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人材・組織人事部の担う業務のなかでも、採用業務は組織や事業全体に関わる重要な業務であるといえます。人手不足や転職市場の流動化により、採用業務の専門性が増しています。
今回は人事部の役割から採用業務に必要となるスキルや業務フロー、および今後の採用業務対策をご紹介します。
目次
採用業務は、企業が事業計画を達成するうえで、欠かせない業務となります。採用業務の概要や採用業務フローの流れを把握し、採用計画に沿った確実な採用を行う必要があります。
採用業務とは、新卒入社、中途入社問わず、「ヒト」を雇用するために採用計画立案、採用目標の可視化、募集、面接、内定者の決定から入社までの一連の業務を指します。会社の事業計画の一部を担う仕事であり、従業員の人生を大きく左右する業務のため、人事業務のなかでも重要な業務として認識されています。
採用業務のフローは「採用計画の立案」、「母集団の分析・形成」、「応募者の選定、面接」、「内定者決定、内定者フォロー」の4つのフェーズに分かれています。それぞれの段階で、採用状況をある程度予測しておくことで、採用計画を下回る事態を避けられます。どのくらいの割合で次のステップに進めるか、業務を進めながら把握しておく必要があります。
経営課題や事業戦略から採用における目的を明確化したうえで採用計画を立てます。採用にかける予算に応じて年間の採用計画が策定されるため、予算を中心に採用活動の内容・スケジュールを組み立てましょう。
また、自社が求める人材を明確にし、対象となる人材にとっての自社の魅力を明確に定める必要があり、求める人物像と自社の魅力をもとに、候補となる母集団を形成していきます。
採用計画のなかで決定した採用候補者の人物像と自社の魅力から、もっとも効果的かつ予算内に収まる採用手段を決定します。自社が求める採用候補者が多く集まる求人ポータルサイト、説明会やセミナーを選定・活用しましょう。
また、応募者の数が多い、採用コストが安いという観点だけでなく、求めるスキルを有する人材がいるか、自社が発信する情報に興味を持ってもらえるか、志望度の高い人が応募してくれそうか、という点も考慮しなければなりません。
母集団から応募者を収集できれば、書類選考や面接を通じて応募者の選定に移ります。このとき、採用管理ツールを用い、応募者情報の管理方法の一元化、自動化・効率化、応募から内定までにかかる期間の短縮を目指しましょう。また、応募者の情報は機密性の高い個人情報となるため、応募者の個人情報が漏洩しないよう、セキュリティ体制を万全にする必要があります。
現在は売り手市場であり、応募者は複数企業の選考を受けています。その際、応募から内定までの期間が長いと、応募者は早く内定が出た企業に流れてしまう可能性があるため、応募から内定までの期間をできるかぎり短縮しましょう。
内定者の選定が終了したら、即座に内定者に通知し、入社意向を確認します。また、他社の選考と並行している場合は、それぞれいつ頃に結果が判明しそうか確認しておくことも重要です。
同時に内定者が「この会社に入りたい」と思ってくれるようなフォローを行いましょう。自社への入社の意向が固まっていないようであれば、面談を行い、内定者の不安を払拭する対応が必要です。また、社内見学制度を作り、実際に働いている社員の姿を見せ、将来、会社で活躍している姿を想起させてあげることも効果的です。
採用業務は、「企業の顔」として説明会やセミナーに立つ華やかなイメージがある一方、社員と応募者のスケジュール調整やきめ細やかな対応が求められます。そのため、採用業務には専門性の高いスキルが必要とされます。
採用活動には、各種労働・雇用に関する法令の知識が必要です。求人ポータルサイトで募集をかける際には、自社の求人原稿に掲載できない文言が記載されていないかを確認する必要があります。また、説明会での質問などで不用意に法令違反に該当するような回答をしないよう、労働関連の法令を理解しておかなければならないため、以下のような法令は、必ず押さえておきましょう。
「男性のみ」、「女性歓迎」などの表記から、「看護婦」「営業マン」といった性別を感じさせる職種名を使用すること、「男性2名、女性1名募集」のように性別による人数制限を設けること、「男性は経験者のみ、女性は未経験者歓迎」という応募条件の差異なども掲載できません。男女雇用機会均等法を確認しましょう。
「28歳以下の方のみ」「若い方歓迎」など
※ただし、例外事由の第3号に該当する場合は可能
「日本人のみ募集」「コミュニケーション能力が高い人」などの表記は、特定の人を傷つけるような表現は掲載できません。また、人種などによって差別することも禁じられています。
【参考】厚生労働省「労働者の募集及び採用における年齢制限禁止の義務化に係るQ&A」
また、各職種に対する知識、理解も必要です。ソフトウェア制作事業を手掛けている場合、制作にかかわる言語は複数存在します。応募者のスキルや経歴を見て、自社のソフトウェア制作に必要なスキルがあるかを評価するためには、プログラミング言語に関しての基本知識も必要です。
プログラミングに限らず、どの職種に対しても、応募者のスキルの程度がわかるように各分野で求められる基本知識を身に着けておきましょう。
採用面接は、基本的に人事からの質問に応募者が回答する形で進行します。その際、自分が聞きたいことを的確に相手から聞き出すための質問力が必要となります。
相手の本音や志望動機を引き出すためにどういう聞き方がよいか、面接の雰囲気づくりが必要かという自分の質問力や面接のあり方を改めて見直すことも重要です。
採用面接では、一次面接の面接官は人事担当者が担い、二次面接以降は現場の管理職や経営層が担う、または同席することが一般的です。そのため、二次面接を実施する際は一次面接の内容を管理職や経営層へ伝達する必要があります。
