雇用保険の給付には、労働者が失業した場合にその人が再就職するのを援助する目的でお金が支給される「就職促進給付」という制度があります。
就職促進給付としてよく耳にするのは再就職手当などですが「常用就職支度手当」という手当もあることをご存じでしょうか。
「常用就職支度手当」とはどんなときにもらえるのか、人事労務担当者としてしっかり知っておく必要があります。ここでは、その内容について詳しくご紹介します。
目次
常用就職支度手当とは、さまざまな要因によって就職が困難な人に対し常用就職を促進させるために、支給される手当です。
支給要件として次のいずれかに該当しなければなりません。
常用就職支度手当の支給対象者であっても、必ずしも全員が支給を受けられるというわけではありません。
支給を受けるための要件としては、さまざまなものがありますが、特に必要なのは以下の要件であり、すべてに該当する必要があります。
なお、これらの条件すべてに該当したとしても、支給対象とならないこともあります。
たとえば、常用就職支度手当の請求をして確認をしている最中に離職している場合は、対象にならないことがあります。
また、就職日の3年以内の就職において再就職手当や常用就職支度手当の支給を受けたことがある場合なども対象外になるので、確認するようにしましょう。
常用就職支度手当は、基本手当の支給残日数に応じて算出され、一時金として支給されます。
原則としては「基本手当日額×90×10分の4」で計算されますが、支給残日数によっては下記の計算式で支給額が決定されます。
支給残日数 | 支給額の計算方法 |
45日以上90日未満 | 基本手当日額×支給残日数×10分の4 |
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45日未満 | 基本手当日額×45×10分の4 |
基本手当日額というのは、受給資格者・高年齢受給資格・特例受給資格者でそれぞれ定められている基本手当の日額ではありますが、上限としては6,105円(平成30年8月1日現在)で設定されています。
そのため、この金額を超えた場合は一律6,105円で計算されるので注意が必要です。
なお、日雇受給資格者については、日雇労働求職者給付金の日額で計算されます。
ただし、受給資格又は特例受給資格にかかる離職の日において、60歳以上65歳未満の受給資格者又は特例受給資格者の基本手当日額の上限額については、4,941円(平成30年8月1日現在)となるので注意しましょう。
常用就職支度手当を受けるためには、「常用就職支度手当支給申請書」を提出しなければなりません。
提出期限も決まっており、受給資格者等が、就職日の翌日から起算して1カ月以内に、添付書類とともに提出する必要があります。もし該当する従業員を雇用した場合は、忘れないように手続きを促すようにしましょう。
必要な添付書類は、以下のとおりです。
なお、提出先は管轄する安定所長宛てに提出しましょう。
常用就職支度手当申請書が適切に受理されれば、受給資格者証、高年齢受給資格者証、特例受給資格者証又は日雇労働被保険者手帳の「処理状況」欄に受理年月日を記載されます。
常用就職支度手当は、身体障害者や知的障害者、そして精神障害者などの就職が困難な人の常用就職を促進させるための手当です。
常用就職を目指す方にとって非常にありがたい制度ではあるものの、要件が非常に細かいものとなっております。
もし、雇用した労働者が該当する場合は、本人が気づいていないこともありますので、人事労務担当者からも積極的に案内をするようにしましょう。
大学卒業後、日本通運株式会社にて30年間勤続後、社会保険労務士として独立。えがお社労士オフィスおよび合同会社油原コンサルティングの代表。
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