提出する必要がなくても上記の取り組みをしっかりと行うことが重要となります。
今回は雇い入れ時健康診断の概要や対象者、雇い入れ時健康診断を省略できるケースなど、事業主が認識しておくべき事項について解説しました。
また、雇い入れ時定期健診と混同しやすい定期健康診断ですが、
といった違いがあります。その点に留意したうえで、対象者全員もれなく「雇い入れ時健康診断」を行うよう心がけましょう。