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労災隠しはなぜばれる?企業で急増中の労災トラブルとは

労災隠しはなぜばれる?企業で急増中の労災トラブルとは

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「労災隠しは犯罪です」近年このようなキャッチコピーのポスターを見かけた方もいるのではないでしょうか。

労災隠しとは労災事故の発生を隠すため、事業者側が「労働者死傷病報告」の提出をしなかったり、虚偽の報告をしたりすることです。

労災隠しは意図の有無に限らず犯罪であり、断固としておこなってはいけません。しかし業種によっては労災をあまり利用しないがために、正しい取り扱い方法を知らない場合もあります。その結果、意図しない労災隠しをおこなっている企業もあるようです。

今回は労災トラブルなど各種労働問題に詳しい『竹内社労士事務所』の竹内 睦先生に、労災隠しや各種トラブルについてお話を伺いました。

この記事でわかること

  • 企業で急増している労災トラブルとは
  • 「労災を申請すること」にリスクはあるのか
  • 「この程度のけがなら健康保険でいいか」が企業に招く大問題
  • 労災トラブルをおこさないために企業がすべきこと
竹内社労士事務所 監修者竹内 睦

中心業務は『会社の憲法』である就業規則の作成と労務問題解決に向けた相談など。「法律で保護されない経営者を守る!」を信条に『社長を守る会』を発足し、クライアント企業の抱えるさまざまな問題を解決している。顧客向けニュースレター配信部数は4,000社以上、会社を守る就業規則の作成実績は累計1,600社を超える(2022年1月時点)。
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労災隠しだけじゃない、労災絡みのトラブルは近年ハラスメント関連が急増中

―労災トラブルといえば、「労災隠し」が代表的です。企業目線で考えたとき、労災トラブルにはほかにどういったものがあるのでしょうか?

色々ありますが、パワハラセクハラを起点とした訴えが今の時代は増えています。

企業目線に立ったとき、労災絡みのトラブルで最もリスクがあるものは損害賠償請求が起きるようなトラブルです。たとえば、仕事中にけがをして働けなくなり、使用者責任を問うような損害賠償請求を起こされることがあります。

こうした訴えは、数は少ないですが経済的にもイメージ的にも企業のダメージは大きいと思います。

労災隠しインタビュー

またパワハラやセクハラなど「ハラスメント」による労災トラブルも増加傾向にあります。「上司のパワハラで精神疾患を患った」といったものです。こうした請求は1989年にはほぼ0件でしたが、現在は年間2,000件を超えています。

ちなみに、パワハラの加害者は男女半々だといわれています。男性は威圧的で暴力的なパワハラをおこない、女性は陰湿ないじめをおこなうといわれています。2022年4月には中小企業にもパワハラ防止法が適用(大企業は2020年6月)されるようになりましたが、こうした時代変化を踏まえてのことといえます。

企業が労災保険の使用をためらう理由は馴染みのなさから

―企業の加入が義務づけられている労災保険。しかし、企業によっては労災保険の使用を嫌がるケースがあると聞きます。その結果、従業員に何かあったときにも適正な対応ができず、労災隠しにつながります。そもそも企業側はなぜ労災を怖がったり嫌がったりするのでしょうか?

一つは、馴染みがなさすぎて「使ってはいけないもの」というネガティブなイメージが先行している場合があります。デスクワーク中心の業種ほど、労災保険は普段馴染みがありません。その結果、加入はしているけれど使いどきを知らないということはあるでしょう。

また労災トラブルに発展すると、金銭的なダメージと合わせて、企業への信頼感の喪失というリスクがあります。これは職場で働く同僚だけでなく、その家族といったところにも広がります。「遠方で働くうちの息子は大丈夫なのかしら」なんて、離れた場所で暮らす親御さんが心配することもあります。

従業員と企業の信頼感にヒビが入りかねませんので、労災を起こしておおごとにしたくないという企業はあるでしょうね。

―確かに労災トラブルがニュースになると、社会問題に繋がることもあります。そうした企業イメージ損失のリスクがあるから、隠したり否定したりするということでしょうか?

