この記事でわかること・結論
- 育休中の賞与支給の有無
- 減額のケースや社会保険料の取り扱いについて
この記事でわかること・結論
育休中は労働によって企業が利益を得ていない状態のため、賞与(ボーナス)の支給が不要と考える労務担当者も少なくありません。しかし、企業の就業規則によっては他の従業員と同様に賞与の支給が必要です。
本記事では、育休中の賞与の支給は必要かどうかの判断のポイントや、支給の条件、減額の可否などについて詳しく解説します。
目次
育休中の従業員に対して賞与の支払いが必要なのは、就業規則で賞与の「支給基準」や「取得に必要な手続き」、「支給期間」などを明らかにしているケースです。
この場合、育休中かどうかに関係なく支給基準を満たしたすべての従業員に対し、賞与を支給する必要があります。これは賞与が賃金の一部として扱われるためであり、支給しない場合は賃金の不払いを意味します。
就業規則で賞与の支給基準や金額などを定めていない場合には、賞与の支払義務はありません。ただし、育休中の従業員にのみ賞与を支払わないことは「不利益な取扱い」とみなされ、育児・介護休業法第10条、第16条及び第16条の4に抵触する可能性があります。
また、男女雇用機会均等法の第9条では以下のように定められています。
事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
このように、育休中の従業員にのみ賞与を支払わない、減額するような扱いは認められていません。
育休中の従業員は出社していないため、賞与の支給額の減額を検討するケースもあるでしょう。育休中の従業員に支給する賞与の額は、状況次第では減額できます。減額できるのは以下の2つのケースです。
賞与の算定において、実際に勤務した日数を考慮するのであれば、育休中の従業員の賞与の支給額は減額となります。ただし、育休を取得したことを理由に実際に勤務した日数を計算に含めないことは、関連法律で定められた「不利益な取扱い」に該当する恐れがあります。
労働契約書や就業規則に、業績によっては賞与の減額や不支給がある旨を定めている場合、業績悪化を理由に賞与を減額または不支給にできます。
ただし、実際には業績が悪化していないのに、業績が悪化していると伝えて賞与を支給しないことは違法とみなされる可能性があります。
また、従業員から証拠となる資料の開示を求められたにもかかわらず開示しなかった場合、業務に対するモチベーションの低下につながりかねません。そのため、業績悪化を理由に賞与を支給しない場合は、根拠を提示できるように準備が必要です。
育休中の従業員の社会保険料については、免除制度があります。満3歳未満の子の養育を目的とした育児休業を取得している場合、育児休業期間中に事業主が年金事務所に申し出ることで健康保険・厚生年金保険の保険料が免除されます。
2022年10月に、社会保険料の免除要件が見直されました。従来では、育児休業を開始した日の属する月から終了日の翌日が属する月の前月までが免除期間でした。
これに加えて、育児休業を開始した日の属する月において、14日以上の育児休業を取得した場合もその月の社会保険料が免除されるようになりました。
改定前
育児休業を開始した日の属する月から終了日の翌日が属する月の前月までが社会保険料免除期間でした。
改定後
改定前の要件に加えて、育児休業を開始した日の属する月において、14日以上の育児休業を取得した場合、その月の社会保険料も免除になります。
また、月末の時点で育児休業を開始していれば賞与にかかる社会保険料は免除されていましたが、要件に「育児休業の期間が1カ月以上」が追加されました。
たとえば、月末時点で育児休業中であっても、育児休業期間が15日や20日の場合は社会保険料は免除されません。これらの変更点を確認のうえ、育休中の従業員に伝えてトラブルを防ぐことが重要です。
就業規則や労働契約などで賞与の支払条件や期間などを規定している場合、育休中かどうかにかかわらず、賞与の支払いが必要です。ただし、育休期間が賞与の算定期間に含まれている場合は、日割り計算で賞与の減額ができます。
賞与の支給においては、雇用保険料や所得税などは通常どおり控除、社会保険料は免除制度を利用した場合は控除しません。今回、解説した内容を参考に、育休中の賞与の支給について適切に対応しましょう。
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