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【4月~】3歳になるまでテレワークが努力義務に!企業の対応を解説

【4月~】3歳になるまでテレワークが努力義務に!企業の対応を解説

監修者:労務SEARCH 編集部
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2023年5月、厚生労働省から「子供が3歳になるまで、従業員がテレワークを選べるようにすることを企業の努力義務にする」という方針が発表され、大きな話題を呼びました。そしてこれは2024年の育児・介護休業法の改正案に盛り込まれ、2025年4月1日より施行されます。

この記事では、育児のためのテレワークの努力義務化について、この施策の具体的な内容や背景、実際に企業でテレワークを導入する際の流れなどをわかりやすく解説します。

【2025年4月施行】子供が3歳まではテレワークが努力義務に

2024年6月、仕事と育児を両立できるように支援する「育児・介護休業法」が改正され、2025年4月1日から段階的に施行されます。そのなかに、


改正の概要

3歳になるまでの子を養育する労働者に関し事業主が講ずる措置(努力義務)の内容に、テレワークを追加する


といった内容も含まれており、子供が3歳になるまで従業員がテレワークを選択できるように措置をとることが、企業に努力義務化されることになりました。この改正により、3歳未満の子供を育てる従業員は、子供の送迎などがあっても勤務時間を短縮せずに済む、通勤時間を削減できるなど、仕事と育児の両立を目指します。

テレワークができない業種・職種の場合はどうなる?

今回の改正は、3歳未満の子供を育てる従業員がいる場合、必ずテレワークをさせなければならないものではありません。あくまで、仕事と子育ての両立を支援するための選択肢を増やすという考えです。

そのため、テレワークが困難な業務に就いている3歳未満の子供を育てる従業員について、テレワークができる職種に配置転換することなどは企業に求められていません。

そもそも「努力義務」とは?

努力義務とは、法律の条文で「~するよう努めなければならない」「~努めるものとする」と規定された内容を指します。企業には積極的に努力することが義務づけられますが、法的拘束力や罰則がなく、どの程度対応するかは企業ごとの裁量に委ねられています。

今回の育児のためのテレワークの導入も、法令上、内容やテレワークの頻度などの基準は設けられていません。テレワークの措置をとれない職種である場合は、テレワークの措置の対象を限定することが認められています。

今回の改正におけるテレワークのルールとは

厚生労働省は、テレワークの実施場所は自宅を基本としつつ、企業の就業規則などで定める場所(サテライトオフィスなど)も含むとしています。就業中は子供を保育所などに預けることを前提としており、子供が自宅にいながらテレワークすることを想定していません。就業に集中しやすい環境を作ったうえで、テレワークをおこなう必要があります。

現行の仕事と育児の両立支援制度との組み合わせ

今回の施策は、現行の育児休業制度や短時間勤務制度などに、テレワークという選択肢を追加するという位置づけです。3歳未満の子供をもつ従業員が利用できる、仕事と育児の両立支援としては、以下のような制度があります。

制度の概要
育児休業制度 原則として、子供が1歳の誕生日を迎える前日まで取得可能です。夫婦で育休を取得する場合は、子供が1歳2ヶ月になるまで延長できます。
短時間勤務制度 従業員から申し出があれば、1日の所定労働時間を6時間とすることが法律で定められています。子供が3歳に達するまで取得可能です。
残業(所定外労働)の免除制度 子供が3歳以上になると対象から外れますが、小学校入学前までは対象に含めるよう、企業に努力義務が課されています。
時間外労働
深夜業務の制限
小学校就学前までの子供をもつ従業員が申請した場合、月24時間、年150時間を超える時間外労働や、22時~朝5時までの深夜労働が制限されます。

子供が3歳までテレワークが努力義務化される背景

今回、育児のためのテレワーク導入が努力義務化されたのには、以下の2つの背景が考えられます。

少子化問題の深刻化

日本では少子化問題が深刻化しており、2024年の出生数は68.5万人と、9年連続で過去最少を記録しました。合計特殊出生率も1.15を割り込み、少子化に歯止めがかからない状況です。