否定したり隠したりする理由がすべてそれとはいいません。ただ大企業ほど企業イメージには敏感なのは確かです。数年前、ある自動車メーカーで過労による自殺があり、企業が訴えられたとニュースで大々的に報じられたことがありました。

その際、まだ100%企業側が悪いと決まったわけではなかった段階で、社長直々にご遺族へ謝罪に向かい、人事制度の見直しとあわせて和解をされたと聞きました。

こうした行動は問題の長期化を避ける意味とあわせ、企業イメージや働く従業員への影響も考えてのことだったのではと推測されます。

労災保険の使用は企業が持つ権利

―お話を伺っていると、労災を知らずに適正な対応ができないことの方が怖い気がしてきました。まずは適切な制度理解が大切なのですね。

そうですね。日本の社会保険制度は、健康保険は企業と個人が折半し、労災保険は100%企業負担で運用されています。業務中のけがや病気は労災を使い、それ以外は健康保険を使うことが決まっています。企業も従業員もまずこの基本的な制度を理解することです。

また「労災を使うと労働基準監督署が調査に来るのでは?」と恐れる方がいますが、それは都市伝説です。ただし、重大な事故をおこした場合は来ます。しかしこれも、事故に対して適切な処置をおこなっていれば調査に応じればいいだけです。

労災保険は企業側が使う権利を持った制度です。労災保険を使うことを恐れるよりも「この程度のけがなら健康保険でいいか」で済ませるほうが私は怖いと思っています。気づかないうちに労災隠しにつながり、のちのち大問題になる可能性があるからです。

労災隠しが起きないために企業としてやるべきこととは

―意図しない労災隠しや各種労災トラブルが起きないために、企業としてやれることには何があるでしょうか?

まずは労災保険法を知り、法令遵守を徹底することです。現場で起きた事故はどんな小さなものも労災保険です。企業によっては労災申請するデメリットと秤にかけるスタンスの会社もあると聞きますが、そもそも間違っています。

また、労災について従業員に適切な周知をしていくことも大切になります。啓蒙ポスターの類は従業員の目には止まりにくい場所にあったりします。何かしら周知方法は考えてみてもよいでしょう。あわせて、実際に怪我や病気が発生したときはどう対応したらいいのか、そのときの話をすることも大切です。

ちなみに弊社も26年の事務所運営のなかで、2回ほど労災を使ったことがあります。1回は従業員がキャビネットを開けた際、ファイルが落ちて眉間をけがしたとき。もう1回は通勤途中の捻挫です。

人によっては「たったその程度のけがで?」と思うかもしれません。事の大小にかかわらず、使用するのが正当な権利ですから問題ありません。

あとは、こうした実務の知識を持っている社労士との繋がりを持つことですね。手続き代行しか経験のない社労士の中には「労災保険法は使わない方がいい」と口にする方もいると聞きます。なぜなら、使うと労働基準監督署が調査に来るかもしれないと思い込んでいるからです。

しかし、先ほども申し上げたとおり一部の大きな事故を除き、労災保険を使用しても労働基準監督署が来たりはしません。こうした実情を理解してアドバイスができる社労士と繋がっておけると安心です。

それと合わせて、人事・労務担当者は、顧問弁護士に人事分野が専門外であれば、この領域に強い弁護士を紹介してもらえるかを確認しましょう。

病院に例えると分かりやすいですが、胃の調子が悪ければ直接胃腸科にかかるか、まずは内科を受診します。手術が必要と判断すれば、紹介状をもらって、専門分野を確認の上、大学病院に行きますよね。

労災トラブルも同じです。人事トラブルに強い弁護士に直接依頼するか、繋がりのある先生を紹介してもらうかの二択です。何でも顧問弁護士が解決してくれると思いがちですが、誰しも専門分野があることは覚えておきましょう。

まとめ

労災隠しや労災トラブルの防止をするためには、

  • 法律や制度理解を正しく深めること
  • 管理職にも周知していくこと
  • トラブルが起こったときの対応方法について、適切なサポートを受けられる環境を構築しておくこと

の三段階で対応できれば、より安心感が高まります。

漠然と怖がったりトラブルを避けたりするような行動は取らず、企業としての正しい権利を行使し、従業員の安全と健康を守れる企業運営を目指すと良いでしょう。

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