雇用保険の手続きや従業員が失業手当の給付を受けるときなどには、雇用保険被保険者番号が必要です。番号は複数の書類に記載されており、すぐに確認できます。しかし、紛失によって番号がわからないケースもあるでしょう。
本記事では、雇用保険被保険者番号の用途や調べ方、有効期限、複数ある場合の対応方法などについて詳しく解説します。
目次
雇用保険被保険者番号とは、雇用保険の被保険者1人ずつに付与される11桁(4桁-6桁-1桁)の番号のことです。雇用保険に初めて加入した場合に付与され、転職を何度繰り返しても変わることはありません。
ただし、7年にわたり雇用保険に加入していない期間がある場合は、次に加入する際に新しい番号が付与されます。たとえば無職の期間が7年以上続けている場合、次に雇用保険に加入する際は改めて番号が付与されます。
そもそも雇用保険とは、労働者が失業したときや病気やけがで働き続けるのが難しくなった際に、生活の安定を目的にさまざまな給付をおこなう保険のことです。失業等給付・求職者支援事業・育児休業給付・雇用保険二事業に分類されています。
雇用保険には、以下2つの加入条件を満たした場合に加入が必要です。
雇用保険被保険者番号は、労務関係のさまざまな手続きに使用します。用途は次の3つです。
雇用保険の加入の要件を満たしている場合は、事業者は確実に手続きをおこなう必要があります。
従業員が前職で雇用保険に加入していた場合は、雇用保険被保険者番号を確認し、自社において雇用保険に加入する手続きをおこないます。この場合、従業員に雇用保険被保険者番号を確認できる書類の提出を求めましょう。
従業員が退職した場合、本人に対して雇用保険被保険者番号が記載された離職票を発行します。本人の住所地を管轄するハローワークに離職票と所定の申込書を提出すると、失業手当の給付が可能になります。
このときに受け取る受給資格者証にも、雇用保険被保険者番号が記載されます。
雇用保険の被保険者は育児休業や介護休業などの際に、要件を満たしていれば給付金を受け取ることができます。給付金の種類によって、事業者と本人のどちらが申請するかが異なります。
たとえば育児休業給付金は、要件を満たしていることを確認の上で事業者が申請します。
雇用保険被保険者番号は、雇用保険被保険者証や離職票などを確認することで番号がわかります。しかし、本人に確認しても雇用保険被保険者番号がわからない場合があります。番号の調べ方は以下の5つです。
雇用保険被保険者番号は、雇用保険被保険者証の左上の欄に「被保険者番号」として記載されています。多くの場合は、雇用保険被保険者証で番号を確認するでしょう。
企業を退職すると本人へ離職票が送付されます。離職票にも雇用保険被保険者番号の記載があるため、本人に問い合わせましょう。
しかし、本人が希望した場合にのみ離職票を発行する企業もあるため、本人に確認してもわからない場合があります。その場合は、雇用保険被保険者番号記載の雇用保険喪失確認通知書が発行されるため、従業員に確認しましょう。
従業員が離職票や雇用保険喪失確認通知書を持っていない場合、紛失したパターンと前職の企業が発行を忘れているパターンが考えられます。後者の場合は、企業に問い合わせることで、雇用保険の関連書類の控えで確認できるでしょう。
従業員が勤めていた企業に問い合わせても雇用保険被保険者番号がわからない場合、または何らかの事情で問い合わせが難しい場合は、本人にハローワークに照会するように伝えましょう。
電話での照会はできず、住所地を管轄するハローワークへ住民票や運転免許証、国民健康保険証などの本人確認書類を持参する必要があります。
マイナポータルでも、雇用保険被保険者番号の照会が可能です。マイナンバーカードでログインし、雇用保険の手続き履歴を確認しましょう。
前職で雇用保険に加入していた場合は、雇用保険の資格喪失手続きをおこなっています。その履歴を確認することで、雇用保険被保険者番号を参照できます。
在職している従業員が自分の雇用保険被保険者番号を知りたくても、手元に雇用保険被保険者証や離職票がないため確認できません。この場合は、本人が現職の企業の人事・労務担当者へ問い合わせる必要があります。
雇用保険被保険者番号は統合することが可能です。統合に必要な書類は、ハローワークのホームページからダウンロードできる「雇用保険被保険者資格取得喪失等届取消訂正願」です。
統合対象の雇用保険被保険者番号を確認できる雇用保険被保険者証を添えて、ハローワークに提出します。
従業員が前職で雇用保険に加入しているのに新規の扱いで加入手続きをすると、新たに雇用保険被保険者番号が付与されます。
この場合2つの雇用保険被保険者番号が存在することになるため、前職における雇用保険の加入期間との合算ができません。その結果、さまざまな給付を受けられるはずが受けられなくなる可能性があります。
たとえば失業給付の基本手当の給付条件は、離職日から2年前までの間に雇用保険の被保険者期間が2年以上あることです。上記のケースの場合、前々職で1年・前職で1年の合計2年あるはずが、それぞれの雇用保険被保険者番号に被保険者期間のデータが分かれていることで、給付条件を満たせなくなるトラブルが予想されます。
このような問題を避けるためにも、雇用保険被保険者番号を統合しましょう。
雇用保険被保険者番号は、労務においては雇用保険の加入手続きや失業手当の手続き、雇用保険の給付金の手続きなどに使用します。本人が把握していない、または番号が記載された書類を持っていない場合があります。番号を確認できない場合は、前職の企業に問い合わせたりハローワークに照会をかけたりなど、適切に対応しましょう。
1984年生まれ。社会保険労務士。
都内医療機関において、約13年間人事労務部門において労働問題の相談(病院側・労働者側双方)や社会保険に関する相談を担ってきた。対応した医療従事者の数は1,000名以上。独立後は年金・医療保険に関する問題や労働法・働き方改革に関する実務相談を多く取り扱い、書籍や雑誌への寄稿を通して、多方面で講演・執筆活動中。
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