この記事の結論
- 特定理由離職者とは、期間の定めのある労働契約が更新されなかった、病気やケガなどで離職した人のこと
- 特定理由離職者になると、失業保険の給付日数が長くなる・受給資格が緩和されるなど、失業保険の保障が手厚くなる
- 特定理由離職者に該当するかは、離職を証明する書類や医師による診断書をもとにハローワークが判断をおこなう

この記事の結論
雇用保険の失業保険(求職者給付)を受け取れる人は、自己都合により退職をした方とやむを得ない事情で退職をした方に分けられます。
後者の方は「特定理由離職者」または「特定受給資格者」と呼ばれ、自己都合で退職した方とは事情が異なるため失業保険の条件も異なります。
この記事では、特定理由離職者に該当する人や失業保険におけるメリットを解説。あわせて2017年4月の雇用保険改正に伴い、特定理由離職者はどのような処遇を受けることに変わったのかについて、詳しくご紹介します。
目次
特定理由離職者とは、やむを得ない事情により離職した人のうち、雇用保険の失業給付(基本手当)を受給する際に一定の配慮が認められる人を指します。
雇用保険では、離職理由によって失業保険の受給条件や給付日数などの扱いが異なります。一般的な自己都合退職よりも事情が考慮されるケースとして、「特定理由離職者」という区分が設けられています。
雇用保険の失業給付(基本手当)は、主に次の被保険者が対象です。
このうち、通常の会社員など多くの人が該当する一般被保険者は、離職理由によって次の3種類に分類されます。
特定理由離職者には、たとえば病気やけが、家庭の事情、通勤困難など、本人の意思だけでは回避できない事情によって離職したケースが該当する可能性があります。
自己都合退職も失業保険の対象ですので、特定理由離職者と一般受給資格者で受け取れる金額が異なります。
また失業等給付には求職者給付以外にも、
などがあり、なんらかの理由によって離職した人・さまざまな要因によって常用雇用が難しい人の就業促進のための支援が行われます。
「特定理由離職者」と同じく”やむを得ない事情で退職した人”を指す「特定受給資格者」ですが、この2つには下記のような違いがあります。
特定受給資格者
雇用されていた企業が倒産した、退職勧奨・解雇を受けたなどの理由によって、再就職先を見つける準備が十分にない状態で離職をしなければならなかった人が該当します。
特定理由離職者
特定受給資格者以外の者であり、期間の定めのある労働契約が更新されなかったなどの要因で離職した人が該当します。病気やケガなどの正当な理由があり離職した方も、特定理由離職者の対象となります。
病気やケガが原因で離職した場合、特定理由離職者に該当する証明が必要になるため、病院を受診して診断書を事前に準備しておくといいでしょう。
| 項目 | 特定受給資格者 | 特定理由離職者 |
|---|---|---|
| 主な離職理由 | 倒産、解雇、退職勧奨など会社側の事情 | 病気やケガ、家庭事情、通勤困難、契約満了など |
| 離職の主体 | 会社側の事情 | 本人側の事情(正当な理由あり) |
| 失業保険の扱い | 会社都合退職として扱われる | 正当な理由のある自己都合退職として扱われる |
| 給付制限 | なし | なし |
| 受給資格 | 離職前1年間に6か月以上の被保険者期間 | 離職前1年間に6か月以上の被保険者期間 |
| 具体例 | 会社倒産、解雇、退職勧奨 | 病気、育児、介護、通勤困難、契約更新なし |
特定理由離職者と認定されるには、正当な理由による離職であることを証明しなければいけません。
また、特定理由離職者で定められている”正当な理由による離職”とは、被保険者の病気やケガ以外にも下記のようなケースを指します。
(1) 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により離職した者
(2) 妊娠、出産、育児等により離職し、雇用保険法第20条第1項の受給期間延長措置を受けた者
(3) 父若しくは母の死亡、疾病、負傷等のため、父若しくは母を扶養するために離職を余儀なくされた場合又は常時本人の看護を必要とする親族の疾病、負傷等のために離職を余儀なくされた場合のように、家庭の事情が急変したことにより離職した者
(4) 配偶者又は扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となったことにより離職した者
(5) 次の理由により、通勤不可能又は困難となったことにより離職した者
