この記事でわかること・結論
- 学生でも「正社員の4分の3以上」働く場合は社会保険に加入する
- 休学中や定時制に通う学生については、別途加入条件がある
- 雇用する事業者も学生アルバイトの社会保険についての理解が必要
この記事でわかること・結論
基本的にアルバイトの学生は社会保険の適用対象外となりますが、労働時間などの条件を満たす場合は社会保険に加入する必要があります。
また、例外となる学生の基準や、短時間労働者における社会保険の加入条件など、学生アルバイトを雇用する事業主側もよく理解しておきたいところです。
そこで本記事では、社会保険のおさらいと、学生アルバイトにおける社会保険の加入要件や加入することのメリットなどを解説します。
目次
アルバイトとして働いている学生は社会保険に加入すべきなのでしょうか。結論から言うと、原則として学生は社会保険の適用対象外ですが、条件を満たす学生は加入義務が発生します。
社会保険の適用者・非適用者については健康保険法第3条に定められています。その中でも、学生については同法第3条9項ハにて記載があり、学校教育法50条・83条で定められている高等学校の生徒および大学の学生、または厚生労働省が定める者が社会保険の適用除外とされています。
(前略)ただし、次の各号のいずれかに該当する者は、日雇特例被保険者となる場合を除き、被保険者となることができない。
九 ハ 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第五十条に規定する高等学校の生徒、同法第八十三条に規定する大学の学生その他の厚生労働省令で定める者であること。
上記法令によってほとんどの学生は基本的に社会保険の適用対象外となりますが、アルバイトの労働状況によっては学生でも社会保険の加入条件を満たすことがあります。その場合は正社員などと同様に、一般被保険者となる必要があります。
アルバイトとして働いている学生や雇用する事業主は、短時間労働者における社会保険の加入条件などをよく理解しておきましょう。
社会保険の加入条件を説明する前に、まずは社会保険のおさらいをしておきましょう。
社会保険とは、社会保障制度のひとつであり国民の生活を支えるための強制加入保険制度です。被保険者はけがや病気、失業や死亡などの際に、給付金制度を利用することができます。社会保険は以下の5種類に分類できます。
上記のうち医療保険・厚生年金保険・介護保険は「狭義の社会保険」と呼ばれます。残りの労災保険・雇用保険は「広義の社会保険」や、まとめて「労働保険」とも呼ばれています。
国民皆保険制度が採用されている日本では、すべての国民が公的保険制度に加入します。そのため、社会保険の加入条件を満たしている場合は加入しなければなりません。
それでは学生における社会保険の加入条件を解説していきます。基本的に学生の場合は、親が加入している社会保険の扶養に入っていることがほとんどです。そのため、学生自身が社会保険に加入するということはそう多くはありません。
しかし、社会保険の中には「アルバイトとして働くのであれば、学生でも必ず加入する保険」や「労働状況によって加入条件を満たす場合に加入する保険」があります。先述した5つの社会保険はそれぞれの加入条件が異なります。ここでは学生における加入条件を、社会保険の種類ごとに解説しているためよく理解しておきましょう。
1週間の所定労働時間または1カ月の労働日数が「正社員の4分の3以上」で働いている場合は、学生アルバイトでも被保険者となります。正社員の4分の3に満たない学生は原則として加入対象にはなりません。
しかし、「休学している学生」や「大学の夜間学部や定時制の高校に通う学生」は、4分の3未満である場合、以下の条件をすべて満たす場合に社会保険の被保険者となります。
賃金の月額88,000円以上については、雇用契約時など月額88,000円以上であることが確定したタイミングで社会保険の加入対象となります。また、従業員規模については、2024年10月から拡大されました。アルバイトやパートタイムを雇用している事業所で、対象予定となるところは忘れずに覚えておきましょう。
介護保険は、「第1号被保険者となる65歳以上の方」や「第2号被保険者となる40歳〜64歳までの医療保険加入者」が被保険者となります。そのため、基本的に学生が介護保険に加入することはありません。しかし、「40歳になったタイミングで介護保険に加入する」という社会保険料の基礎知識を社会人になる前に覚えておくと良いでしょう。
労災保険は正社員をはじめとして、パートタイムやアルバイトなど雇用形態に関係なくすべての労働者が被保険者となります。アルバイトで対価として賃金をもらっていれば、原則として学生でも加入する必要があります。
また、労災保険料はすべて事業主負担となります。そのため、学生アルバイトで労災保険に強制適用されるからといって労災保険料を負担する訳ではありません。
雇用保険については、学校教育法で定められている生徒および学生などは適用除外とされています。そのため原則、学生は雇用保険に加入することはありません。しかし以下については例外としており、学生という扱いにはなりません。
上記に該当する学生は、パートタイムや派遣労働者などと同様に以下2つの条件をどちらも満たす場合、雇用保険の加入義務が発生します。
雇用保険の加入条件については、学生アルバイトを雇う事業主もよく理解しておきましょう。定時制に通っている学生や、休学中の学生であることを確認する必要があります。
学生でも条件を満たす場合は社会保険に加入しなければなりません。学生にとっての社会保険加入は一見デメリットのように感じますが、加入するメリットもあります。
社会保険に加入するメリットのひとつは保険料負担が減るということです。健康保険料や厚生年金保険料は、事業主と折半で支払います。そのため、学生自身が国民健康保険に加入するといった場合よりも保険料負担が軽くなります。
公的年金は「2階建て」と言われており、1階部分が基礎年金(国民年金)、2階部分が厚生年金です。
厚生年金は会社員や公務員の方が加入できます。将来、社会人となって会社勤めする場合はそのとき厚生年金に加入するのですが、学生のうちから加入することで老後に受け取れる年金額を増やすことができます。
学生アルバイトでも、1週間および1カ月間の所定労働時間が正社員の4分の3以上である場合は社会保険の被保険者となります。また、上記に該当しない場合でも「休学中の学生」や「定時制の学生」は条件によって社会保険の加入義務が発生します。
短時間労働者の社会保険加入条件については、2022年10月から段階的に見直しがされており、2024年10月にも適用拡大がおこなわれます。小規模事業所やアルバイト・パートタイム労働者はよく確認しておきましょう。
労務・人事・総務管理者の課題を解決するメディア「労務SEARCH(サーチ)」の編集部です。労働保険(労災保険/雇用保険)、社会保険、人事労務管理、マイナンバーなど皆様へ価値ある情報を発信続けてまいります。
詳しいプロフィールはこちら