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育児や介護による時短勤務利用時の社会保険の扱いとは?健康保険資格喪失証明書も解説!

時短勤務利用時の社会保険の扱いとは?育児・介護休業法における注意点も

監修者:岡 佳伸 社会保険労務士法人|岡佳伸事務所
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この記事でわかること・結論

  • 時短勤務制度は育児・介護の両立支援策
  • 社会保険は週20時間以上の労働で継続
  • 時短勤務でも社会保険の扱いには注意が必要

働き方改革の一環として、育児・介護と仕事の両立に注目が高まっています。時短勤務制度は従業員が育児・介護と仕事の両立を促進する制度です。一方で、時短勤務による労働時間の減少により結果的に社会保険の加入条件から外れてしまう可能性が考えられます。

今回は時短勤務利用時の社会保険の扱いを解説すると同時に、国民健康保険への切り替えに必要な健康保険資格喪失証明書の概要、さらには時短勤務制度の注意点をご紹介します。

時短勤務制度とは

時短勤務利用時の社会保険の扱いとは?健康保険資格喪失証明書も解説

時短勤務制度とは、育児や介護に従事する労働者が1日の労働時間を短縮する制度です。

9時〜17時を所定労働時間と定める会社では、時短勤務制度により9時〜15時までの勤務が可能となります(原則1日6時間)。対象者は3歳未満の子供がいる、または介護が必要な家族がいる従業員が該当します。

日本労働研究機構の調査では、時短勤務を希望する従業員が多い一方で、実際に時短勤務制度を導入している企業はまだまだ少ない傾向がみられます。

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法令に則った時短勤務制度の導入が必要

時短勤務制度は育児・介護休業法で「育児のための所定労働時間短縮の措置」として労働時間の短縮措置が規定されています。

時短勤務は原則1日の勤務時間を6時間以内としており、そのほかの代替措置には[フレックスタイム制度]や始業・終業時間の繰り上げおよび繰り下げ、保育施設の設置など子育てと仕事の両立のための支援措置が認められています。

介護による時短勤務制度は「介護のための所定労働時間短縮等の措置」として、「要介護状態の家族を介護する従業員に対して時短勤務などの措置を講じなければいけない」と規定されています。

介護による時短勤務は時短勤務の時間は特に記載されていません。また、育児による時短勤務と同様の代替措置が認められています。
介護による時短勤務は介護をする家族1人に対して3年以上の期間を2回以上行うことができます。

時短勤務での社会保険の扱いとは

時短勤務での社会保険の扱いとは

社会保険とは、健康保険や厚生年金保険、雇用保険・労災保険の総称です。

時短勤務は原則1日6時間労働のため、改正後の社会保険加入条件(週20時間以上働く)を満たしています。そのため、週5日勤務の正規雇用社員が時短勤務により労働時間が減ることで、社会保険の加入条件から外れる可能性は低いと考えられます。

それぞれの社会保険の加入条件は以下となります。
時短勤務との関連を示すため、労働時間に焦点をあてています。そのほかの加入条件は別途ご確認ください。

社会保険の加入条件
保険の種類 加入条件
健康保険 週20時間以上働くこと
厚生年金保険 週20時間以上働くこと
雇用保険 31日以上引き続き雇用が見込まれること
労災保険 従業員1人でも雇用している場合

従業員501人以上の企業の場合(従業員501人以下の企業では労使協定締結が必要)

社会保険は、性別や国籍、年金受給の有無にかかわらず、適用されます。

また、社会保険は非正規社員にも適用され、上記に定めた1週間の所定労働時間を満たせば、パートタイムやアルバイトも加入対象となります。非正規社員も時短勤務の対象とする場合、週20時間以下にならないように注意が必要です。

健康保険資格喪失証明書とは

時短勤務により週20時間労働を割ってしまう場合は全国健康保険協会が管轄する健康保険または各健康保険組合が管轄する健康保険から、国民健康保険(国保)へと切り替えなければいけません。

健康保険から国民健康保険への切り替えには「健康保険資格喪失証明書」が必要です。時短勤務により社会保険の被保険者でなくなった労働者が被保険者資格を喪失したことを証明する書類であり、国民健康保険に加入する際に使用する場合があります。

健康保険資格喪失証明書は全国健康保険協会の場合は日本年金機構のホームページからダウンロードでき、必要事項を記入したうえで最寄りの年金事務所に提出します。または、会社で喪失日を確認して証明のうえ、退職者に直接発行することもできます。

時短勤務による注意点

時短勤務による注意点

育児・介護休業法の改正では、時短勤務を希望する従業員が不利益を被る事業者の措置(解雇や減給、一方的な雇用形態の変更など)を禁止しています。また、事業者は時短勤務の労働者への[ハラスメント]防止措置の策定が義務付けられています。

健康保険や厚生年金は労使折半が義務付けられており、保険料を企業と従業員が負担します。そのため、社会保険の費用負担を理由に時短勤務者が一方的に不利益を被る行いは絶対に避けなければいけません。時短勤務制度の注意点の詳細は以下もご参考ください。

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まとめ

  • 時短勤務制度とは、1日の労働時間を短縮し、育児・介護と仕事を両立するための制度である。
  • 時短勤務制度は原則1日6時間であるため、健康保険・厚生年金保険の加入条件である週20時間以上を満たすため、理論的には社会保険から外れることは考えにくい。しかし、パートタイムやアルバイト、または諸事情により1日の労働時間が極端に減る場合は注意が必要である。
  • 時短勤務により社会保険の加入条件から外れる場合、健康保険資格喪失証明書を提出して、国民健康保険に切り替えなければいけない。
  • 企業には時短勤務を希望する社員が不利益を被る行為が禁止されている。また、時短勤務制度を導入する場合はハラスメント防止施策を策定する義務が発生する。
社会保険労務士法人|岡佳伸事務所 監修者岡 佳伸

社会保険労務士法人|岡佳伸事務所の代表、開業社会保険労務士として活躍。各種講演会の講師および各種WEB記事執筆。日本経済新聞女性セブン等に取材記事掲載。2020年12月21日、2021年3月10日にあさイチ(NHK)にも出演。
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