厚生労働省の調査によると、女性が妊娠・出産を機に仕事を辞めた理由として「家事・育児により時間を割くために辞めた」が最も多く、次いで「仕事を続けたかったが、仕事と育児の両立の難しさで辞めた(就労を継続するための制度がなかった場合を含む)」が多いようです。

この調査結果から、現状は仕事と育児を両立できる働き方が浸透しているとは言えず、これが深刻化する少子化問題や女性のキャリア形成の妨げに繋がっているでしょう。

テレワークへのニーズの高まり

テレワークは新型コロナウイルスの流行で急速に広がり、2020年には実施率が31.5%にのぼりました。しかしコロナの流行が落ち着くとともに、テレワークの実施率も年々下がっており、2025年1月には14.6%まで減少しています。

ただしテレワークは、離職者が仕事を続けるために重要と考える支援やサービスとして、一定の割合で求められていることが厚生労働省の調査で明らかとなりました。また企業のなかには、テレワークを育児との両立のために活用する事例もあります。

POINT
テレワークは働き方に関する福利厚生で最も人気

弊サイトが、20代以上の働く男女300名を対象に実施した『福利厚生に関するアンケート調査』においても、働き方に関する福利厚生については「リモートワーク(テレワーク)」を求める人が最も多い結果となりました。

勤務先にあると最も嬉しい働き方に関する福利厚生は何ですか?

これらの背景から、仕事と育児の両立を支援し、女性が働き続けやすい環境を整備するために、テレワークの推進が重要視されています。

人事・労務担当者必見!育児のためのテレワーク導入の流れ

今回の改正に伴い、3歳未満の子供をもつ従業員を対象にテレワークを導入する場合は、以下の流れで進めていきましょう。

育児のためのテレワーク導入の流れ

  1. 現状の把握、テレワーク導入の検討
  2. 就業規則の改定
  3. 労使協議
  4. IT環境の整備、コミュニケーション手段の確保
  5. 従業員への周知・研修

現状の把握、テレワーク導入の検討

まずは、自社の従業員の働き方や育児に関するニーズを把握します。従業員アンケートやヒアリングなどを実施し、現状の問題点や課題を明確にしましょう。

現状の把握の結果を踏まえ、テレワーク導入の可否を検討します。テレワークが可能な業務範囲や、対象となる従業員の範囲などを具体的に検討しましょう。

就業規則の改定

テレワークを導入する場合、就業規則の改定が必要になります。テレワークに関する規定を新たに設け、労働時間や評価方法、セキュリティ対策などを明確に定めましょう。

評価方法については、従業員の能力や成果を適切に評価できる人事評価制度に見直す必要があります。成果主義的な評価を取り入れるなど工夫をしましょう。

労使協議

テレワーク導入にあたっては、労働組合や従業員代表との十分な協議が必要です。従業員の意見を聞きながら、制度設計を進めましょう。

IT環境の整備、コミュニケーション手段の確保

テレワークに必要なIT環境を整備します。PCやネットワーク環境の整備、セキュリティ対策などをしっかりとおこないましょう。テレワークによるコミュニケーション不足を解消するために、Web会議システムやチャットツールなどを導入し、円滑なコミュニケーションを促進しましょう。

従業員への周知・研修

テレワーク制度の内容や利用方法について、従業員への周知・研修を徹底します。制度の目的やメリット、注意点などを理解してもらい、円滑な運用を目指しましょう。

まとめ

2025年4月1日より、企業に3歳未満の子供をもつ従業員に対しテレワークを選択できるよう措置を講ずることが努力義務とされます。あくまで努力義務であり、業種や職種上、テレワークが困難な場合は配置転換などの対応は求められていません。

しかし、育児をおこなう従業員がテレワークを選択できるようにすることで、仕事と育児を両立できる、女性の離職率が下がる可能性があるなどのメリットがあります。企業はいま一度、従業員に対しヒアリングを実施し、働きやすい社会の実現に繋げていきましょう。

監修者労務SEARCH 編集部

労務・人事・総務管理者の課題を解決するメディア「労務SEARCH(サーチ)」の編集部です。労働保険(労災保険/雇用保険)、社会保険、人事労務管理、マイナンバーなど皆様へ価値ある情報を発信続けてまいります。
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