この記事でわかること・結論
- 育児時間は、育児のために原則として女性労働者が取得できる時間のこと
- フルタイムの女性労働者は1日2回まで、少なくとも30分間ずつの育児時間を取得できる
- 育児時間は労働基準法に規定されているが、企業が独自に決められる内容も多い
この記事でわかること・結論
育児時間とは労働基準法で定められている女性労働者が育児のために取得できる時間のことです。
満1歳に満たない子供を育てる女性労働者は「1日2回まで、それぞれ少なくとも30分間」の育児時間を取得することが可能です。企業によっては男性労働者でも取得できます。
本記事では、法律で定められている育児時間の内容や使い方、事業者向けに労務管理上の注意点などを解説します。
目次
育児時間とは、労働基準法で定められている育児のための時間のことを指します。同法で定められている休憩時間に加えて、女性労働者に対して認められているものです。
育児時間は、満1歳に満たない子供を育てる女性労働者が1日2回まで、それぞれ少なくとも30分間取得することができます。
子供を育てながら働く女性労働者を支援することを目的として、労働基準法では「女性保護規程」を定めています。そのなかのひとつとして育児時間があります。女性保護規定の内容は、ほかにも産前産後休業などがあります。
育児時間の具体的な使い方は、授乳するため・子供を通院させるため・送り迎えをするためなどがあります。労働時間が4時間の場合は、1日1回まで少なくとも30分間の取得が可能です。対象となる育児は、実子のほかに養子も含まれます。
育児時間の対象者は、満1歳に満たない子供(実子または養子)を育てる女性労働者です。どのような雇用形態でも対象者となります。
育児時間が規定された主な目的は「女性労働者が子供に授乳するため」であることから、原則として男性労働者は対象にはなりません。ですが、育児時間の使用用途は定められておらず授乳以外の育児も含まれることから、男性労働者の取得を認めている企業もあります。
事業者は、女性労働者から育児時間の取得申請をされた場合は必ず付与しなければなりません。これは労働基準法第67条に基づいています。
生後満一年に達しない生児を育てる女性は、第三十四条の休憩時間のほか、一日二回各々少なくとも三十分、その生児を育てるための時間を請求することができる。
上記、定められている内容を無視して育児時間を拒否する場合は、労働基準法第119条に基づき「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」に処せられる可能性があるため覚えておきましょう。
育児時間を取得した場合の給与については、法令で特に定めがありません。ですが「ノーワーク・ノーペイの原則」をもとに、育児時間分の給与は支給しないという企業が多いです。
法令で定められていないため企業が独自に育児時間を有給にすることは可能です。その場合は、必ず就業規則へその旨を記載することと従業員へ周知することを忘れないようにしましょう。
育児時間を取得できる回数についておさらいしましょう。また、取得できる時間帯に決まりはあるのかどうかも解説します。
育児時間は、女性労働者が「少なくとも30分間を1日2回まで」取得することができます。また、必ず30分間ごとに取得しなければならないわけではなく、1時間にまとめて取得することも可能です。
労働基準法における育児時間の規定は、1日8時間労働のフルタイムを想定しているものです。パートタイムやアルバイト勤務の方で労働時間が1日4時間以内である場合は、少なくとも30分間を1日1回までとされていることが一般的です。
変形労働時間制とは、一定期間において1日の労働時間を自由に設定できる制度です。主に繁忙期や閑散期が決まっているような業種で採用されています。
変形労働時間制の場合でも「1日2回まで、少なくとも30分間」の育児時間が取得できます。変形労働時間制の労働時間に合わせて、深夜や朝方など柔軟に取得が可能です。
育児時間が取得できる時間帯については、女性労働者が自由に決めることができます。30分間ずつ取得したり、1時間にまとめて取得したりできるため用途に合わせて柔軟に活用できるでしょう。具体的な育児時間の使い方は、以下のようなものがあります。
また、事後申請が認められているのであれば、子供の急な体調変化などにも対応することも可能です。
ここからは育児時間について、事業者が気を付けるべき注意点を解説します。
育児時間については労働基準法をもとに取り扱うことが基本ですが、会社の就業規則にも下記のような項目を記載しておきましょう。
就業規則に明記しておくことで、育児時間についてトラブルになった際に役立ちます。また、労働基準法第106条では就業規則などの周知義務について定められているため、従業員への共有は必ずおこないましょう。
育児時間中は、基本的に「ノーワーク・ノーペイの原則」により給与が発生しません。労働基準法にも特に定めがないため、働いていなければ発生しないという考え方が適用されています。
ですが、会社が独自に「育児時間は有給である」とすることは可能です。就業規則にてその旨をしっかりと明記して、従業員へ周知する必要があります。
同様に、男性労働者でも取得可能とすることや、事後申請を認めることも就業規則にて会社が独自に決めることができます。
育児短時間勤務とは、3歳に満たない子供を育てる労働者が希望する場合、原則として所定労働時間を1日6時間にできる制度です。
育児時間と育児短時間勤務は、対象となる労働者に違いがあります。育児時間が原則女性労働者の利用であるのに対して、育児短時間勤務は男女問わず利用できます。また、どちらも育児関連ではありますがこの2つの制度は併用が可能です。
育児時間とは、育児のために原則として女性労働者が取得できる時間のことです。満1歳に満たない子供を育てる女性労働者が1日2回まで、それぞれ少なくとも30分間取得できます。
上記の内容は労働基準法に定められており、女性労働者から申請があれば事業者は拒否することができません。また、使用用途も自由であり「始業前に保育園へ送る」や「終業時間の1時間前に帰宅する」などの使い方が一般的です。
女性労働者のみ認可そして無給であることが原則ですが、会社が独自に男性労働者でも可能にしたり、有給にしたり決めることができます。企業は育児時間について周知し、労働者の仕事と育児の両立をサポートしましょう。
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