この記事でわかること
- 雇用保険被保険者資格取得届の具体的な記入方法
- 雇用保険被保険者資格取得届の概要
- 労務担当者が気をつけたい雇用保険被保険者資格取得届申請時の注意点
この記事でわかること
従業員を1人でも雇えば雇用保険に加入する義務が発生し、事業所は雇用保険適用事業となります。
近年、雇用保険を含む社会保険の適用範囲が順次拡大され、従業員が雇用保険の適用要件を満たした場合、雇用保険適用の対象となります。
今回は、雇用保険被保険者資格取得届の概要や書き方、手続き方法から申請時の注意点までを解説します。
目次
雇用保険被保険者資格取得届とは、従業員を1人でも雇用しており、雇用保険の加入条件を満たした従業員がいる場合に提出する書類です。
従業員が以下の加入条件を満たした場合、雇用形態(パート・アルバイト含む)に関係なく、雇用保険の加入が必要です。
雇用保険の加入条件
同一の事業主の適用事業に継続されることも必要です。
また、65歳以上の従業員も高年齢被保険者として雇用保険の加入対象となります。新たに65歳以上の従業員を雇い入れる際は、雇用保険被保険者資格取得届の提出が必要です。
提出方法 | 郵送・窓口・電子申請のいずれか |
---|---|
提出先 | 事業所の所轄ハローワーク |
提出期限 | 雇用保険の加入対象者を雇用した月の翌月10日まで |
雇用保険被保険者資格取得届には、以下の項目を記入します。
雇用保険被保険者資格取得届の記入項目
雇用保険被保険者資格取得届は、法改正以外にも定期的に更新されます。作成する際は必ず最新版をダウンロードしましょう。
▼雇用保険被保険者資格取得届テンプレート
雇用保険被保険者資格取得届では、必ず個人番号(マイナンバー)が必要です。本人確認をおこない、使用用途を伝えた上で個人番号を用意してもらいます。
マイナンバーカードを作っていない労働者も少なくないため、提出期限に間に合うように余裕を持ったスケジューリングをおこないましょう。
過去に従業員が雇用保険に加入していた場合(転職や再雇用など)、雇用保険被保険者証を提出してもらい、雇用保険被保険者証に記載されている被保険者番号を記入します。
新卒社員や雇用保険の加入対象外の労働者で初めて雇用保険に加入する場合は、空欄で問題ありません。
取得区分を「1.新規」で届出します。
入社予定の従業員が1の「新規(初めて雇用保険に加入する)」の場合は、1を記入します。それ以外の従業員は2の「再取得」を選択します。
過去に雇用保険に加入した経験があり、資格喪失してから7年以上経過している場合は1の「新規」となります。
雇用保険被保険者証に記載されている名前・フリガナを記入します。
フリガナは、姓と名の間を1文字空けます。
取得区分で、2の「再取得」を選択し、雇用保険被保険者証に記載されている名前と現在の名前が異なる場合は、5の「変更後の氏名」に現在の名前を記載します。
被保険者が男性の場合は「1 男」を、女性の場合は「2 女」を選択します。
被保険者の生年月日(元号記載)を記入します。
事業者番号を記入します。
事業者番号は雇用保険の適用事業所台帳(雇用保険適用事業所設置届事業主控)に記載されています。
被保険者となったことの原因は、雇い入れる従業員の区分から選択肢が異なります。
従業員の区分 | 項目 |
新卒者の新規雇用(卒業年の3月1日~6月30日までに雇い入れた場合) | 1 新規雇用(新規学卒) |
---|---|
上記以外 | 2 新規雇用(その他) |
日雇い労働者が新たに雇用保険に加入する場合 | 3 日雇いからの切替 |
備考欄に具体的な説明を記入する | 4 その他 |
65歳以上の従業員が出向元に復帰した場合など | 8 出向元への復帰等(65歳以上) |
入社日時点における賃金の支払態様を以下から選択します。
賃金欄には、賞与や残業手当などを除いた賃金月額を記入します。
時間給の場合は1カ月の所定労働時間
資格取得年月日は、契約をかわした雇用開始(試用期間、研修期間も含む)の入社日(初日)を記載します。
元号は5を選択(令和)
雇用形態の区分は以下のとおりです。
職種は以下、11つの区分から該当する職種を選択します。
従業員が就職するに至った経路を以下の区分から選択します。
入社日時点における1週間の所定労働時間を記載します。
就業規則や雇用契約書に記載する「通常の週に勤務すべき1週間の労働時間」
契約定めの期間が有無を記載します。
1 有 | 契約期間や契約更新条項の有無を記載 |
---|---|
2 無 | - |
雇用保険被保険者資格取得届を作成・提出する際は以下の注意点もおさえておきましょう。
雇用保険被保険者資格取得届には、マイナンバー(個人番号)を記入しなければなりません。
労働者の中には、マイナンバーカードを発行していない方も少なくありません。雇用保険被保険者資格取得届の提出期限を守るためにも、採用が決まった時点でマイナンバーが必要である旨を伝えておきましょう。
雇用保険被保険者資格取得届を提出する際、雇用保険の加入対象とならない労働者に注意しましょう。
取得区分によっては、雇用保険の適用要件以外にも特定の条件を満たさなければ被保険者に該当しないことがあります。雇用保険被保険者資格取得届を提出する前に、しっかりと条件を確認しましょう。
雇用保険被保険者資格取得届には、基本的に添付書類は必要ありません。ただし提出期限を過ぎた場合や、事業主として初めて雇用保険被保険者資格取得届を提出する場合は、以下の書類が必要です。
手続きが遅延した場合(具体的な遅延期間はハローワークによって異なる場合があります)、労働契約書・出勤簿・賃金台帳のうち2点の提出と、場合によっては遅延理由書の提出が求められます。
雇用保険被保険者資格取得届は、以下の3つの方法で提出できます。
窓口 | 事業所のある所轄のハローワークに提出する |
---|---|
郵送 | 個人番号取り扱いのため、特定記録や簡易書留などで提出する 返信用封筒(料金分の切手貼付済)と希望する郵便種類(特定記録や簡易書留)を明記 |
電子申請 | 電子政府の総合窓口「e-Gov」を利用する 電子申請の場合、原則として添付書類は必要ありません(後日、必要に応じて提出を求められる場合があります) |
審査が終了後、
を受け取ります。
電子申請の場合、電子公文書のダウンロード先を記したメールが届き、ダウンロードします。
雇用保険被保険者証とは、被保険者に雇用保険が適用されていることの証明となる保険者証です。雇用保険被保険者資格取得届の提出後、ハローワークから被保険者に交付される証明書のため、事業主では保管せず必ず被保険者に渡しましょう。
週の所定労働時間が20時間以上、同一の事業主の適用事業に継続して31日以上の雇用見込みがある従業員を雇い入れた場合、雇用保険被保険者資格取得届の提出が必要です。
区分によって条件が細かく異なるため、事業主は労働者が雇用保険の被保険者に該当するかをしっかりと確認しなければなりません。
手続きに不足があった場合、従業員に不利益な状況が生じる可能性もあるため、事業主・労務担当者は十分に留意しましょう。
1984年生まれ。社会保険労務士。
都内医療機関において、約13年間人事労務部門において労働問題の相談(病院側・労働者側双方)や社会保険に関する相談を担ってきた。対応した医療従事者の数は1,000名以上。独立後は年金・医療保険に関する問題や労働法・働き方改革に関する実務相談を多く取り扱い、書籍や雑誌への寄稿を通して、多方面で講演・執筆活動中。
詳しいプロフィールはこちら