(a) 結婚に伴う住所の変更
(b) 育児に伴う保育所その他これに準ずる施設の利用又は親族等への保育の依頼
(c) 事業所の通勤困難な地への移転
(d) 自己の意思に反しての住所又は居所の移転を余儀なくされたこと
(e) 鉄道、軌道、バスその他運輸機関の廃止又は運行時間の変更等
(f) 事業主の命による転勤又は出向に伴う別居の回避
(g) 配偶者の事業主の命による転勤若しくは出向又は配偶者の再就職に伴う別居の回避
(6) その他、上記「特定受給資格者の範囲」の2.の(11)に該当しない企業整備による人員整理等で希望退職者の募集に応じて離職した者等
特定理由離職者または特定受給資格者に該当するかどうかは、勤めていた企業や離職者本人が判断するものではなく、ハローワークが提出された書類や事情をもとに判断します。
そのため、離職理由を確認できる書類をハローワークへ提出する必要があります。
たとえば、病気やケガが原因で離職した場合は、医師の診断書が離職理由を証明する資料として求められることがあります。このようなケースでは、ハローワークでの手続きを円滑に進めるためにも、事前に医療機関を受診し、診断書を準備しておくと安心です。
ただし、離職理由によっては診断書が不要な場合もあり、必要書類はケースごとに異なります。詳しくはハローワークで確認しましょう。
特定理由離職者として失業保険(基本手当)を受給するためには、ハローワークでの手続きを通じて離職理由の確認と認定を受ける必要があります。一般的な流れは次のとおりです。
退職後、勤務していた会社から「離職票」が発行されます。離職票には退職理由や雇用保険の加入期間などが記載されており、失業保険の手続きに必要な重要書類です。通常は退職後10日〜2週間程度で郵送されます。
離職票を受け取ったら、住所地を管轄するハローワークで求職申し込みを行います。求職申込みを行うことで、失業保険の受給手続きが開始されます。
ハローワークでは、離職票の内容や提出された書類、本人からの聞き取りなどをもとに離職理由を確認します。病気や家庭事情、通勤困難などが理由の場合は、診断書や申立書などの提出を求められることがあります。
提出された書類や事情を総合的に判断し、ハローワークが特定理由離職者に該当するかどうかを決定します。会社が記載した離職理由と異なる認定になる場合もあります。
特定理由離職者として認定されると、原則として7日間の待機期間後に失業保険の支給対象となります。一般的な自己都合退職のような給付制限が適用されないため、比較的早い段階で基本手当を受け取れます。
冒頭で述べた通り、特定理由離職者になると失業保険の保障が手厚くなります。ここからは、失業保険において一般受給資格者と特定理由離職者で異なる点を確認していきましょう。
失業保険等の受給資格は、通常であれば被保険者期間が12カ月以上必要ですが、特定受給資格者や特定理由離職者になると、この期間が短縮されて6カ月以上となります。
【参考】特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準│厚生労働省
失業保険の所定給付日数は、一般受給資格者の場合90日~150日です。しかし特定理由離職者と特定受給資格者に該当する方は90日~330日であり、給付日数は年齢と雇用保険の被保険者期間に応じて異なります。
| 被保険者期間 | |||||
| 1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 | |
| 30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ー |
|---|---|---|---|---|---|
| 30歳以上35歳未満 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 | |
| 35歳以上45歳未満 | 150日 | 240日 | 270日 | ||
| 45歳以上60歳未満 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 | |
| 60歳以上65歳未満 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 | |
一般受給資格者は、離職票をハローワークに提出してから7日間の待機期間があり、その後原則として1か月の給付制限期間を経てから失業保険を受け取れます(※2025年4月以降は従来の2か月から短縮)。
