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失業保険の給付制限が大幅緩和!自己都合退職者がすぐ受給するには?

失業保険の給付制限が大幅緩和!自己都合退職者がすぐ受給するには?

監修者:労務SEARCH 編集部
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2025年4月から雇用保険法が改正され、自己都合退職における失業保険(失業手当)の給付制限が緩和されます。今回の改正により、雇用保険の加入者は退職後、より早く失業保険を受け取れるようになりました。

この記事では、2025年4月からの失業保険の給付制限についてわかりやすく解説します。また、自己都合退職者が給付制限期間なしで失業保険を受け取る方法も紹介します。

【2025年4月改正】失業保険の給付制限が緩和

会社員などが加入する雇用保険は、労働者が失業したときや働けなくなったときに、労働者の暮らしや雇用の安定を図るための公的保険です。雇用保険のなかには再就職手当、教育訓練給付金などがあり、そのうちのひとつに失業保険(失業手当)と呼ばれる手当があります。

失業保険とは

雇用保険の加入者が失業した際、再就職しようとする意思と能力があるにもかかわらず職に就けないなど、一定の条件を満たすときに支給される手当のこと。

失業保険にはさまざまなルールがあり、まずは失業保険がもらえるかどうかの条件を満たさなければいけません。

失業保険の受給条件
  • 離職日以前2年間に、被保険者期間が12カ月以上あること
  • 働く意思と能力があること
  • 積極的に求職活動をおこなっていること
  • 離職理由が、正当な理由のない自己都合退職や自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇(重責解雇)ではないこと

条件を満たす方はハローワークで受給手続きをおこない、7日間の「待機期間」を過ごします。これは、失業の状態にあることを確認するための期間であり、この7日間は原則として失業保険は支給されません。

そして上記の待機期間とは別に、自己都合で退職した場合には「給付制限」というものが設けられています。会社都合による退職の場合、給付制限は設けられていません。

給付制限とは

失業保険の支給決定日から7日間の待機期間終了後、さらに一定期間、失業保険が支給されない期間のこと。

給付制限期間が2カ月間から1カ月に

これまで、自己都合退職による失業保険の給付制限期間は2カ月間でした。しかし2025年4月に雇用保険法が改正され、2025年4月1日以降に退職した場合、給付制限期間は1カ月に短縮されます。

改定前

2025年3月31日以前に自己都合退職した場合

7日間の待機期間+2カ月間の給付制限期間後に失業保険を受給

改定後

2025年4月1日以降に自己都合退職した場合

7日間の待機期間+1カ月間の給付制限期間後に失業保険を受給

つまり今回の改正により、自己都合で退職した労働者も、待機期間7日間と給付制限期間1カ月を経過すれば、失業保険を受け取れるようになります。退職後、約1カ月半で失業保険を受給できるため、失業者にとっては経済的な不安が軽減されるでしょう。

過去5年間に2回以上、正当な理由なく自己都合退職をして失業保険を受給している場合や、自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇(重責解雇)の場合は3カ月間

失業保険の給付制限期間をなくすには?

なかには自己都合による退職であっても「失業保険をすぐもらいたい」と考える方もいるでしょう。今回の雇用保険法の改正では、給付制限期間の解除についても変更があり、より安易に給付制限期間なしで失業保険を受給できるようになりました。

教育訓練等を受けたら給付制限期間がゼロに

これまでは、ハローワークの公共職業訓練を受けた場合に、自己都合退職でも給付制限期間なしで失業保険を受け取ることができました。しかし公共職業訓練は、平日に毎日職業訓練校に通わなければならないなど制約が多く、就職活動との並行は困難を極めます。

そこで2025年4月から、スキルアップのために教育訓練等を受けた(受けている)場合でも給付制限期間が解除されます。通信講座や資格スクール講座も対象となるため、給付制限解除のハードルが低くなったと言えるでしょう。具体的に対象となる教育訓練等は、以下のとおりです。