人事は経営層や現場社員に近い立場であるため、経営層や現場社員と密にコミュニケーションを取る必要があり、高度なコミュニケーション能力が求められます。さらに現場の管理職と日々コミュニケーションを取り、新入社員が職場に馴染んだかどうか、入社後のフォローに必要な情報も収集しなければなりません。人事は多くの人と関わりを持ち、業務を進めるため、どんな人とも円滑にコミュニケーションが取れる能力は必須です。
効率的かつ質の高い採用活動を行うためには、人材情報サービスの情報を迅速に収集し、活用する能力が必要です。人事向けサービスは、求人ポータルサイトから労務管理ソフトまで数多く存在するため、それぞれの強みや弱みを把握し、自社に採用活動に適した環境を事前に構築しておくことも重要です。
採用活動における課題や問題点には、コスト、労力、ミスマッチの3点があげられます。現在、多くの応募者が求人ポータルサイトを活用しており、最低でも出稿費用が必要となります。また、人事採用担当者および採用活動にかかわる現場の従業員の労力や時間を使うため、従業員の業務量を調整しなければなりません。
さらに新入社員の希望と会社のミスマッチが起きると、採用や研修にかかったコスト・労力がむだになってしまい、退職後の処理などで業務も増えてしまいます。可能なかぎり、こうした課題を回避できるよう業務を見直しましょう。
人事の業務は、採用業務だけではなく、社会保険加入手続きやマイナンバーの収集など、人事労務管理業務が多く発生します。人事労務管理業務は多くが定型業務であり、自動化・効率化できる業務でもあります。人事担当者がすべて手作業で処理する必要があるか、従業員に何度も書類を提出させる必要があるかなどを今一度精査し、労務管理システムを活用して業務フローを見直しましょう。
採用業務には、多くの時間とコストが必要です。母集団形成のフェーズだけをとっても、求人ポータルサイトに掲載するために求人媒体側の担当者と連絡・打ち合わせをし、原稿を確認する必要があります。また、説明会を担当する人事担当者や現場社員、管理職との時間調整から、説明会で話す内容の整理や資料の作成、会場の手配、説明会開催の周知など業務が複数存在します。
また、面接に参加する従業員との時間調整業務や事前打ち合わせなど、多くの時間とコストが必要です。調整業務のフローを整理・効率化したり、採用業務に関わる人数を可能な限り減らしたりしなければなりません
採用担当者の業務は多くが調整業務になるため、応募者や経営層、他部署の管理職や協力社員との密なコミュニケーションが必要となります。採用業務では、協力してくれる社員の業務時間を考える必要があるため、作業が途切れてしまうこともあり、長時間労働に陥りやすい業務といえます。
また、採用管理ツールや求人サービスも複数存在し、それぞれの仕様や使い方を把握し、しっかりと運営するためにはスケジュールの決定や内容確認にも時間が必要となり、業務量も増えてしまいます。どの採用管理ツールや求人サービスが自社の採用活動にとって効果的かを見極め、優先する業務とやめるべき業務を迅速に判断していくことも重要です。
人事部のなかでも採用担当者の業務量は多くなりやすく、人手不足が進行するなか、採用業務の実施が難しくなるにつれて、人事の業務は採用活動に多くを割くようになります。
しかし、今後は効率的な採用活動の実施のほか、定型業務の自動化・効率化も考慮しなくてはなりません。そのため、採用管理システムの導入・活用、対外的な情報発信の強化や採用代行会社の活用も視野に入れる必要があります。
採用管理システムは、応募者の採用状況を管理できる機能を備えています。各求人ポータルサイトと連携し応募状況の確認、選考状況の共有、時間調整機能など採用業務を効率化する機能を利用できます。導入コストや機能性、セキュリティ体制を確認し、自社に適したものを選びましょう。
煩雑で時間のかかる作業が多い採用業務は、採用管理システムで一元管理し効率化することにより、人事担当者への業務負荷が軽減します。また、選考結果通知や採用条件の策定など間違えてはいけない作業も多くあります。連絡漏れや面接日の相違などの誤りは採用の機会損失に繋がりやすいため、採用管理システムを活用し、徹底管理しましょう。
採用業務以外の人事労務管理業務は、労務管理システムを活用し、自動化・効率化すると効果的です。社会保険の加入手続きやマイナンバー処理などの定型業務の自動化・効率化は、残業時間の削減、ペーパーレス化を実現できます。
また、煩雑な入力作業を従業員に依頼する手間も省けるため、人事だけでなく会社全体の業務効率向上も期待できます。定型業務を人事労務管理システムで一元管理することで、人事担当者はコア業務である採用活動に集中することができます。
【参考】オフィスステーション
採用業務は応募者の選定だけではありません。自社の求める人物に自社が選ばれるようにブランディングしていく採用広報も必要です。近年では、SNSを活用して多くの人に企業を身近に感じてもらう、社風を知ってもらうなどの取り組みが実施されています。また、人材採用専門のオウンドメディアや「中の人」といった実際に会社で働く人のSNSアカウントを活用した対外的な情報発信も積極的に行い、自社に興味を持ってもらえるような活動が必要です。
採用業務は、人手不足や転職市場の流動化により、業務が複雑化・高度化しています。また、人事担当者にも高度な知識とスキル、経験が必要とされており、採用業務自体をアウトソーシングし、採用代行に依頼する企業も増えています。
採用代行業者は多くの採用業務を経験し、専門性が高く、さまざまな採用手法を知っています。自社の求める人材を効率的に集める方法を熟知しており、経験もノウハウも豊富です。採用業務も専門家に依頼することで、人材マネジメントや社内制度の整備などの人事業務に注力することが可能となります。
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