これに対して特定理由離職者は、給付制限期間がありません。7日間の待機期間を終えると、翌日から失業保険の支給が開始されます。
制度改正により一般受給資格者の給付制限は短縮されたものの、特定理由離職者は「給付制限なし」に加えて、「被保険者期間が6カ月でよい」「給付日数が手厚い」といったメリットがあるため、依然として大きな優位性があります。
特定理由離職者が、失業保険を受給するためには以下の条件を満たす必要があります。
また、失業保険を受け取る前提として、特定理由離職者と認定されるためには以下の条件を満たさなくてはなりません。
確実に失業手当を受け取るためにも失業保険のもらい方を事前に確認しておきましょう。
2017年3月31日に雇用保険法等の一部を改正する法律の改正が成立し、2017年4月1日付で施行となりました。主な改正内容は以下のとおりです。
特に目玉となったのが、失業等給付の拡充と育児休業に係る制度の見直しです。リーマンショック時に創設されていた、給付日数などの暫定措置は終了しましたが、雇用情勢が悪い部分については、給付日数を60日延長する暫定措置が実施されました。
さらに、災害などの事由によって離職した人の給付日数も原則60日、最大120日延長することができるようになっています。
育児休業に関しては、保育所に入ることができない待機児童問題などに対応するために、原則1歳までである育児休業を6カ月延長しても保育所等に入れない場合は、さらに6カ月の再延長を可能にするなどの改正が行われました。
2017年4月に施行された改正雇用保険法のなかでも、特定理由離職者が該当する措置としては、次のものがあります。
現在においても、有期雇用労働者は弱い立場にあることが多く、会社側からの一方的な雇止めにあってしまうことも少なくありません。本人に働く意思があったとしても継続雇用してもらえなければ、ある意味解雇と同じように扱うべきではないかという考えもあります。
雇止め問題の根本的な解決にはならないものの、雇止めされてしまった有期雇用労働者を少しでもフォローできるような内容となっています。
特定理由離職者は、一般的には「自己都合退職」に分類されます。ただし、単なる自己都合退職とは異なり、病気やけが、家庭の事情、通勤困難などのやむを得ない理由によって離職した場合に該当します。そのため、雇用保険においては通常の自己都合退職よりも配慮された扱いとなり、失業保険の受給条件が緩和されたり、給付日数が長くなる場合があります。
必ずしも診断書が必要とは限りません。特定理由離職者に該当するかどうかは、ハローワークが離職理由を確認したうえで判断します。病気やけがが原因で退職した場合は、診断書などの医療機関の証明が必要になることがありますが、契約更新がなかった場合や通勤困難、家庭の事情などが理由であれば、離職票や申立書などの書類で認定されるケースもあります。
会社都合退職に該当する「特定受給資格者」は、倒産や解雇、退職勧奨など、主に会社側の事情によって離職した人を指します。一方、特定理由離職者は、労働者本人の事情による離職ではあるものの、やむを得ない理由がある場合に該当します。つまり、会社側の事情による離職が特定受給資格者、本人の事情ではあるが正当な理由がある離職が特定理由離職者という違いがあります。
特定理由離職者の場合、自己都合退職のような給付制限期間がありません。ただし、具体的な取り扱いは離職理由や個別の事情によって判断されるため、最終的にはハローワークの確認が必要です。
離職票には、離職理由を示すコードが記載されます。特定理由離職者の場合は、主に「33」や「34」などのコードが該当するケースがあります。たとえば、契約期間満了で更新されなかった場合などは特定理由離職者として扱われることがあります。ただし、最終的な離職理由の判断はハローワークがおこなうため、会社が記載したコードと異なる認定になる場合もあります。
2017年4月1日施行の改正雇用保険法によって、失業等給付等の拡充が行われました。これによって特定理由離職者についても、倒産や解雇並みの給付日数を5年間受けられるようになっています。
人事労務担当者としては特別な手続きは必要なくいつもどおりの作業となるものの、該当する離職者がいる場合は、その離職者に対してこのような改正が行われていることを伝えるようにするとよいでしょう。
日本大学卒業後、医療用医薬品メーカーにて営業(MR)を担当。その後人事・労務コンサルタント会社を経て、食品メーカーにて労務担当者として勤務。詳しいプロフィールはこちら