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労働者死傷病報告とは?休業4日未満の場合は?記入例や提出期限について徹底解説!

労働者死傷病報告とは?休業4日未満・以上の記入例と提出方法を解説

監修者:油原 信 えがお社労士オフィス
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この記事でわかること・結論

  • 労働者死傷病報告の提出が必要になる場合
  • 労働者死傷病報告の記入例
  • 労働者死傷病報告の提出先や誰が提出しないといけないのか

労働者死傷病報告はどのようなときに提出する必要があるのでしょうか?また、記入例や提出期限、提出先はどこなのでしょうか?

もし労働者死傷病報告の提出を怠ると、労働安全法違反で刑事責任が問われることもあります。「うっかり提出を忘れてしまった」では許されない、労働者死傷病報告の提出の仕方について確認しましょう。

労働者死傷病報告とは?提出が必要なケース

労働中、不慮の事故等によって従業員が負傷してしまった場合の手続きについてご存じでしょうか?よくある間違いは「病院への労災保険の手続きが終了した時点で手続きは完了した」と勘違いして、事業者側が手続きを終わらせてしまうケースです。

労働中の事故等は労働者死傷病報告の提出が必要

従業員が労働中に負傷または中毒や疾病にかかったことにより、死亡もしくは休業を要した場合、事業者は「労働者死傷病報告」の提出が必要です。

労働者死傷病報告とは、労働災害等の原因により労働者が死亡または休業した場合に提出する書類です。労働災害統計の作成や事故等の原因の分析、再発防止のための対策の検討に生かされます。

提出が求められるのは、次の4つのケースです。

労働者死傷病報告の提出が必要なケース

  • 労働者が労働災害により、負傷、窒息または急性中毒により死亡しまたは休業したとき
  • 労働者が就業中に負傷、窒息または急性中毒により死亡しまたは休業したとき
  • 労働者が事業場内またはその附属建設物内で負傷、窒息または急性中毒により死亡しまたは休業したとき
  • 労働者が事業の附属寄宿舎内で負傷、窒息または急性中毒により死亡しまたは休業したとき

労働者死傷病報告の記入例

労働者が労働災害によって負傷し休業した場合、その日数によって労働者死傷病報告の提出期限が異なります。

労働災害による休業日数が4日以上の場合

一般的に、その労働者の休業日数が4日以上の場合は、その事実が発生してから遅滞することなく様式第23号の提出が必要です。

様式第23号(休業日数4日以上)

【参考】労働者死傷病報告(休業4日以上)様式

労働災害による休業日数が4日未満の場合

一方で休業日数が4日未満の場合は、1月から3月、4月から6月、7月から9月、10月から12月の期間における当該事実について、それぞれの期間における最後の月の翌月末日までに、様式第24号の提出が必要となります。

様式第24号(休業日数4日未満)

【参考】労働者死傷病報告の書き方(一般)

それぞれの事象についての緊急性から、提出期限とその様式が異なることに注意して、手続きをおこないましょう。

労働者死傷病報告は誰が出す?提出方法

労働者死傷病報告の提出先は、事故のあった事業所を所管する労働基準監督署です。また、書類を提出することとなる報告者については、死傷病の労働者本人ではなく、所属する事業所の事業者になります。

労働者死傷病報告の提出にあたっては、原則として遅滞なく提出する必要があるとされていますが、この”遅滞なく”とは「事情の許す限り速やかに」という意味があります。一般的には1週間から2週間以内程度と考えられていますので、この期間内に提出を行うようにすると間違いがありません。

労働者死傷病報告の提出について
提出先 事業所を所管する労働基準監督署
報告者 所属する事業所の事業者
提出期限 休業4日以上:原則、速やかに(一般的には1~2週間程度)
休業4日未満:四半期ごとの翌月末日まで

また、1カ月以上の期間が経過している場合は、提出が遅れたという理由を示すため、報告遅延理由書が求められることもありますので、正当な理由が実証できない限り、期間内での提出を心がけましょう。

労働者死傷病報告をしないとどうなる?

そもそも事業主は、労働者を雇用するにあたって労災を防止するための対策を講じなければなりません。具体的には、労働安全衛生法に基づく安全衛生管理責任を果たすということになります。

この法律に触れてしまった場合、事故が発生したかどうかにかかわらず、労働安全衛生法等によって刑事責任が問われることが考えられます。また、労災事故が発生した場合は、事業主は労働基準法によってその補償責任を負う必要があります。

労災保険に加入している場合、労災保険による給付が行われますが、このとき事業主は、労働基準法上の補償責任を免れることになります。実際にあってはならないことですが、労災保険に加入していない場合は、労働基準法上の補償責任を負うことになります。

労災かくしと見なされる可能性あり

もし労働者死傷病報告を怠った場合、労災についての不法行為等の理由により損害賠償請求が行われることもあります。事業を行ううえで社会的な信用はなくてはならないものですが「労災かくし」と見なされることもあるのです。提出にあたっては十分に注意しましょう。

場合によっては、上記のような法律による補償の責任とは別に、労働災害への対処に関して不法行為や安全配慮義務違反などの債務不履行があった場合、事故等に関与した労働者から民法上の損害賠償請求がなされることも考えられます。

ほかにも、労災事故が発生した場合、労働基準監督署にその事故を報告しなかったり、実際の事故の内容とは異なるような虚偽報告を行ったりした場合にも、刑事責任が問われ、いわゆる業務上過失致死傷罪等に問われることがあります。

特に労災かくしについては、労働災害の比較的多い建設業の現場で起きやすいと考えられています。建設の事業を行う事業主は、十分に注意しておきましょう。

まとめ

今回は労働中に生じた事故等、いわゆる労働災害での労働者の死傷病等について、労働基準監督署に提出が必要な書類である労働者死傷病報告について解説しました。

休業する日数によって提出の様式や期限が異なるなど、細かい部分も把握しておくことが必要な書類です。よく確認しておくようにしましょう。

労働者が安全に働き続けるためには、事故が起こらないような環境整備はもちろんのことですが、万が一の不慮の事故等に備えての保障は最低限守られるべきものですよね。雇用主たるもの、労働者が気持ちよく働き続けられる環境の整備に努めたいものです。十分に留意し、手続きを遅滞なく行うようにしていきましょう。

えがお社労士オフィス 監修者油原 信

大学卒業後、日本通運株式会社にて30年間勤続後、社会保険労務士として独立。えがお社労士オフィスおよび合同会社油原コンサルティングの代表。
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