給付制限の解除対象となる教育訓練等
  • 教育訓練給付金の対象となる教育訓練
  • 公共職業訓練等
  • 短期訓練受講費の対象となる教育訓練
  • 上記に準ずるものとして職業安定局長が定める訓練

上記のいずれかの教育訓練等離職日前1年以内に受けた方、または離職後に受けている方は、給付制限なしで7日間の待機期間後に失業保険を受け取れます。
2025年4月1日以降に受講を開始したものに限ります

なお、教育訓練等を受ける場合、一定の条件を満たす方は教育訓練給付金を活用できます。

教育訓練給付金とは

厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講・修了した際に、教育訓練経費の20~80%が支給される制度。

教育訓練休暇給付金が創設(2025年10月~)

4月からの給付制限期間の短縮、教育訓練等による給付制限の解除に加え、2025年10月1日からは「教育訓練休暇給付金」が新たに創設されます。

教育訓練休暇給付金とは

教育訓練を受けるために休暇を取得したとき、90日~150日間、失業保険と同等の額が支給される制度。

これまでは教育訓練給付制度により、受講料の補助はされていましたが、教育訓練中の生活費を支援する制度はありませんでした。しかし教育訓練休暇給付金の創設により、従業員は仕事を辞めることなく、安心してスキルアップに専念できる機会を得られるようになります。対象となるのは、5年以上雇用保険に加入する被保険者が、教育訓練のために無給の休暇を取得した場合です。

教育訓練を受けておくことで失業保険の給付制限も解除されるため、よりスムーズなキャリア形成が可能になるでしょう。

今回の雇用保険法改正に伴う企業への影響

今回の給付制限期間の短縮を中心とした雇用保険法改正は、企業と労働者双方にさまざまな影響を与えると考えられます。企業にはどのような影響があるのか、メリットとデメリットを見ていきましょう。

企業にとってのメリット

失業保険の給付制限期間が短縮され、労働者が早期に失業保険を受けられるようになることは、結果として労働者の生活安定に繋がり、社会全体の安定に貢献する可能性があります。人事・労務担当者としても、退職者の生活を気遣ううえで、制度がより手厚くなることは良い側面と言えるでしょう。

また、教育訓練給付制度も充実されることで、企業としても従業員のスキルアップを支援する意義が高まります。研修制度の充実や資格取得支援などを通じて、従業員の成長を後押しする企業文化を醸成するきっかけになるかもしれません。

企業にとってのデメリット・対応すべきこと

失業保険における給付制限の存在は、自己都合で退職を希望する労働者にとって、経済的な不安材料のひとつとなっていました。しかし今回、失業保険の給付制限期間が1カ月間に短縮されることで、これまで「すぐに失業保険がもらえないので退職後の生活が心配」と退職を躊躇していた労働者が、より安易に自己都合退職を選択する可能性が高まるかもしれません。

特に、人材確保が課題となっている中小企業にとっては、貴重な人材の流出が増加するリスクが高まるでしょう。企業の人事・労務担当者は、自己都合退職者の増加に備え、採用計画を見直す必要があるかもしれません。

まとめ

2025年4月より、失業保険の給付制限が緩和されました。具体的には、給付制限期間が1カ月に短縮され、教育訓練等を受講すれば給付制限が解除されます。これは労働者のスキルアップを図るためであり、今後はより一層、教育訓練等の利用者が増えることが期待されます。

一方で企業にとっては、自己都合退職の増加という新たなリスクに対応し、従業員の定着率を高めるための努力が求められることになります。人事・労務担当者は、労働者と企業双方にとってより良い雇用環境の実現を目指しましょう。

監修者労務SEARCH 編集部

労務・人事・総務管理者の課題を解決するメディア「労務SEARCH(サーチ)」の編集部です。労働保険(労災保険/雇用保険)、社会保険、人事労務管理、マイナンバーなど皆様へ価値ある情報を発信続けてまいります。
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