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「賃金」と「報酬」の違いは?労働法と社会保険から考える

人事労務管理

「賃金」と「報酬」の違いは?労働法と社会保険から考える

給料、給与、賃金、報酬といろいろな呼び方はありますが、「賃金」と「報酬」の違いはご存じでしょうか?

労働基準法や雇用保険法など労働法の分野では「賃金」と呼ばれ、健康保険法や厚生年金保険法など社会保険の分野では「報酬」と呼ばれますが、何か違いがあるのでしょうか?

法律上の目的から、「賃金」と「報酬」の違いについて考えてみます。

労働基準法における「賃金」とはなに?

まずは、賃金の定義について労働基準法を参考に考えてみましょう。
労働基準法11条では、賃金の定義を「賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」としています。つまり、賃金は労働の対償として使用者から支払われるものであり、労働者が使用者から受け取るものになります。

結婚祝金や災害見舞金、死亡弔慰金など恩恵的なものは、労働の対償ではないため賃金にはなりませんが、労働協約、就業規則、労働契約などによってあらかじめ支給条件が明確である場合は、労働条件として定められている手当として賃金に該当します。

また、役員報酬という言葉がありますが、役員は経営者であり、労働者ではないため、取締役と部長や支店長のように労働者の性格を併せ持つような兼務役員の場合、労働者災害補償保険法や雇用保険法においては、保険料の対象となる賃金は、役員報酬の部分に関しては含まれません。労働者としての「賃金」部分のみが対象となります。

以上のことから、「賃金」は労働者に対して労働の対償として支払われるものと考えられます。

民法における「報酬」とはなに?

次に、報酬の定義について民法を参考に考えてみましょう。
民法第623条(雇用)では、「労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる」とあり、ほぼ労働基準法に近い考え方となっていることがわかります。

しかし、第632条(請負)や第10節の委任における第648条(受任者の報酬)においても、働いたことに対する対価を「報酬」と表現しています。民法上において「報酬」は、労働者に限定することなく、請負や委任として働いた対価に対して支払われるものとして、広く使われています。

さらに、会社法第330条では、「株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う」とあることからも、役員報酬は委任契約における「報酬」であり、労働者としての労働の対償の「賃金」ではなく、経営者に対する「報酬」と考えられます。

このように、同じもののように思える「賃金」と「報酬」ですが、その対象となる範囲には違いがあることを覚えておきましょう。

社会保険における「報酬」とはなに?

続いては社会保険から「報酬」について考えてみます。

健康保険法第3条には報酬の定義が明記されていて、「賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのもの」となっており、「臨時に受けるもの及び三月(みつき)を超える期間ごとに受けるものは、この限りではない」と、報酬と賞与は区別して定義されています。

厚生年金保険法も同様の内容になっています。社会保険の分野では、会社役員も会社に常時使用される従業員として扱われ、加入が義務づけられることになります。会社役員も被保険者となるため、役員報酬も「報酬」に含まれるところは民法と似ているところであり、労働法と異なる部分であるといえます。
一方で、労働法の分野では会社役員は経営者であり、雇用保険や労災など労働保険の対象にはなりません。

「賃金」と「報酬」はなぜ法律によって違う?

これまで説明してきたことを考えると、法律の目的によって違いがあるといえます。

民法では雇用契約だけではなく、請負や委任まで広く「報酬」と呼びます。一方で、労働法では労働者と経営者を明確に区別して、労働者に支払われ保護する必要があるものとして「賃金」を定義しています。

労働基準法を中心に、労働法は労働者保護を目的とする法律であるため、役員のような経営者は従業員の人数にも含めずに、労働者と明確に分ける必要があると考えられます。

一方、社会保険は、国民の生活の安定と福祉の向上という目的を持っていることから、社会保障としての仕組みとして、保険料を計算するために「報酬」と定義しています。

労働基準法では労働の対償となるものすべてを「賃金」としますが、健康保険法や厚生年金保険法では保険料の計算をするために「報酬」と「賞与」を区別して定義しています。

また、給与であれば、税金を課税する対象となる所得を計算するためのものとして給与所得という呼び方をします。交通費が非課税となるのも、労働者が実際に支払う費用として実質弁償的な費用であり、所得には該当しないと考えられるためといえます。

一方、健康保険や厚生年金保険では、労働の対償として受け取るので「報酬」となり、労働基準法では、就業規則等で支払条件が明確に定められたものは、労働を条件とする手当として「賃金」に該当します。

まとめ

今回は「賃金」と「報酬」に関して、労働基準法と民法、社会保険を参考にその違いを紹介してきました。一見するとすべて、お金をもらうことに思えるかもしれませんが、各法律の目的によってその範囲が異なっている点に注意しなければいけません。
さらに、経営者の取り扱いも法律によって違いがあるため、特に労務担当者はそれぞれの違いをしっかりと把握し、混同しないように注意しましょう。

加治 直樹|かじ社会保険労務士事務所

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